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どちらかと言うと悪い魔法使いです  作者: 花音小坂
第3章 デルタ=ラプラス編
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飼育


 一方、アシュたちもまた、ピエトラ草の探索を開始していた。


「みんな、この魔草を知っているかね? サーダリア草と言う名称で、煎じて飲めば毒になるが、こうして魔力を加えれば非常に効果の美肌作用を持つ」


 闇魔法使いは、生き生きとした表情を浮かべながら、生徒たちに説明する。珍しい魔草の宝庫に、興奮を隠しきれない、根っからの研究者である。


「へぇー」


 ダンは感心すると同時に、密かに恋人への贈り物リストに加えた。


「かじってみるかね?」


 そう言ってダンに差し出す。


「え゛っ……」


 言われた方は、思いきり躊躇する。とにかく、この闇魔法使いのことが信用できない。交際3か月目なのだ。今は一番楽しいとき。万が一にも死にたくはない、彼女持ち生徒である。


「安心したまえ。毒はすべて抜けている」


「……ミランダ、やっぱり美肌は女子でしょ」


 そう言って、パス。ダンは毒見の役割を隠れ庶民女子に委ねる。お前は独り身だろ、と。死んでも悲しむ恋人はいないだろ、と。


「……ジスパ、最近お肌荒れてきたんじゃない?」


 とスルーパス。家族への仕送りのためにも死ねない親孝行庶民女子は、勤勉優等生女子に委ねる。寝不足なんでしょ、と。外見も出世には大切よ、と。


「……私、魔草によってアレルギーあるの。シス、お願い」


 躊躇なく嘘をつく腹黒女子は、元いじめられ美少女にバトンタッチ。あんたやりなさいよ、と。不能者なんだから、あんたには未来ないでしょ、と。


「うん……ングッ……」


 シスは、手渡されたサーダリア草を躊躇なく口に放り込む。そのあまりの潔さに、3人の罪悪感がチクリ。


「どうだね?」


 アシュがモグモグしている美少女に超接近して観察する。


「……ングッ。っはー、めちゃくちゃ苦いです」


 そう答えると、性悪魔法使いはシスのほっぺを伸ばし始める。


「効果の高い魔草ほど、味は悪い。そういうものさ。まあ、こんな粉雪のようになめらかな肌には、あまり効果がないかもしれないけどね」


「ぁうー、へ、へんへーやめへ(せ、せんせいーやめて)


 やめない。シスのことが可愛くて可愛くて仕方ない、ロリ魔法使いである。彼女のほっぺをギューっとしたり、ナデナデしたり、サワサワする。


 その時、草むらから、一匹の魔獣が飛び出してきた。


「おっ、ネウロヴァロだね。あの獰猛な爪と牙で、対象をズタズタにして捕食するんだ。いやぁ、相変わらずの迫力で――」


「か、解説してる場合ですか!?」


 ダン、ミランダ、ジスパが一斉にアシュの後ろに隠れる。


「なんだ君たちは……魔獣の一匹くらいでそんなに怯えて」


「い、いいから早く追い払ってください」


「ふぅ、やれやれだな。ミラ、やってしまいなさい」


             ・・・


 その声は、むなしく、響き渡った。


「いないでしょ――――! 先生が2つに分けたんじゃないですか―――!?」


 キレるジスパ。優等生特有のプッツンは教師だろうとなんだろうと無関係である。


「そ、そうだったね」


「どーするんですか!? 死んじゃいますよ死んじゃいますよ死んじゃいますよ!?」


 パニックになるダン。彼の脳裏には、3日前のデートで恰好つけて彼女にキスしなかったのが脳裏によぎる。


「キャ―――――――! 死んじゃう――――――!」


 泣き叫ぶミランダ。下町育ちの隠れ庶民女子は、とにかく、でっかい声で叫ぶ。


「安心してくれ。僕は死なないから」


 さ、最低……


 3人の気持ちは見事に一致した。


「グルルルル……グワアアアアアアアアアアッ!」


 ネウロヴァロは獰猛な唸り声をあげ、今にも襲い掛かろうという状態。


 アシュたちが醜い前衛争いをしている中、シスが彼らの前に出た。彼女は透き通った湖のような瞳で魔獣を見つめる。


「……」


「グルルルル……グワア……クゥーン」


 ネウロヴァロは、トボトボとシスの元へ歩いてきて、子犬のように従順になつく。


「よしよし、いい子いい子」


 そう言って、彼女を舐める魔獣の頭を撫でて、ギュ――ッと抱きしめて可愛がる。


「シス……凄いな」


 3人はその光景に、思わず見惚れる。


「ああ……飼われたいな」


「!?」


 ロリ教師のボソッと放った一言に3人の脳裏に『!?』マークが浮かぶ。


「ええっ? アシュ先生。今、なんて言いました?」


 聞こえなかったシスは、じゃれてくる魔獣をあやしながら聞き返す。


「……ああ。あの魔獣すら飼いならせる能力がうらやましいと言ったのさ」


 そうごまかすアシュ。自分たちにはない変態魔法使いの価値観に、怯えるしかない3人だった。


 



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