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世界中の誰よりも
空から雪が舞い降りて、両手を広げて笑う彼女は美しかった。
「好きだ……」
アシュ=ダールは思わず、口にしていた。
「……私もよ、アシュ」
顔を赤らめながら、うつむく彼女。
「大切にする」
そう言って、抱きしめる。
「……うん。私もあなたを大切にする。ずっと、ずーっと」
・・・
「僕もだよ、10年間、ずっと」
「……ん?」
腕の中で彼女の声が疑問符に変わる。
「大切にするよ、世界中の誰よりも」
「……ごめん、アシュ。その前に、なんて言ったの?」
「好きだ……」
「その後!」
さっきまで甘い声を出していた彼女の声が低くなる。
「……10年間」
そう答えた途端、彼女がアシュの腕を離れた。
「ねえ、アシュ。なんで、10年間なの?」
「いや、だって……その……君、20歳だろう?」
「……だ・か・ら!?」
彼女は100パーセント笑っていない作り笑顔を浮かべた。
「……老いていく君を見たくないんだ」
アシュは遠い目をしてつぶやいた。
壮絶なビンタが返ってきた。