赤ずきん1
「あれ、ここどこだ……?」
目を瞑って、開けると、そこは元いた店ではありませんでした。
辺りの建物や道路は軒並みレンガで出来ています。歩いている人たちの服装もも少し古風で、洋風で。それこそここは童話の中のような外観だったのです。
「あら、赤ずきんちゃん、おはよう!」
「やあ、赤ずきんちゃん! 早起きだねぇ!」
女の子に声をかける街人たち。あ、分かった。あの子さっきの子ですね。何だか背が縮んでるみたいですけど、顔がそっくりですもの。
「……私赤ずきんなの?」
と、女の子はボソッと呟きました。そう言えば名前知りません。なんって呼べばいいんでしょうか。
女の子が歩き始めました。
「多分家に帰ればいいんだと思うんだけどな……どこだろ、私の家」
ブツブツいいながら歩いていますが、足取りはしっかりしているし、寄り道もしません。どことなく目的地がわかっているような歩き方です。途中でそのことに気づいたようで、「仮面ライダーみたいな感じかな」と、マニアックな解釈をしていました。
ついて行くと、周りの景色が変わり、さっきまであったようなレンガ造りの家や道路はくなりました。
「あ、あったあった。あの家だ」
確かに、とても小ぢんまりとしたおしゃれな家が見えます。あんな家に住んでみたいものです。
玄関を開けて。
「ただいま~」
「おかえり赤ずきん。野菜は買えた?」
「えっ、いやしら……じゃなくって、忘れた……」
「くふふ」
お母さんらしき人は笑ってこう言いました。
「冗談ですよ」
「あっ! 何でここに!?」
あっ! 店主さんだ!!
「どうです? 童話の中って感じでしょう?」
すごいでしょ? と言わんばかりの勢いで彼女は胸を張りました。
「すごいでしょ?」
言っちゃった……
「すごいです!! 私、本当に入れるなんて思ってなくて……疑ってしまってごめんなさい」
「いいんですよ~」
店主さんは嬉しそうに言いました。でも、まさか本当にこんなことが出来るなんてすごいです。
「ふふふ、ありがとうございます」
「今、誰に言ったんですか?」
「内緒ですよ~」
あれ?何?聞こえてるの?えぇ?嘘でしょう?
「ふふふ。ハイ!では、レッツ赤ずきんです!」




