レプリカーレ
星が反射してきらめく神殿の中。
僕はひとり、息を切らせて駆けていた。
(待ってる。あの子が、呼んでる)
裸足で駆ける足の冷たさとは反対に、心は熱を帯びていた。
とにかく、あの子に会いたい。その一心で後を追ってくる兵たちから逃れ続ける。
(そう、この階段の下。
扉を開ければ、あの子が待ってる)
今でも聞こえる。あの子の呼ぶ声。何もできない僕を、ただ求める声は日に日に強くなっていた。
そして、新月の夜に僕は神殿へ忍び込んだ。あの子に会うために。
(ここを抜ければ、兵が2人。
僕が来るのを待ち構えている)
僕は知っていた。誰がどのように僕を捕えようとしているのか。
そして、捕えられてしまったらどうなるのかも。
カランッ
石を投げ、兵の気を引く。そのうちに階段を駆け下り、扉を開ける。
それに兵が気づくも気にかけない。中から鍵をかける。
それと同時に空気が変わり、甘い異国の香りが鼻をかすめた。
(もうすぐ。もうすぐあの子に会える)
そう、あの褐色の肌をした、宝石のような目をした少女に。
扉を叩く音、忠告する声を無視して歩を進める。止まらない高揚感。
続く重厚な扉を開ける。
(眩しい……)
まばゆい光が身を包む。やっと、やっと会える。
光が止むと、そこには白い髪の少女。
「会いたかった……」
僕の言葉にあの子は振り返って、微笑む。
そして告げられる聞き取ることができない言葉。
「 」
そこからはただ、暗闇の中へ落ちていく。
ゆっくりと。
はっ、とその言葉で目が覚める。いつもの夢。汗がにじむ。
太陽が昇り、再び沈む。いつものように、僕は白の柔らかい海に身を委ねる。
星が反射してきらめく神殿の中。
僕はひとり、息を切らせて駆けていた。