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過去の軌跡②

 拠点とする街の近くにある森へと足を踏み入れた俺はすぐに違和感に気が付いた。いつもならば殺気に溢れている森がやけに静かだった。

 この森にはオークの住み処があり、それを殲滅するという依頼で来ていた。オークという魔物は豚が人間のように直立しているような姿だ。人間のように知性はあまりないが、他種族の女を拐い、犯し、子を孕ますという胸糞悪い習性を持っている。

 危険性は低い。戦い慣れていない者には少しばかり厳しいだろうが、冒険者をやっている者にすれば取るに足らない存在だ。

 しかし住み処の殲滅ならば話は別である。この世界は軍より個の強さが目を見張るが、やはり数の力というものは偉大だ。オークがどんなに弱くても何百、何千ともなれば少しばかり腕の立つ冒険者であっても死は免れないだろう。

 だが俺にはそんな常識は関係ない。何故なら俺はAランク冒険者であり、Sランクなんていう人外を除けば、達人クラスなのだから。


 しかし、今日に限って森が静寂に包まれている。オークの気配はするもののそれは微弱すぎた。

 何者かに怯え、必死に気配を殺しているようなそんな雰囲気が感じられる。俺はその違和感に興味を示しながらも依頼を全うするため、森の奥へと進みだした。




 

 この森は然程広くはない。2、30分も歩き続ければ森の中腹まで進むことができる。

 そして現在丁度20分ほど歩き、中腹ほどのところまでやってきた。オークの気配がするのはこの辺りだ。

 しかしこれまで一回も魔物と遭遇することはなかった。やはり何者かに怯え、皆住み処へ隠れてしまっているようだ。

 訝しげに頭を傾けながら、そんなことを考えていたその時、不意に背後より寒気が走るほどの威圧感を捉えた。



「何者だ!」



 今思うとこれは失策だったかもしれない。相手が敵意を持っているのであれば既に攻撃されているはずなのだから。

 だがそんな冷静な判断はすることができなかった。濃密過ぎる存在力が脳内に警報を響かせたからだ。



 後ろを振り返るとそこには木の幹に腰を掛け、足をぶらぶらと揺らしている小さな子供が居た。

 その姿は金髪金眼であり、このまま大人へ成長したならば間違いなく絶世の美女になるであろう素質を感じさせる。しかし、目の前にいる女の子がこれ以上成長することがないのは明らかだ。人間の子にしてみれば見るからに小さすぎ、その背中から生える二対の羽が人ではないことを示している。



「……妖精」



 そんな俺の呟きに妖精がニコッと笑みを浮かべ反応する。



「ただの妖精と妾を一緒にするではないぞ? 小僧よ。妾は妖精の王の中の王、妖精帝の娘であるぞ?」

「妖精帝の娘?」

「そうじゃ、驚いたか? 妖精帝とは全ての妖精族を束ねる妖精の神とも呼べる存在なのじゃぞ?」



 妖精帝の娘と名乗る妖精は誇らしげに無い胸を張り、ふんぞり返っていた。



「……あぁ、えーっと、つまりだな……お前の父が偉いだけであってお前は偉くないってことだろ?」

「ち、違うわ! お主何を言っておる!? 妖精帝の娘なる妾は世界で二番目に偉い妖精なのじゃ!」

「へぇー……で?」

「むきーーッ! 信じておらぬな。まぁよいよい、これから先、嫌というほど妾の力を見ることになる」



 妖精の言葉に俺の脳内にハテナマークが広がる。



「……言ってる意味が分からないんだが? 世界でも征服するつもりなのか?」

「なっ……そんなことはせぬぞ! 全く失敬な奴じゃ。なーに、お主と妾が契約するのじゃから嫌でも妾の力を見ることになるじゃろ? 良かったのう、頼もしい相棒ができて」


………………


…………


……



「は?」



何言ってるんだこいつはーー




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