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剣豪と呼ばれた男と風の魔王

プロローグ




穏やかな海風に髪を遊ばせながら。歌人のような出で立ち。くるぶしまである長い髪を。三編みにして、まるでマフラーのように首に巻いていた。遠目から見るとかなり変わった風貌だが、多分男だと思われる。


「ふむ風が変わるか……」


ゆったりした胴着を身に付けていた。彼こそ風の魔王フルール・レウクレール。その背に。風と雷を表す二色の渦。陰陽紋が、輝いていた。彼こそ符術の祖。全ての符術師の頂点る。仙の魔王と呼ばれた。たおを歩む求道者であった。

「再びこれ程の力持つ人間が、こんなに現れるとは……、」

切れ長の眼差しに影を落とし。かつて最高の弟子だった少年を思い出す。


「もし……、あの時知っていたら。ぼくは君を止めていたよ……」


悲しげな呟き、フルールにとって、大切な弟子であり唯一友人と感じた少年の後ろ姿を思い出しながら、話しかけていた。



……今や魂は汚され。もはや人間に戻ることも出来ない存在アンデット。



自我を持ちながら。強者とたたかう喜びに堕ちてしまった人物……、彼こそ人間最強の剣豪。武芸だけで魔王に匹敵した傑物。四天一流を体現せし。唯一の使い手ムサシ……、




初めてムサシと初めて出会ったのは、今から10年ほど前になるか……。



ムサシは決して恵まれた環境で育ってはいなかった。両親は小さな村で農民をしていた、

弐のにのくにでは、和のわのくに、呉の国(くれの国)と違い、平民は武芸を学ぶことが許されていなかった。武芸とは武士階級の子息だけが、学ぶこと許された特別な物との考えからである。確かに武芸の才能は、圧倒的に平民よりも武家の子息ほど。優秀な子供が多いのも確かである。しかし実は希に、平民から信じられない程の強者が、誕生することがあった。




ムサシは兎の両親から生まれた。誠の獅子であった。



三魔王の中で、フルールは才能ある子供が大好きで、弟子に迎えることがあった。ムサシもその中の1人である。彼はフルールが育てた弟子のなかで、唯一基礎しか教えないにも関わらず。最高の弟子だったのだ……。



鷹のような鋭い眼光、長い手足、頭もよく。フルールに対して、大層不遜な口調で言ってのけた。

「なあ~お前。魔王なのに餓鬼を弟子にしてるって聞いたんだ。だったら俺に武芸を教えろ!。お前を倒すくらい強くなってやるからさ」

これである。流石に唖然とした物だ。魔王にはパートナーがいる。魔王に不測の事態に備えてのこと。すなわち魔王の代役を勤める存在のこと指していて、フルールの姉メルーラがそれに当たる。切れ長の目をした美しい姉に。ムサシは恋をした。所詮は人間と魔族、しかも子供の戯言、誰も真面目に聞く筈もない。ただムサシだけは諦めず。真っ直ぐな言葉を口にしたのを覚えていた。それからだ。至極真面目にフルールの弟子となったのは。自分でも人間を天才だと思ったのは、後にも先にもムサシ1人のみ。恐ろしい勢いで強くなっていた。




ムサシが12歳になった頃には、フルールでも手こずる魔物を倒せる実力を持った。この頃になると周りの弟子達から一目置かれた。しかし弐の国では、武士以外の帯刀も武芸者と名乗ることも許されていない。

ムサシが帯刀出来るのはあくまでも弐の国以外のことであったのだ。



その年━━



フルールの弟子として、武芸大会に出場を果たした。並みいる弐の国の武士達を。一刀を持って叩き伏せ、見事優勝していた。

「温いな。このムサシ未だ二刀すら抜いていない」

インタビューを受けた場にて、不遜に言って退けた。



まだ子供でしかない武芸者に。ここまで言われた弐の国の武士達は怒り狂い。ムサシの命を狙い出した。


それも農民の子供に負けたことが、大問題であった。弐の国の剣術は大きく分けて。二流派に別れていた。


一つは、一撃に命を掛ける剛剣。


一つは居合いと呼ばれる抜刀術である。諸島国武芸大会に出ていた者は、ほとんどが後の抜刀術を納めた武芸者だった。

「ムサシ覚悟。チェスト!」

刺客に選ばれた男は、一刀流の門下生であった。1対1の立ち会い。相手はそう歌ったが、見届け人が10人もいて、帯刀していた。明らかに1人が負けても。残りの見届け人が、ムサシを殺すつもりであると分かる。


「たったこれだけか?」


子供、侮った相手に不遜な物言いされて。ぴくり顔がひきつる刺客。男はムサシの父程の歳であろう、子供に不遜な顔で、刺客が少ないと言われたら。胸中は穏やかであるわけがない。殺気が迸り。魔族の皮膚すら切り裂く。鋭い剣気を宿した。凄まじい一撃を持って。大上段より一刀が放たれた。



━━殺った……。



(所詮子供だったか……)

不敵に笑って、殺めた子供を見下ろし━━、



顔が強張る。



「温いな……目録とは、この程度か」

「がっ……、ガフ」軽く受け流され、斬身して、隙だらけの刺客。胴を断って、一刀にて殺していた。


「こっ小僧!」


「殺れ、ムサシを殺せ」


いきり立つ男達。刀を抜いてたった1人の子供。ムサシに殺到した。




━━数日後。衝撃が走る。たった1人の子供に11人もの武芸者が、命を奪われ殺されたと……。


ムサシはあまりにも強かった。人間の規格から外れ、上位魔族すら倒す。剣の天才。風の魔王フルールすら倒した稀代の剣豪は、一途な想いで姉メルーラに求婚し。姉はそれを嬉しそうに承知した。




二人の結婚生活は一年と短かった……。

風の国に現れた悪竜ダークサイスと対峙して。ムサシは四刀を持って、右片目と右前足を断ち。仕留める直前に。生まれたばかりのイオナを守るため。命を失い。ダークサイスを守る最大の敵であり。四死最強の剣豪となってしまった。あれ以来姉メルーラは塞ぎ込み。イオナを育てられなくなってしまっていた。そこでフルールはイオナを弟子と迎い入れた。


「師匠、師匠、師匠、シショ~こんたところにいたんですね」


活発そうな笑顔の黒髪少女が、駆けてきた。


「どうしたイオナそんなに慌てて」


「あっいえ、メルーラ様から急使がありまして、石の魔王様が、悪竜ダークサイス討伐をフタバ、キヌエさんに許したそうです」


ハッと驚きに息を飲んだ。


「あのゴウドが討伐を許すとは……」


何があったか分からないが、時は動き始めたようだ。




フルールがキヌエとあったのは六年ほど前になる。定期的にイオナの面倒をみてくれる子守りが必要で、兄弟のいる女の子を拐っていた時期があった。


「あれ……、あっ初めまして私キヌエと申します。え~と何をやればいいんですかね?」


妙に拐われ慣れた少女が、物怖じなく。申し付けてくれた。これにはかなり安堵した。


「イオナおいで」


「はあ~いシショ~」


ようやく言葉を覚え始めた頃。可愛い盛りだが、子供……実は女の子の弟子、育てたことないので、困ったことの連続だった。


「実はイオナを、幼い弟子のお守りを頼みたくてね。お願い出来るかな?。ええ~と」


あって口を押さえる顔をして、慌てて身を正す。


「あたしキヌエ・ナナツです。風の魔王様」


にっこりはにかむ姿。不思議な予感を覚えた。




呉の国は祭事が、国の政治に強い影響を及ぼす。巫女の国である。巫女になる家名には1~7の数字が入る。するとこの少女━━。


「キヌエ、君が教えれるようなら。済まないが、イオナに礼儀作法を教えてくれないかな?」


あまり過度の期待は出来ない、多少なり女の子らしさが身に付けば、フルールは具申した。


「ん~、別に良いですよ」


キヌエの人柄もあってか、すぐにイオナは明るくなって。人懐っこい性格のキヌエと仲良くなった。本当に嬉しい誤算だ。




ある日の午後━━すっかりなついたイオナが、キヌエのこと聞いていた、

その日適たまたま町に用事がある時で、早めに屋敷に戻っていたところ。聞こえてきた話に。少しならず興味を抱いて。聞き耳を立てる。彼女には妹弟がいて、巫女の修行中であること。下の面倒を見る侍巫女であること。イオナは目をキラキラさせて聞いていた。せがむようにお願いすると、キヌエは快諾。嬉しそうに目を輝かせ。キヌエの膝に抱き着いて甘える姿に息を詰まらせる。まるで母のような優しい慈愛を宿らせ。癖のある頭を優しく撫でていた。

「あたしね今年から鈴巫女になったから。姫巫女様の後ろで踊るんだよ」


年に二度。呉の国では、豊作を祈願する祈願祭。豊作の感謝を礼する。御礼が、季節の祭事として。収穫の恵みを感謝する祭であった。



祭事では、五人の巫女が選ばれて、皆の前で、神前の舞を披露する。センターに姫巫女、左右に花巫女、鈴巫女と。供物を捧げる二人の巫女は、供物を捧げると詞を捧げ。朗々と歌いあげながら。舞を披露する。その為技量に優れた五人が、祭事に殉ずる。



キヌエの歳で鈴巫に選ばれることは、とても名誉な事である。


「キヌエお姉ちゃん踊るの?」


「うんそうだよ」


「イオナ見たい!」

「だったらちゃんとお名前書けるようになろうね。書けるようになったら、魔王様にお願いしてあげるからさ」

「うん♪」


子供の笑い声は良いものだ。何だかこっちまで優しい気持ちになるからだ。



━━数日後。

キヌエを国に返して間もなくの頃。



ある日の午前中。



弟子達の修行を見て回り。午後から弟子達が寝泊まりする屋敷の様子を見てから、屋敷に戻りたまたま裏庭に通りかかった時だ。イオナは1人で、木陰に座り込んでいた。

眉を潜め声を掛けるか一瞬迷う、

そんな時に。


「キヌエお姉ちゃんの踊り見たかったな……」


ハッとした。



(確か今日であったな……、)

背がひやりとしていた。フルールはすっかりイオナとの約束を忘れていたのだ。冷水を浴びせかけられたよりも肝が冷えていき。脳内ばかりかあたふたしていた。1つ頷いて、


「イオナ、イオナはいるか!」


走るように屋敷の玄関に回り込み。威厳をもって弟子を呼んだ。内心冷や汗をかいていたが。


「ふぇっ?、ふああい」


裏庭から声がした。とったたた。駆ける。足音が聞こえていた。


「しっ。ししよーどうしたんですか?」

あくまでも悲しんでいたことを隠す。健気な姿に。フルールは胸を突かれていた。


「うむ、出かける時間だが、イオナ支度はよいのか?」


きょとんとしたイオナに。内心で低頭したが、ここはあえて演技を続けた。


「今日は、キヌエの晴れ姿を見に行く日であろう?。どれ連れて行ってやろうと思ってな、我はこうして来たのだが……」


困ったな。そんな顔を浮かべてみた。するとみるみるイオナの顔が輝き出して、


「まっ待ってください。急いで支度します」


現れた時とは段違いの軽やかさで、イオナは走っていた。


「済まなかった……。無骨な叔父をゆるせ」


見えなくなったところで低頭した。




この日の夕方……、


呉の国。山頂にある神社では、社の前に舞台が作られていて。それをぐるりと見る形で、御座が敷かれ。ぎっしりと沢山の人出があった。このような人混みは、フルールも初めてのこと。イオナと離ればなれにならぬよう。しっかりと手を繋ぎ歩いてると。イオナは堪えず嬉しそうに微笑み。フルールを見上げていた。見れば社に続く参道に。様々な夜店と。催しの小屋が出ていて、目を楽しませる。


「すまぬが、1つくれるかな」


「へい、まいどあり」


切り飴、ふ菓子、みたらし団子、揚げ芋、焼き肉と様々な物を買い食いして、歩きながら二人で食べた。


「ししよー美味しいです♪」


口をべたべたにしていたので、手拭いで拭ってやると。


「あわわわ、ありがとうございますししよー♪」


こうしてかまって貰えることが、本当に嬉しいようだ。考えてみたらこうしてイオナを構うのも初めてだと気付く。姉が臥せっていた。自分も子供を育てたことがない。だから他人に任せていた……、きっと寂しい思いをさせていたこと。ようやく気が付いた。


「おっ、何だフルールじゃねえか」


親しげな声が掛かった。見ればジャックと妻のシターニアが、気が強そうな人間の少年を連れていた。


「ほ~う子連れたあ~珍しいな」


「ああジャックにシターニア、この子は」


「あっ初めまして、フルールししよーの弟子で、イオナと申します」


空気を読んで、可愛らしく低頭していた。すると少年が反応する。


「あっお前がイオナか、俺はフタバ、キヌエから聞いてるぜよろしくな」


突然警戒していた顔から、気が強いが、人付きする笑みが浮かぶ。


「あっ、キヌエお姉ちゃんから聞いてます!、するとお二人は」


フルールも思い出していた。ジャック、シターニア夫妻のお気に入りで、人間の少年がいると。すると彼がそうなのだろう。


「なあイオナ!、祭事の舞まで時間あるし。良かったら俺と夜店一緒に回らないか?」


いきなり初めあった少年からの誘いに。ぱちくり驚いたようだ。


「ししよー?」


思案気な眼差しでフルールを伺う。相貌にはフタバのことが、気になって仕方ない、そんな顔である。


「ジャックさん、シターニア様借りてくぜ」


返事をする前に。フタバはイオナの手を掴んで、そう言い残し。さっさと行ってしまった。


「たく、変な気を使いやがって」


満更でもなさそうな顔である。この時には意味が解らなかった。でもこの後フタバの生い立ちを知り、目を見張った。



慣れぬ子供相手から解放されると。ため息を吐いていた。案外肩が凝ってることに気付く。


「あいつは空気読むの上手いから、お前が姪に苦労してること見て取ったんだよな。多分だがよ。俺を出汁に。お前が気を抜く時間をくれたんだろうな」


「……そうだったか、気を使わせたな」

「なあ~に気にするな。それにシターニアは子供が好きだ。どうだ二人が居るときに。今度あの子預かろうか?」


片親で苦労するシングルファザーに対する気遣い。思わず言葉を無くしながら、考えてみれば無くはないと気付く。


「その……頼めるか?」


「ああ~良いぜ。きっとフタバはそのつもりで、わざとシターニアを連れてたんだろうからな」


ジャックの苦笑混じりの呟きに。少しだけフタバと言う少年に興味を抱いた。この時聞いたのがミフネの話である。奇妙な縁を感じていた。




どん、どんどんかっかか、


どん、どんどんかっかか、ピュ~


太鼓の音。高らかに奏でるフエの音色。シャンシャンシャン、三度一塊になった無数の鈴束を。恭しく頭上に奉りながら、白装束、赤袴の二人の少女が現れた。鈴とは、祭事では穀物の穂を意味していて、鈴なりに穀物が身を付ける願いと、汚れを払う力を持った音色を鳴らしながら、鈴巫女が登場する。次いで花巫女様の登場を促すのだ。

花巫女は篭を手にしていた。しずしず舞台に上がるや、辺りに春の花びらを撒いてゆく。民の健康を祈り、春を告げる儀式である。舞台前では、沢山の若い男女が集まっていた。花巫女が撒いた花びらを手にすると。違う意味になる。

いわゆる早く結婚できるようにと。願いをかけて、御守りにするのだ。逸話では同じ花を選んだ相手こそ。運命の男女となると言われていた。見れば多くが年頃の子供を伴った親たちで、最前列に固まっていた。



イオナはジャックが用意した。かぶり付きと呼ばれる。二列目の席にフルール、すっかり仲良くなったシターニア、フタバと並んで座っていた。


「あっ!キヌエお姉ちゃんだ」


舞台に上がる巫女は、真っ白く顔を塗り 、淡い化粧を施され。カツラを被ってるから、男達は解らなかった。


「うあ~みんな綺麗」


やっぱり女の子、綺麗な格好に興味があるようだ。


「あらだったら、イオナちゃん。今度私の家にいらっしゃいな」


「そいつはいいな、だったらちょうど家で明日春祭りがある。夜祭りもあって楽しいぞ」


「うわあ~本当ですか!?、ししよーししよー!」


おずおずとそれでもフルールから目を反らさず。上目遣いでのお願いに。思わず顔が綻んでいた。


「ああジャック頼めるか?」



「おう、構わないぜ。だったら今日このまま来ればいい。フタバとキヌエも来るからな」


「あっありがとうございます」


はしゃいだ声を上げた。この時からフルールは、フタバ、キヌエと親しくなっていった。



「ふん。ジャックだけじゃなく。ゴウドを認めさせたか……、なら俺も仕事を引き受けてもらうか」

今も臥せる姉のため。四死最強の剣豪ムサシ、


「殺してやっくれ……」


血を吐くような静かなる絶叫……、静かにその時を待っていた。



石の魔王ゴウドに。かしずく腐れ妻達に見送られ。風の国に向かったフタバ達は、間もなく風の国に到着しようとしていた。

また同じ物語か、別の物語で、背徳の魔王でした。

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