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最弱の魔王

諸島国に渡ったコウ達元悪餓鬼三人&留学生コンビ。一応おまけのリナ&タイチ恋人組だが、炎の魔王ジャックさんから、なんやかな色々なことがあったが、無事悪竜ダークサイス討伐の許しを与えてもらったのだが……、

プロローグ




男は頑強だった。魔族の中でも。あらゆる物理攻撃を無効にする。特殊な能力を持って生まれてきたからだ。



男は1人だった。時空を越えて数百、数千もの、もはや数えきれない敵の血を啜ってきた。



もはや男に勝てる者はいなかった……。決して壊せぬ肉体。堅牢無比な城塞を誇るため。何もしなくても敵は自滅してしまうからだ。



男は動かない、物理攻撃無効アビリティを使う時は。幼い妹を守る盾だからだ。



……やがて、無敵の盾として、内に隠していた狼の力が認められて、二人の同じ存在から仲間に誘われた。



とても不安だった……、だが…妹を連れて、この世界にやって来た……。



そして見たこともない世界を。初めて目にしたとき、男は静かに涙していた。


男にとって、二人の友人との出会いは、驚きだった。偽ることで人間の子供と関わっていたゴウドに。言い知れぬ優しい気持ちを与えた存在。何時しか心から笑っていた━━。



だからと言って男は、変態ではない年中裸で過ごしていたり、全身にタトーを入れたり。筋肉隆々で長身でも無ければ、バカ力がある訳でもない。それでも何故か冬では、半袖半ズボン姿である。



男は鍛えることは不可能に近い。それは信じられないほど貧相な体をしていた、その代わり魔族の男にしては、顔が可愛らしく整っていた。いつもうるうるした瞳から。まるで愛眼動物のようである。そっち方面の髭面お姉さん達が見たら。お尻にまっしぐら。ショタ好きなお姉さんなんて、ベッド(アリジゴク)引きずり込みそうな風貌をしていた。男は美しい銀髪。薄い病的な肌。色々と残念な姿である。恐ろしく小柄で、顔立ちは童顔とくれば。名前と。見た目がこれ程合わない男も珍しいと。

この間ゴウドが居るのに気付きながら。強くて優しいと目を掛けてた。胸が大きくて綺麗な将軍に。目を見て言われた。ゴウドは表面こそ、にこやかに笑ったが……、その日枕を濡らした。



彼こそゴウド・ゴリアーダ。チンマイ少年にしか見えないが、一応……石の魔王本人である。



ゴウドは子供達に好かれていた。本当に好かれていた。いや好かれてると思いたかった。きっと好かれてるかも……、黄昏ていた。その日ゴウドは、人間の子供達に落書きされて、表面は笑っていたが、めちゃくちゃ落ち込んでいた。



━━顔か……。顔のせいなのか?、眠れぬ夜を過ごした日もある。



一応……ゴウドは子供に人気があった。人気があることにした。人気があるような気がした。そこでわりと仲良くなった子供達から聞くと。『からかうと楽しいから』

『姫様がお菓子くれたから』

『いじめやすいから』

『弟のようで可愛んだもん』

と言われたり、


『ゴウドちゃんこっちの着物が似合う~』

『そっそうかな?』

『うんうん肌も綺麗だし』

女装させられたり。化粧されたり。紅までひかれたり。女の子達に言われるまま弐の国に行ったら。髭面の武士に拐われ、あわや……。

やっぱり思い出すと。ず~んと落ち込んだ。何か違う気がした。

(いかんいかん、久しぶりにフタバが帰って来たのだ。)

ようやくまともに、自分の相手してくれる友人の帰郷である。ゴウドの顔には笑みがあった。



はてさてそんな最弱の魔王には、兄に似ない冷淡で、性格は悪いが、頭がよく。美しくて強い妹がいた。石の国の良民は、妹の方が魔王に相応しいと、影でではなく。目の前で言われた。将軍には今月5回も言われた。やっぱり泣きそうになった。見るからにも外見にも。性格にも魔王に向かないゴウドは、妹から自分に魔王の座を譲るよう迫られていた。流石にそれは出来ないと言うと。妹は癇癪を起こして、嫌がらせを始めた。今では石の国どころか、諸島国ではわりと有名な話である。



弱い兄を苛め。弱い兄に代わり、強くてかっこいい次代の魔王に成り代わること。最近では生き甲斐にすら見えるほど。生き生きしていた。超ドSな姫様リリア・ゴリアーダは。何故か黒と緑の斑点のある身軽な着物に身を包んでいた。

『これより。1004回の悪戯大作戦を決行する!』

真っ白い白亜の建物が並ぶ港町。一歩入った細い路地。めちゃくちゃ目立つ一団がいた。何故か全員リリアと同じ戦闘服を着こんだ子供達である。リリア隊長の前に整列していた。

作成内容は毎日変わる。でも兄に悪戯を成功させることこそ喜びに感じていた。

『リリア様~。今日の報酬(お菓子)はなんでありますか』

今日の悪戯部隊リーダーを勤める少年は、この半年で6回も作戦成功させた強者もさである。

『今日のお菓子はバームクーヘンよ』

豊かな胸を強調するように。胸の下で腕を組んで。デデンと報酬について名言していた。

『おお~!、あれですか、ゴクリ』

思わず隊長が思い出したように生唾を飲んでいた。

『たっ隊長……、バームクーヘンとはどのようなお菓子なのですか!?』

最年少の女の子ミヨが訪ねた。『甘くて、ふわふわで、玉子の味が最高のお菓子だ!、この作成必ず成功させよう』

力強い号令に。少女は目をキラキラさせて、はいと可愛らしく頷いていた。



今日のは地味に辛い。どぶ落ち。三連攻撃である。朝から浮かれた兄は、何時もより注意力散漫であろ。必ず引っ掛かるだろうほくそ笑む。



何も知らないゴウドは、足取りも軽やかに城から町に降りていた。作戦部隊の子供達は、通りを歩くゴウドを細い路地から見ていた。左右に別れた二人が、見張りの合図でロープを引っ張った。

「うっ?」

うすらとんまな顔で、バランスを崩したが、なかなか倒れず耐えていた。リリアの合図で最年少のミヨちゃんが、エイヤ~ってゴウドの背を押して、素早く逃げた。

「えっええ、なっなに?」

兄は驚きの声を上げた。女の子に押し負ける魔族て……。

リリアは呆れ果てた。そして……。

ぐらぐらした罠である。板の上に乗った途端。ツルとすっころび。お尻から悪臭放つ溝にはまっていた。

「うっうう、ついてないや……」

はまっていた溝から這い出した。兄はズンと落ち込む姿に。リリアは背を震わせウットリと目を細めた。



しかしこの楽しみも。間もなく終わるかと思えば……、少し残念に思った。

「仕方ありませんわ。あの二人が帰って来るのですから」

リリアがフタバと最後に会ったのは、彼が留学する前夜。あれからもう四年が過ぎたのだ。そう思うだけで、冷ややかな顔をしていた姫様には珍しく。照れたように赤くなっていた。

リリアが、フタバと出会ったのは、何時もの気まぐれであった。兄に対する悪戯のため手下として。定期的にリリアは子供達を拐していた。何時も数日。長くて半月悪戯に付き合わせたら帰すこと、魔王や人間の王達との取り決めである。普段他の魔王が気に入ってる子供なんて、拐うことはしない……。



しかし……あの時は、なんとなくあの喧嘩屋。凶暴なジャックのお気に入りで、兄に悪戯してやろう。そう決めた。最初にフタバを見た第一印象は、

(随分と生意気そうな餓鬼ね~)

だった。不機嫌そうな顔で、リリアを見上げながら。

「誰だお前?。どうやら魔王ではなさそうだが……」

ひくり……、

(まっまあ、初対面ですし……)

なんてこと思っていると。

「まあ~いいや、なんか俺にやらせたいんだろ?、言ってみな、納得出来たら手伝ってやるからさ」

「なっ……なんで、子供が上から目線!」

憤慨してフタバを睨み付けていた。普通上位魔族。それも魔王に比肩する実力者を前にすれば、子供は萎縮する。……はずである。

「煩い!、こちとら今月6回も拐われてるんだぜ?。機嫌も悪くなるだろうが」

逆に怒鳴られてしまい、思わず首を竦めていた。

「うっ……、そっそんなの知りません」

とりあえず反論したが、そんなに拐われるってどんだけ魔王に好かれてるのか?、逆に興味を抱いた。そこは素直ではないリリア、この時生まれ初めて、怒られたことで、フタバに苦手意識を持ったのだった。

だからと言って……、仮にも魔王と比肩せし存在である姫リリアのプライドは、死の島にある活火山デブランディアよりも高く。兄に悪戯してやろうという気持ちは、海溝に住む。海底生物ほど歪であった。

「煩い煩い煩い!、あんたは私の願いを聞いて、兄に悪戯すればいいの、成功したら食べたことのいようなお菓子をあげるんだし、黙って言うこと聞きなさい!」

リリアは完全無欠なお嬢様でした。対してフタバと言う少年は、確かに人間にしては才能があり。また頭の回転も早く。気転の効く性格で、気が強い。魔族に気に入られるのも後になって理解できました。この時の私は癇癪を起こして、

(なんてバカな子供なのかしら、信じられないわ!)

魔族にも、強者に屈服しない強気は好まれた。でも私は怒りに任せ怒鳴り散らしました。

「聞いてるの!、貴方はただ私の言うこと聞いてくれば良いのよ、何も難しいこともないはずよ!」

「煩い黙れ勘違い女。てめえみたいなバカに付き合うかよ」

「なっなななな何ですってー!!!、きぃ~ムカつきますわ」地団駄を踏んでいた。

この時……私は、フタバ生い立ちなんて知らなかったから……、(知ってればもう少し違っていたのかも知れないな~)

だから私が強く言えば従うと思っていた。しかしフタバは良くも悪くも豪放伯楽な、喧嘩屋火の魔王ジャックの背を見てきた少年である。だから意に染まらぬ命に従うほど。愚かなではなかった。

「そんな命令なんてよ、ふざんけるな!、この我が儘女。誰がお前なんかの命令聞くかよ。僕は石の魔王に会って、とっとと帰らせてもらうぜ」

捨て台詞と蔑む眼差しを残して、すたすた歩いて行ってしまう、

「なっ、なななななな。きぃーー、ちょちょとどこいくつもりよ!。待ちなさい!」怒鳴り声が聞こえてきたが、無論無視してやった。



フタバは怒っていた。とうとう三魔王に拐われたことになってしまった。これもすべて。

「父上……」




フタバに父の思い出がない。

フタバの父は、和の国王オオクボ・ヒサノブの側近を勤め。大町奉行おおまちぶぎょうに任じられた。人格者だった。母や周りの大人から聞いた話だけの父。人々が尊敬する父の姿。フタバには父の背中以外。何も覚えてなかった━━。



幸せは突然壊された。フタバが物心つくかつかない頃。悪竜ダークサイスが和の国に現れたのだ。彼の悪竜は、冬に冬眠していた。死の島は活火山である。地熱で年中暖かい。冬眠しやすい場所であった。竜とは普段から寝て過ごすが、幼竜からようやく成竜になったダークサイスは、多くの睡眠が必要な時期だった。それが……冬眠に失敗してしまい、凶暴化してしまった。



凶暴化したダークサイスは多くの食料を求めて町を、国を。破壊して回り。恐怖に震えた人間を次々と食らっていた。あまりにも酷い光景。響き渡る断末魔の悲鳴。父は民を守るため。何より子供達のため。無謀な戦いに挑んだ。




そして……、




三魔王が到着するまで、町を守り抜いたが……。

━━代償は大きかった。三魔王の力を持ってしても、凶暴化したダークサイスを倒すには至らず。ただ怪我を負わせて追い返しに留まった。時既に遅く父ミフネ・ワナトは帰らぬ人となっていた。

周りから語られる父、母から聞いた父、姉から聞いた父、フタバにはどれも記憶になかった。母が教えてくれた。父には大切な友人がいたこと。フタバと姉をあの日守ってくれたのは……、



この話には続きがある。悪竜ダークサイスが普通の竜ではなく。人間をも越える叡知をもっていた。古竜エンシェントドラゴンと呼ばれる個体だったこと。ネクロマンサーの能力に秀でたていた個体であり。アンデットを無差別に作り出すことだ。アンデットに意思は無い。ただ食欲があるだけのモンスターとなる。しかし生前強い意思をもっていた人間ならば、自我を持つことがあった。悪竜ダークサイスは自在に自我を持つアンデットを作り出すことが出来た。それも自分を苦しめた四人。四死シシそう呼ばれた四体のアンデットが、ダークサイスの居城、死の島にある活火山デブランディアを守っていた。フタバがずんずん真っ白い肌、貧相な少年にしか見えない、石の魔王ゴウドの前で止まっていた。

「ヒッ……、きっ君は誰?」

あまりに突然、フタバが迫ってくるから、身をすくませていた。今度妹は何をこの子にやらせるつもりなのか?

、緊張と疑念に青ざめ、びくびくしながはも口を開こうとした。

「多分あんたが、ジャックが言ってた。気弱に装う、最弱と偽る魔王ゴウドだな?」「ひゃい、そっそそっそそんなことないですよ~」

いきなり噛んでしまい、あわてて人間の子供であるフタバにペコペコ頭を下げていた。

(多分いまのこの姿こそ、本当の姿なのだろうな……、)

「僕さ、あんたに会ったらお礼言おうと思ってたんだ、僕と姉さんの命守ってくれて、ありがとうございました!」

気持ち良いくらい。切れのある動きで、深々頭を下げていた。

「あっ………」

一瞬戸惑いがあった。顔を上げたフタバの顔を食い入るように見ていた。どこかで……見たことがあることに気付く、

「あっ……あああ!」

驚愕に目を見開いた。

目の前の少年が誰かわかったのだ。

ポタリ……、ポタポタポタ……、頬から止めどなく涙が流れおち。石畳を濡らしていた。首を傾げ、頭を上げたフタバが見たのは……、ぼろぼろ涙を流す。少年魔王ゴウドがそこに立っていた。



石の魔王はあらゆる物理的攻撃無効と言う、とんでもない能力アビリティを持って生まれた。その代わり━━、

非力な色白の少年として、姿が永遠に変わらない。呪いを受けていた。



━━今から15年前━━。

ゴウドには二人の友人が出来た。そして……目の前の少年は、友人の息子だとようやく気付いた。目や鼻筋がとても似ていた。

「良かった……、」

ゴウドは怖かった。友人を……。友人の夫を守れなかったのは……、自分が弱かったからだと責めていた。「あ、ありがとう……、生きてくれて、ありがとう……、会いに来てくれて」

ふらふらフタバに抱き付き、泣きながら小声で囁いた。



石の魔王は命を大切にするあまり、我が身を盾にして、皆を守ろうとする優しい魔王であった。

「なあ~ゴウドさん、僕と友達になってよ」

あの我が儘な女の子には、めちゃくちゃムカついたが、少しだけ……、ほんの少しだけ、石の国に連れてこられたこと感謝した。わぁーっと泣き出した魔王ゴウドとフタバは、この時から無二の親友となった。



その後……、キヌエも加わり。リリアがゴウドに悪戯するのを。いつの間にか邪魔することが日課になっていた。その頃からかな~。リリアとは喧嘩友達になっていた。

「ゴウド!」

「ゴウドさん」

船着き場でそわそわ、うろうろしてた少年魔王に。懐かしい声が掛けられた。走って来たフタバ、ゴウドの着てる真っ白い衣装が、異臭を放ってるのはご愛敬。

パッと振り返り目を輝かせ……。ハッと息を飲んでいた。目をこすり何度もしばたかせる。一瞬フタバの笑顔が、死んだミフネが現れたかと思わせるほど。似ていたのだ。

「強く……、なったね」

もう自分が守ってあげなくてもいいんだ。それだけ二人は強くなっていた。嬉しさと一抹の寂しさを味わっていた。

「お帰りフタバ、お帰りキヌエ」

「ただいまゴウド」

「ただいま~ゴウドさん」すっかり男らしく成長したフタバ。並べば背なんかすっかり追い抜かれてしまっていた。

「綺麗になったねキヌエ」

「ありがとうゴウドさん♪」

頬を紅色に染めて恥ずかしそうに笑っていた。さてそんな二人の失ろから、船を降りてきた少年少女たちを見た瞬間。直感していた。

(ああ~、遂に父と戦う決意を固めたんだねフタバ……)

少年は父を失っていた。物心つく前の話である。本人から父親の思いなんて聞いたことがなかった。でもミフネがどうなったか……、唇を噛み締め項垂れる。何か言わなければならない。でも……。

「ふん、また随分とお久しぶりねフタバ、ついでにキヌエさんも」嘲るような顔を浮かべ、豊かな胸を強調して胸の下で腕を組んだリリアが、悪戯子供部隊を引き連れてデデンと立っていた。何故かキヌエを睨み付けるように見下ろしていた。

「お久しぶりですねリリア様、相変わらず胸だけ豊かで、後は……ふふっ残念のようで何よりですね~♪」

リリアからギシリ、心が軋む音が鳴った気がした。キヌエよりも頭一つ背が高いリリアに対抗して少し背伸びする。

「あら少しは成長したのね~、ふふ……可哀想に」

哀れむ眼差しを受けて、ズバンと見えない斬撃が放たれた気がした。

「くっ……、そっそんなスイカを2つあるだけな、リリアさんは、相変わらず周りに要るのって、子供だけなんですね~」ドスッて、見えないボディーブローが放たれだ気がした。

キヌエだって、アレイク王国の暮らしで、食生活が良かったからか、洗濯板を卒業出来ていた。なのに……とてもじゃないが……、悔しそうにリリアの胸を睨む。対してリリアのコメカミにピキリ青筋浮かんでいた。二人は剣呑な顔をしていた。

「ふっふふん」リリアは冷笑を浮かべようとした。

「ふん」

強気な顔をしたキヌエが鼻を鳴らした。相変の相性の悪さは相変わらずである。



あまり知られてないが……、リリアは女の子らしい部分が、結構……、かなり……、めちゃくちゃ苦手である。内心冷や汗をかいていた。舌打ちしたい気持ちのキヌエにとって、リリアがフタバを狙ってることが許せなかった。別にフタバがどうなろうと構わないが、なんだか嫌なのだ。

秋の空に称えられる複雑な女心、気付くはずもないフタバと。意味もなくおろおろしてる少年魔王ゴウド、

何だかぎすぎすしてる二人を。遠巻きに見ていたコウ達は、苦笑していた。なんとなく状況が掴めたからだ。

「まっまあ~、みんな元気そうで何よりだよ」

ゴウドが冷や汗拭いながら取り繕う。するとリリアが言葉尻に噛みついた。

「そうですわね~。相変わらずキヌエさんてば、無駄に元気でがさつですから、とてもボーイフレンドの1人すら出来なかったんでしょ?、まっまあ~仕方ありませんわね」痛恨の一撃、本当のことなので胸を押さえて、よろけたキヌエ。

「くっ、あらリリア様なんて、性格悪すぎて婚期失った癖に!」

キヌエは最強の呪文を唱えた。頭上にそんな言葉が書かれてる気がした。実際問題。魔族の中でもリリアが兄に行う、陰湿な苛めを。問題視する声もあった。リリアはそれを無視して、男の魔族から。すっかり嫌われていたので、ずっと独り身である。まだ人間の子供は純粋なので、お菓子で釣るとわりと簡単に心を開いてくれるので、自尊心を傷つけずにいた。



しかし……。お互いの言葉に打ちのめされながら、悔し涙を浮かべ、それでもにらみ合っていた。こうなると二人は相手が泣くまで、不毛な戦いが始を繰り広げるのがパターンである。まさに惨劇の予感。辺りから人の気配が消えていた。



いまいちどうしてよいか分からないコウ達。リナだけは、眼をまん丸にして。ぽかんと口を開けていた。

「ぷっ……」

どうにか笑いを我慢しようとしたのだ。でもあまりにも二人の顔が真剣過ぎた……。もはや笑いを堪える限界である。

「プッ、あはははははははは!、あはははははははははは、イヒヒヒヒヒヒヒ。あ~おかっしい~。二人とも仲良しだね~」

爆笑したリナに、罵りあいを始める直前の二人は。揃って同時に振り返る。それがまたリナには可笑しくて、笑いの第2波を与え。結局腹を抱えての大爆笑。


「なっ何が可笑しいのよ」

「なっ何ですか貴女。人のこと笑うなんて失礼な」

真っ赤になって食って掛かるキヌエとリリア。だが……、

「アハハハハハハ、はっヒー。そこで真面目なんて最高♪、アハハハハハハ、アハハハハハハ、アハハハハハハ、アハハハハハハ、アハハハハハハ、ひっヒーお腹痛い」

じたばたもがき苦しみながら。リナは爆笑を止めない。呆気に取られて見ていたコウ、マイト、レンタの三人が同時に。

「ブッ……」

「プッ」

「ブフォ」

吹き出していた。時に人間には、お互いに影響を及ぼす現象が、確認されていた。遥か昔から人々はその現象を。うつると呼んでいた。有名なところで、あくびであろうか、その他風邪や、愉しげに笑う声と言うのも。

━━つられてしまう、一度蔓延すると━━。




目に涙すら浮かべ、二人を指差しながら爆笑するリナ、怒りが頂点にあるほど、

「ぷっ」

「プッ」

お互いの顔を見て、吹き出してしまう。すると一度起きた笑いの連鎖に。我慢出来る者はいなかった。




誰もが、何の違和感もなく。腹がよじれるほと笑っていた。一度笑いに支配されると。そうそう簡単に収まるはずもなく━━。呆れた顔のフタバ、タイチや終いにはゴウドまで、巻き込まれて爆笑していた。


何だか楽しそうな笑い声が聞こえていた。辺りに住まう近所の住人が、楽しげな笑い声に誘われて顔を出してしまい、

「なっ何が……、プッ、アハハハハハハ、アハハハハハハ、なんか分からないが、アハハハハハハ、アハハハハハハ」

「やっヤバいな」

「スゲー楽しいぜ」

『あははははははは、あははははははは』

腹がひきつるほど笑っていた。



こうなると笑いの猛威は、優しい牙を剥いた。リリアの後ろで、悪戯するチャンスを伺っていた子供達。たまたまそこにいた住民、お店をやってる女将まで、笑いは広域に広がっていった、

その日━━石の国は、幸せな笑い声に包まれていた。




ようやく笑いが収まったは、辺りが茜色に染まる夕方である。コウ達はゴウドに誘われ。別名鬼岩城きがんじょうに向かっていた。


港町から、西に向かって幾つか細い道を歩いてくと。いつの間にか山道になっていて、遠目でも小高い岩山が見えていた。

「あの岩山が、ゴウドの住まい鬼岩城だよ」

フタバが説明していた。今まで鬼岩城を訪れた人間は、僅か四人だけである。途中から森になっていて、舗装された坂道が岩山の裏側から続いていた。それを知らなければ、巨大な岩山だとしか分からない。だが外見こそ岩山だが、中はくり貫かれていて、小さな城に作り替えられた。天然の要塞である。唯一城の入り口がある目印に。地狼紋ちろうもんの旗がはためく。側に見張りの衛士が二人立っていて、それと分かる程度である。居なければきっとリリアでは、入り口が分からず。途方にくれることだろう……。それくらい巧みに入り口は隠されていた。「さあ~みな入ってくれ!」

滅多に客を連れて、城に入れないゴウドが、本当に嬉しそうに笑っていた。魔族の中でも城に入ること許されてるのは、リリアを除けば二人くらいである。兵士すらも。入れない小さな城。リリアがあまり城に居ないのは。主であるゴウドがいないと。本当に居心地が悪くて。寂しいのだ……、



でもこの日は違った。リリアは今まで見せたことないほど、穏やかな春の日差しを思わせる柔らかな眼をしていた。衛士も眼を真ん丸にして、惚ける。しまいには何度も眼をこすって首を傾げた。そんな様子も笑いの成分が大量に残ってたリリアは、クスクス可愛らしく笑っていた。衛士二人は仰天するほど驚き、笑うと魅力的な淑女リリアの素顔に。真っ赤になって見とれていた。



後にこの一件が元で、多くの殿方から求婚されたのは、嬉しい余談である。




一行が通された天守閣は、岩山の山頂にある小さな茶室であった。一面きらびやかな黄金で作られた物で、壮麗と言うよりも荘厳なって言葉が、似合っていた。

「なんかさ~ゴウド、また色々と物が増えたな~」

懐かしそうに呟くフタバの前に。自ら立てたお茶と。趣味のお手製お菓子を振る舞うゴウドに対して、遠慮ない言葉使いである。「うん♪、お客なんてこないからさ~、新作お菓子を餌に、リリアに悪戯させてたくらいで、お茶を振る舞いたい人なんて、いなかったからね~」

あっけらかんとゴウドは言っていた。普段誰にも見せない苛められっこの仮面を脱ぎ去り、油断ならない眼光を相貌に宿していた。今の彼こそ三魔王最弱を偽る。最強の盾。狡猾な狼ゴウド・ゴリアーダであった。

「それよりもフタバ、君がまさか大陸の戦士を伴って来るとは思わなかったよ」

突然人が変わったゴウドに、戸惑うコウ達。慣れないとそうなる。

「早速だけどフタバ、僕らに匹敵する力ある者を連れて来たのはなぜだい?」真っ直ぐリナを見ていた。きょとんとする姿が実に恐ろしく。また好ましい。それに……彼女を守る少年……、ゴウドと同じ大地の王から祝福をもらっていると感じた。そのなかで彼と双璧をなすのが……、不思議な魅力を持った大柄な青年に。先程から目が奪われていた。

「父を、そして悪竜ダークサイスを倒すためだよゴウド」

ピクリ……、リリアが青ざめる。一瞬兄から殺気を感じたからだ。

「━━本気かい?」

表情が抜け落ちた。少年魔王を前に。フタバの体温がどんどん冷たくなってく。恐怖を感じていた。それでも決意は変わらない。

「はい」

どうにか声が震えず。返事が出来た。ゴウドの本領は狼である。だから一度ゆっくり瞼を閉じて、再び眼を開くと消えていた。

「そうか……、お前ならいつかこうなると思っていたよ。フタバ。でもそう簡単に許すことは出来ないよ」

見た目は残念な少年魔王だ。しかし一国の王である。危険があるならダークサイス討伐を許すことは出来ない。

「ゴウド……」驚き、目が見開かれた。

「ただしある問題を解決してくれたら。君たちのダークサイス討伐を妹と供に許すよ」

完全にフタバの予想が外れた。でもゴウドは言った。問題を解決して欲しいと。

「ゴウド俺達は何をすればいい?」

どうにか強気に言ってのけ、ゴウドに笑顔を与えていた。

━━リリアにとって、兄はたた1人の肉親であり。自分を慈しみ。育ててくれた尊敬する存在である。そんな兄から絶大な信頼を与えられていたフタバが、昔から嫌いだった。でもこの時だけは、フタバが無事問題を解決してくれること切に願っていた。




その日。積もる話もあって、鬼岩城で一夜を過ごし。



━━翌朝。再び天守閣で、詳しい話を聞くことにした。

「ゴウド問題ってなんだよ」

「えっえ~とね」

何だか言いにくそうだ……、茶室にいるにしては弱気だし。首を傾げたフタバ達に渋々。問題を語り始めた。



事の起こりは半月前になる。



ゴウド・ゴリアーダ少年魔王には、強くて、美しく、胸が大きな側近、タチバナ・ビレイ将軍。彼女だけはゴウドに優しく。忠実な女性だった。

「なんだって!、ビレイさんが謀反を起こした!?」

驚愕の内容だった。でも言われてみれば……、いくらゴウドが弱々しい魔王とはいえ。兵士の姿が無さすぎことに今ら気が付いた。

「それで……、お前何をやったんだゴウド?」冷たい眼差しを、親友に向けていた。

「いっいやその~。この間リリアが連れて来た女の子達がね。僕に女装して、弐の国に連れてかれて……」

修道趣味の武士達に散々追いかけられ。ビレイに救われたこと。何故かゴウドの姿に衝撃を受けて。

「あの日から。何だかおかしくなっていったんだ」

どうも信頼していた側近に裏切られ。動揺が隠せないようだった、血の気が失せていた。普段から真っ白い肌だが、今や紙よりも白い。

「どうしてあのビレイさんが、謀反なんて……」

腕組みしながら。困ったように唸る。

「ゴウドさん理由わからないんですか?」

「ああ~、あれから何故か急に。リリアに対抗して、僕を虐めてくるんだ……」

とつとつとこの間言われたことや、あった出来事を聞いて、さすがのリリアですら唖然としていた。

「あっあのビレイが、兄さんにそこまで言うなんて」

「なあ~フタバちょっといいかな」

四人がウンウン唸ってるところ悪いが、レンタには直ぐに分かった。誰も気が付かないことの方が不思議だった。

「多分俺なら、上手くまとめることが出来ると思うぜ」

しみじみ実感がこもっていた。何故だが分からないが、みんなレンタに任せれば大丈夫な気がした。何せこんなにも疲れた顔をしてるところ。見たことなかったからだ。



因みにレンタとゴウドが並ぶと。不思議と似てる気がしていたリナは、何となくレンタの恋人ミルナの趣味に気付いた。

「あっ、そうだったんだ」

何故かレンタは、仕方ないだろ?。そんな眼差しをリナに送ってから肩を竦めていた。

リナは思い出す。同級生の女の子達が、

『レンタさん女の子顔だから、女装させると可愛くなりそうよね』

『そうかな~』首を傾げたリナだったが、数日後……、リナのお店にやって来たミルナは、沢山の可愛らしい洋服と、手作りのアクセサリーを大量買いしていったのを思い出していた。

「ねえレンタ、私、あれの用意しとく?」

言われたレンタは、眉を潜めていたが、こればかりは仕方ないかと。

「……やっぱりあれを用意した方が、説得しやすいかな?」

「うん、ビレイって人が、趣味の人なら、言葉で言うのよりも、実物に着せてプレゼンしたの用意した方が、すぐはあはあして素直になるからね」

「ああ~モレンさんみたくな」「そうそうモレンさんみたくね」商人二人にだけ通じたこと。この場にいた誰も。なんとも怪しげな内容に。気が付かなかった。



早速レンタは謀反を起こしたビレイって人が、潜伏してる。町の中心にある屋敷にやって来ていた。

「え~と謀反起こしてるんだよな……」

おおらかと言うか、大雑把と言うか……、なんとも呆れ果てていた。

「誰かいますか~、すいませ~ん」

声をかけると、パタパタ足音が聞こえて来た。「はあ~い何方ですか?」

ひょっこり顔を出したのは、銀髪をお下げにした女の子に見えた。

「初めまして、レンタ・マノイと申します人間の商人でして……」

喉を見れば僅かに喉仏があることから。確信する。この商談上手く行くだろうと……、



果たして……、シンヤと名乗った。女の子の格好させられた少年は、恥ずかしそうに短いスカートから、お尻が出ないよう気を使っていた。「君も大変そうだな」

つい我が身を振り返りレンタが声を掛けると。羞恥で真っ赤になりながら、コクコク頷いていた。姉のビレイさんは、有志の集まりに出てるとのこと。聞けば魔族の中にも。男のおとこのこ会なる会合が、密かに行われていると恥ずかしそうに教えてくれた。

「君から見て、お姉さんは別にゴウドさんを嫌ってる訳では無いんだね?」

「はっはい。姉は……、何て言うか、真面目な女でした。それが最近どんどんおかしくなって行くから」

何とも痛ましい悲痛な顔をしていた。どちらかと言えば男らしい性格ぽいシンヤにとって、めちゃくちゃ苦痛だったのだろう。

「ねえシンヤ君。地獄から解放される方法があるんだが、乗らないかな」

皮肉気な笑みを浮かべ、商人は利益をあげるため。手管を広げた。

「ほっ本当にこの地獄から、抜け出せますか?」

「ああ~、そんなに難しいことじゃないよ」

そして語る。最良の一手を。




町のお店周りをしていたリナは、ゴウドのポケットマネーから、予算内に様々な可愛らしい小物と。化粧道具、衣装を選んでいた。「…………」

無言で荷物を抱えるタイチと。久しぶりに二人だけと言う、ちょっとしたデート気分を味わっていた。

「なあ~リナ。もしかして……」

おずおずと疑問を口にしていた。

「うんそうだよ~。やっぱりさ長く生きてると変わった趣味に走ったりするらしいよ」

「……そうか……」

なんとも言えない顔をしていた。

「お姉さん~これとこれ。後それも買うから。おまけしてください♪」

「あら貴方達人間よね?、あまり見ないけど」「はい私達は、異国から魔王様に招待された商人と護衛でして、これほど見事な品を見たことが無いので、兄の奥さん達にお土産にしょうと探してたんですよ」

「へえ~異国からかい。だったら安くしなきゃね」

やはりと言うか、魔族は美しい女性が多い。

「それで、お兄さんのお嫁さんて何人いるんだい」

「はい全部で七人おります」

「ほおおお~そいつは豪気だね。お嬢ちゃんも強そうだし。護衛の腕もたつようだ。きっと名のある人間なんだね」

さすがは魔族とはいえ商人。何かしら察したらしい。

「はいそれはもう。皆さんには私の叔父の方が知っておられると思いますよ」敢えて言葉にせず。リナが羽織る外套がいとうの裏を見せる。ハッと息を飲んだ店主に。「今はまだ多くの取引は出来ませんが」

にこやかに微笑み呟くが、正しく女将さんには伝わったようだ。

「お嬢ちゃん。あんたの慧眼に感服したよ。それ半値で構わないよ。その代わり……」

「はいこの国が鎖国を解いたらリドラニア大使館に、リナ・シタイルの名を出してください。私の商会と取り引きできるよう整えときますよ」「おやお嬢ちゃんは……」

「アレイク王国で、シタイル商会を営なんでおります」

今度こそ感心した声を出していた。二人の商人が仕掛ける謀反の解決法とは、




問題の謀反を起こした人物タチバナ・ビレイは、そっち趣味の同好の士と会合を重ねていた。町の南繁華街にある。居酒屋『美少年倶楽部ハイ』なんとも怪しげな名前のお店だが、店舗の広さもあって全席個室であった。このお店の売りは、美少年に扮した美少女達が、キラキラした可愛らしい笑顔を振り撒いて、そっち趣味の魔族はもじもじ身悶え。はあはあしていた。

「全くあの方はわかっていない!。私達が謀反を起こした理由も」

マッコリをグビリと飲んで、たたんとグラスをテーブルに置いた。すると同好の士の1人ムラサメ・ネネコが、「まあ~まあ~もう一杯」

マッコリを注いでいた。

「それもそうだがビレイ聞いたか?」

同僚でもあるハワタリ・ハゴロモが、眼鏡を直しながら、可愛らしい顔に影が落ちた。

「ムッ、フタバのことだな?」石の魔王ゴウドの腹心が1人。五女星のホーシャが呟いた。

「そうそう~なんか大陸から。美少年も連れてきたとか」

酔ぱらって艶やかに頬を赤らめながら。アザミが指摘した。

『ああ~知ってるさ』

ビレイは念のため見張りを付けていたから。先ほどの報告では、鬼岩城に向かってると聞いていた。

「人間の美少年。生意気な目がそそるな~」

眼鏡のお姉さんハゴロモが、ニマニマ微笑んでいた。そしてなんとも怪しげな題名の艶本。『私の上司は男の娘』を食い入るように見て、ページを巡り。ほ~う、ほほ~うと上ずった声が響いた。

「どっどうかな?」

もじもじビレイが上目遣いにハゴロモを伺う。

「悪くないね~。これ゛魔みけ´に出したらまた完売するかも♪」

石の国では密かにある本が人気である。石の魔王が五女星ごしょせいに女装させられて、涙浮かべながら。

「お姉ちゃん止めて」

「もっといじめてお姉ちゃん」なんとも廃退的な物語は、自らを滅ぼす欲求が強い魔族に、絶大なショタ&美少年の男の娘がブームになっていた。

「本当姫様はずるいですよね。私の魔王様を独占するなんて」

ネネコがふて腐れたように呟く。

『いやいやお前の魔王様じゃないし。べっべつに独り占めしないで、みんなの美少年ゴウド様だろ?』

異口同音まるで、おんなじこと言ってやがる。腐れ魔王の側近達に誰も注意をしない。だってこのお店にいる女達は、みな同好の士だからだ。そんな腐れた居酒屋に。慌てた女が走り込んできた。「どうしたのアーシ」「たったたた大変です!、まっ魔王様にとシンヤ君。それと人間の美少年が、女装して歩いてます」

「「「「「なんですって!」」」」」

五人全員が、妙ににやけた顔をしていた。

「急いで行かなきゃ」ハゴロモが受かれた声を出した。つられて全員。お店のお客全員どころか店員まで頷いていた。



エピローグ




ゴウドは気が付いて無かった。彼女達が揃って変わった趣味をした女の子だったと……、



顔を引きつらせながら、艶やかな着物。ほっそりしたうなじが、白銀の髪から覗いた。美しく化粧を施されてた美しい顔立ち。あどけない……、

『キャアアアアアアア!、ゴウドちゃんステキー、こっち向いて』

仕草一つ一つが、恐ろしく洗練されていて、とても初めて女装したとは思えない。感心した気持ちて、周りに集まる魔族の女達を複雑な気持ちで見ていた。

「ミルナには言えねえな……」

『シンヤく~んこっち向いて』

黄色い声援に。内気な少年シンヤは、真っ赤になって俯いた。

『シンヤく~ん可愛い☆』

『ハグハグした~い』

『はあはあシンヤく~ん。ぱっぱぱぱんつ何色』

明らかにおかしな声があった。

顔をひきつらせるゴウド、流石は魔王である。こんなときにも毅然としていた。 『ゴウドさま~、ハグハグさせて~』

聞き覚えのある声がした。ゴウドは虚ろな目を見張り。悲しげな笑いを浮かべた。



この後━━五女星はゴウドの足元に抱き着き、危険な眼差しで、見上げていた。 「わっ私のぼ・う・や・、クスクスクス」

肌が粟立つような、寒気を感じた。何故か身の危険を感じつつ。謀反を企てたこと誠心誠意。個人的にお詫びしたいと言われた。

ビレイはベッドで、ホーシャは更衣室で、

アザミはトイレで、 ネネコはお風呂で、 ハゴロモは茶室で、何故かアーシと名乗った女の子は、

「女装したまま抱いてください☆」

ドキドキさせれていた。

「わっ私はお姉ちゃんと呼ばれたいです。ゴウドちゃん」

「「「「私たちも呼ばれたいです」」」」

「えっあ、うん、ビレイお姉ちゃん、ホーシャお姉ちゃん、アザミお姉ちゃん、ネネコお姉ちゃん、ハゴロモお姉ちゃん、帰ってきてくれてありがとう」

『はうっ』

五人揃って胸を押さえ。身を捩らせていた。



無事事件が解決した翌日。げっそりやつれた顔のゴウドは、フタバと会談をもうけた。

「やあ~フタバ昨日はありがとう、確かに謀反を解決してくれて助かったよ……」

力なく笑っていた。昨日ゴウドは色々な物を失って、大人の階段を登りきった。いや登りきる前に振り切った。何故か結婚することになった。お嫁さんは100人ほどになりそうだった。再び寒気にカタカタ震えながら。 「やっ約束通り、僕たちは悪竜ダークサイス討伐を許すことにしたよ」

「ありがとうゴウド、結婚式には顔を出すよ」

「はっははは……、ありがとう」

力なく笑っていた。

一筋縄ではいかない魔族と魔王達、かなり特殊な趣味を持った存在もいるようだ。また同じ物語か別の物語で、背徳の魔王でした。

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