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俺より強いのをやめてもらおうか!  作者: イノカゲ
第一部『彼は勝者だそうですよ?』
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二章『今日も今日とて最強です』5

久しぶりのバトルシーンです!


暁の最強さをお楽しみください


「それでは今日も午前中の組手を始めますよ〜」


 グラウンドで花森 美結が授業開始を告げる。目の前には彼女が受け持っているクラスの生徒40人が制服のまま、列は作らずにバラバラに立っている。


「よくもまあ、全員参加するもんだなぁ」


 今日はその中に自分も含まれている。今は隣に桜とアリスが立っていて、見張られている。

 別にサボるつもりはなかったのだが、2人は毎授業こうして付いてくるつもりらしい。


「他のクラスには貴方のようにサボっている方もいるようですけど、うちのクラスはみんな真面目ですのよ」

「みたいだな」


 辺りを見回して、自分のクラスメイトの姿を見る。各々が片手剣や杖などの武器を持っている。近接戦闘の武器が多い気がするのは、花森が担任だからだろう。


「今日はペアを指定しませんので、自由にペアを組んでやってください。ペアがいなかったら先生が相手をしますので言ってくださいね〜」


 花森がそう言うと、近くの木陰へと退散していく。周りの生徒たちが「ペアを組もう」と言いながらペアを組んでいく中、隣に立っていた2人が目の前へと移動してきた。理由はだいたい想像出来る。


「一緒にやろう!」

「一緒にやりましょう!」


 2人が同時に同じ意味のセリフを発した。それから互いの顔を見合わせ、言い合いを始める。


「アリス、こいつを学校に連れてきたのは私だ。だから私にはこいつとやる権利がある」

「ですけど、あなたは入学式の日に斬りかかって負けているではないですの?それならまだ負けていない私がやるべきですわ」

「あの日は紅蓮神楽ではなかったから負けただけだ!」


 どうやらアリスの方が優勢のようだ。

 それにしても、横から見ると2人の違いがよくわかる。身長はアリスの方が少し高く、胸囲に関しては圧倒的である。

 しかしまあ、なんで女の子はこんなにもいい匂いがするのか。

 暁といえど、中身は普通の男子高校生。そういうところばかりを気にしてしまうのは仕方ない。


「どっちにしますの!」

「どっちにするんだ!」

「あ?ああ」


 2人を見比べていて、全く話を聞いていなかった。どうやら、話し合いで決まらなかったので俺に振ってきたようだ。


「あーうん。なら、今日はアリスとやろうか。桜は昨日、紅蓮神楽を使って俺を斬っただろ?」

「そうでしたの?」

「ぐぬぬ。確かに、それを言われては仕方ない。だが、次回は私だぞ!!」


 桜は悔しそうに顔を歪めた後、そう言い捨てると、他の女子のグループの方へと去っていく。

 どっちでもいいと言ったら長引きそうだったので昨日の話題を出してしまったが、それを隠そうとしていたのは分かっていたのに少し意地悪だったかもしれない。

 あとで謝っておこう。


「それではお相手お願いいたしますわ」

「はいはい」


 軽くお辞儀をするアリスを軽く手を振ってあしらう。

 武器は持っていない。ということは魔法を操る戦い方なはずである。

 アリスが後ろに下がって暁との間合いを開ける。周りではすでに武器同士のぶつかる音や爆発音が聞こえてくる。

 暁はとりあえず右手をポケットに入れて、左手で頭を掻く。


「いつでもどうぞ」

「それでは、いきますわよ!覚悟なさい!!」


 威勢良く言い放ったアリスが、踏ん張るように足を少し曲げ両手を暁の方へと向ける。


「滾り燃やせ、炎龍の叫びよ!『ファイア・ブラスト』」


 アリスの両手を中心にして、炎の渦が生み出される。大の大人1人を簡単に飲み込めるサイズの炎が暁を包み込む。

 別に避けられなかったわけではない。そもそも避ける気はなく、一歩も動いてすらない。


「上級魔法の第二詠唱でこの威力。中々やるじゃねぇか」


 魔法が終わり、炎から出てきても暁の姿は変化はない。

 詠唱とは、技の名前に幾つかの文言を付け加えることで、第一から第三まで存在し、詠唱する言葉が多いほど威力は高くなる。

 基本的な魔法はすべて無詠唱で発動することができ、上級魔法より上の最上級魔法では詠唱が必須となる。中には最上級魔法を無詠唱で行える者もいるのだが、そんな人間は数えられる程度だ。


「まだまだですわ! 『氷狼〈ひょうろう〉』」


 アリスも初めから効かないのは予想出来ていたので、狼狽えることなく次の攻撃に入る。両手から1匹ずつ形作られた氷の狼は、暁に向かって走り出す。


「今度は無詠唱の上級魔法か。速いなぁ」


 構えから発動までの速さに感心する。今度の攻撃には、自分も動くことにする。


「『身体強化』」


 小声で強化系の下級魔法を発動する。そしてポケットから右手を出し、両手の人差し指に力を入れ、それを親指で制する。

 それから、走り込んできた狼の額に照準を定め、溜めていた人差し指をバネのように弾く。

───ただのデコピンだ。


 バキバキバキンッ


 2匹の狼の全身に、ヒビが渡り砕け散った。


「本気ですの!?」


 流石のアリスもその光景にはショックを受けたようだ。1対1で上級魔法から身を守るには対等に上級魔法でなければいけないとされている。それほどに下級魔法と上級魔法には差があるのだ。


「ああ、超本気だよ」


 だが、それは一般での話である。暁に一般論は通用しない。

 固有能力で出来るのは『自分より弱体化させる』ことだけだが、今のように自分に強化魔法をかけることで簡単に対抗できる。

 時に威力を弱めた魔法でも、自分の体よりも強い場合があるので、強化魔法は必須だ。


「これが『絶対勝者』、相変わらずふざけてますわね。まさかデコピンで『氷狼』を砕かれるとは思いませんでしたわ」

「デコピンでもやりすぎたくらいだ」

「舐めないでください!なら、これではどうですの!『岩の牢獄〈プリズン・オブ・ロック〉』」


 未だ一歩も動いてない暁の四方に地面から岩の壁が出現し、そのまま暁を囲う。


「朱を帯びて液となれ『煉獄の宴』」


 囲われた暁の上部に、グツグツと煮え滾る赤と黄色の液体が現れた。


「溶けてなくなりなさい!」

 

 アリスが手を振り下ろすと、その液体は暁を囲う監獄へと流れ込む。囲う周りの壁も赤く色を変えた。容赦ないアリスの攻撃に所々から「うわぁ」と引き気味な声が聞こえてくる。


「あっつ!」


 そんな状況とは裏腹に、余裕そうな声で監獄の壁は砕かれ、中にあった液体は流れ出し周りで固まる。暁は体や頭からは赤と黄の液体をポタポタと垂らしたままの姿で、ゆっくりと出てきた。


「煉獄の宴とか言うからどんな凄いものが出てくるかと思えば、ただの溶岩じゃねぇか。熱いし、粘っこくて気持ち悪い」


 暁は体に付いた溶岩をパタパタと雨に降られた後のように払う。それを見た周りの生徒達は、先ほどアリスが暁に溶岩をかけた時よりも引いているようだ。


「あっつ!、じゃないですわ!2000°C以上ですのよ!?なんですの、その沸かしたてのお風呂に入ったくらいの感想は⁉︎」

「そんな怒られてもなぁ。実際その程度だったし」


 アリスは予想以上の理不尽さに、もう怒るしかなかった。それに対して暁は、すべての溶岩を払い終え、伸びをしながら答える。


「疲れたし、そろそろ終わりにするかぁ」

「まだ少ししかやってませんわよ?」

「戦いでも中々動かない俺は体力が少ないんだよ」


 体力が少ないのは事実だが、別にあまり疲れているわけではない。このまま長く戦いを続けていると途中で魔力枯渇を起こしそうなので早めに切り上げたいのだ。

 暁とて最強というわけではない。特に体力と魔力量は並以下である。

 魔力の消費が少ない下級魔法とはいえ、長期戦となれば元々少ない魔力量では限界がきてしまう。


「運動しないと体に悪いですわよ?」

「余計なお世話だ」


 そもそも、暁の相手を煽るような言動や行動は、相手を怒らせて攻撃してきてもらうためのものだ。

 自分で攻撃しにいくより、相手の攻撃に反撃する方が効率的に攻撃を当てることができる。

 回避に専念されている時よりも、攻撃と回避の両方に意識を向けている方が当てやすいのは当たり前だ。

 それによって時間短縮と無駄な魔力消費を避けている。


「それじゃあ、いくぞ〜」

「バチコイですわ!」


 そんな暁にとって、魔法を中心とした戦いは好きではない。間合いを取りつつ攻撃されては、反撃するのが難しく、長期戦にもなりやすい。

 だから今回のようにわざわざ自分から攻撃しにいかなきゃならない。


「よっと」


 暁は一般的な走り出しで、アリスに向かう。まさか動くとは思っていなかったアリスが一瞬動揺しているように見えたが、右腕を前に伸ばしすぐさま対応してくる。


「『タイプ2トラップ 即式』」


 地面から岩の棘がいくつも飛び出してくる。棘の威力を下げたので刺さりはしないものの、足場から突き上げられた暁は真上にと吹っ飛ばされた。


「うおっ!」

「これで終わりにしてさしあげますわ!」


 アリスが両手を重ねて、照準を暁に合わせる。


「嗤い踊りし地獄の炎、今我の前で狂い咲け!『狂炎きょうえん』」


 今度は炎の渦ではなく、幾つもの炎が鎖のように伸びて、暁を捉えようと広がりながら包みこもうとする。

 空中で落下しようとしている暁に回避の方法はない。


「やっぱりお前、最上級魔法が使えたか!流石は新入生2位といったところだな」

「だから順位で呼ぶのはやめなさい!」

「最上級魔法も見れたし、これ以上続ける理由はねぇな」


 目の前に迫る炎を前にして、暁は相変わらず余裕の態度で笑う。


「ほら、『ウォーター・スプラッシュ』」


 『フラッシュ・ボルト』に次ぐ、初歩中の初歩である水系統の下級魔法。右手を伸ばして発動されたそれは、幾つかの水の玉を放つ。

 最上級魔法と下級魔法。普通なら『狂炎』の火力によって『ウォーター・スプラッシュ』の水は一瞬で蒸発してしまう。

 だが、ここでも暁の理不尽能力によって弱体化されている『狂炎』の炎は下級魔法によって消される。

 そして、炎を消した水玉はそのままアリスに向かって飛んでいく。


「お〜い、当たるぞ〜」


 一方アリスはというと、絶望とも諦めともみえる表情で水玉を眺めたまま動かない。

 それもそのはず、目の前で必殺技にも近い自分の魔法を、いとも簡単にかき消されてしまったのだ。しかもその魔法より圧倒的に弱い魔法でとなれば、心も折れる。

 逆にここまで頑張ったアリスを称賛したい。一撃目で諦める人も結構多いからだ。


「うっぷ⁉︎」

「あらら」


 当然水玉はアリスに直撃する。水玉の到着に遅れて暁もアリスの前へ着地した。


次もバトルシーンはつづきます

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[一言] 最強さを楽しめと書いてありますが、本文では「最強ではない」と書かれています。どういうことでしょうか?
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