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俺より強いのをやめてもらおうか!  作者: イノカゲ
第一部『彼は勝者だそうですよ?』
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二章『今日も今日とて最強です』4

「美結先生が魔法師部隊の隊長!?」

「元ですよ、元。もう辞めてます!」


 花森は手で赤くなった顔を隠して、蹲る。もとよりあまり背の高くない花森が蹲るとなんだが小動物っぽくて可愛らしい。


「その繋がりってもしかして」

「相変わらず、頭の回転がいいなぁ。そう、考えている通り、『魔法兵器爆破事件』で俺に攻撃してきた魔法師部隊の隊長ってわけだ」


 その言葉を聞いてさらに花森は体を縮こめる。花森曰く、昔に隊長をやっていた事は黒歴史らしく、消え去りたい過去らしい。それはもう色々な2つ名を持っており、黒歴史になるのも分からなくはない。


「魔法師の超魔法ってそういうことだったのか」

「まあ、俺には効かなかったがな。この国、指折りの魔法師を集めた軍隊が当時中学1年生だった男の子にボコボコにされたって今考えるとかなり滑稽な話だなぁ」


 暁はケラケラと思い出し笑いをするが、その話自体かなりデタラメだ。もし、目の前に暁がいなければ到底信じるのは難しかっただろう。

 中学1年生で大人の魔法師部隊を壊滅させ、戦車をすべてひっくり返す。

 そんなことが出来るなんて、果たして人間なのだろうか。もはやバケモノだ。

 そんな事を考えながら桜は思わず、ジロジロと暁のことを見つめてしまう。


「なんだ?惚れたか?」

「ち、違う!決してない!! 絶対ない!!」

「冗談だよ、冗談。そんなに強く否定されると流石の俺も傷つくぜぇ?」


 耳まで真っ赤にし、慌てた様子で否定する桜にそんな台詞を言いながらも、暁は笑っていて傷つく気配などない。

 それもそのはず、暁はあの事件からずっと1人で過ごしてきたのだ。今さら、誰かに嫌われようが好かれていまいが、大したことではない。


「随分と時間を使っちまったな。早く行かないと朝礼に遅れるぞ」

「なに!? こうしてはいられん。暁、早く行くぞ‼︎それでは、美結先生。また後でよろしくお願いします」


 桜は未だに蹲る先生にお辞儀をすると、校舎の方へと走り出す。暁としては特に遅れることはなんの問題でもないのだが、せっかくここまで来たので、付いて走ることにした。

 走っていくと、宙に浮く鞄の横を通る。それはさっきまで先生が持って歩いていた物だ。


「あれは美結先生の能力なのか?」


 走りながら桜は暁に尋ねる。


「ああ。あれは先生の『空間掌握スパティアル・マナク』だ。俺も詳しくは知らないんだが、物を空中に固定させることが出来るみたいだ。あとはさっき見た感じだと、他に自分だけの空間を持ってるな」


 おそらく、先ほどポケットに銃をしまえたのはその自分だけの空間のおかげだろう。いきなり大量の銃を出せたのも、それのおかげだと考えれば納得がいく。


「それにしても、まさか先生が元軍人だったとは」

「花森は俺との戦いを最後に引退したんだとさ」


 やっぱり、1人の少年を殺そうとした罪悪感から続けるのは難しかったのか、と桜は思う。


「ボコボコにされてたことで心が折れたらしい」


 全然違った。罪悪感など少しも関係無かったようだ。

 "1人の少年を大人達が寄って集って殺そうとしている"構図もかなり酷いものがあるが、"1人の少年が寄って集ってきた大人達をボコボコにしている"構図なんて想像も出来ない。


「暁、お前は本当に人間なのか?」

「さあな。生物学上の話ならば俺はしっかりと人から産まれた人の子だし、少なくとも俺は人間である事をやめたつもりはねーよ」


 暁は気軽く言うが、それはつまり自分でも他人からバケモノとして見られていると自負しているということだ。

 桜は言葉を詰まらせる。2人の間には、走る足音だけが残った。

 先に口を開いたのは暁だった。


「50機以上の戦車からの砲撃を受けても無傷。空爆やマグマをかけられても服には汚れすら付かず、国防軍をたった1人で潰した人間を普通だと思える人はいねぇよ。俺でも無理だ」


 だから、と暁は横を走る桜の顔を見ながら続ける。


「そんな気にすんなよ。ほら、その、友達……なんだろ?」


 それだけ言って、暁は照れくさそうに笑ってから、前を向く。


「……ああ!そうだな!」


 予想もしていなかった言葉に驚きながらも、桜は微笑みながら答える。


 (ただ、強すぎるが故に社会から切り離され、人と関わることが少なかっただけなのだな)


 1人で学び、1人で戦い、1人で過ごしてきた暁には、周りに合わせるというが苦手だ。だが、それでも1人の人間なのだ。

 話し相手も欲しければ、友達も欲しい。なにもおかしいことはない。


「ふふっ」

「な、なんだよ」

「いや、なんでもない。ほら、早く行くぞ!」


 その後、2人は一言も言葉を交わすことなく教室へと向かった。


花森先生は結構強いです!

バトルシーン入れられたらいいなぁ

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