二章『今日も今日とて最強です』3
色々な行事が落ち着き、やっと書けました
文章力がかなり落ちましたが、頑張って書きました!
「お前が食べていいって言ったから食べたんだからな!別に食い意地を張ったわけじゃないからな!」
桜の弁解する声が住宅街に響く。今は家を出て学校に向かって歩いている最中で、桜の弁解はすでに10分ほど続いている。
「だから分かってるって。笑って悪かったよ」
暁は嗜めるように桜に言う。あの後、制服に着替えた暁が鞄を持ってリビングに戻ると、予想通りに2枚とも無くなっていて、思わず笑ってしまった。
「笑ったのが問題なのだ!しかも、「やっぱり」って言いながら笑っただろう!」
そこからずっとこの調子だ。
あれだけ強く食べない的なことを言っておいて食べた上に、何事もなかったようにソファに座っていた桜を見れば誰でも笑う。
「別にいいじゃねぇか。あれは俺が火力、時間、焼き方にまで拘った最高の一品だぜ?美味しくて2枚とも食べたっていうんなら俺も嬉しいよ」
実際、あのトーストを生み出すのに2年くらいはかかっている。
特にすることもなかったので、毎朝いろんなパターンを試して辿り着いたのだ。
「そうなのか……なら仕方がないな!ああ、仕方ない!」
都合のいい言い訳を聞いたように桜は自分に言い聞かせるように言う。
そんなに食べたことが悔しかったのか……
「落ち着いたか?」
「何をいうか。私は最初から落ち着いている」
「よく言うぜ」
そんな会話をしながら2人で並んで歩いていると、学校の校門が見えてくる。ポツポツと他の生徒たちも登校してきているようだが
「この時間の割には人少ねぇか?」
校門から校舎の方へと続く桜の並ぶ道には生徒が5、6人ほどしか見られない。
まだ時刻は8時10分と朝礼までにはあと20分もあるのだが、もう少し登校してくる生徒がいても良さそうなものだ。
「みんな朝の講習を受けている。まだ登校していないのではない。もう登校しているのだ」
「まだ学校に入ってから3日目だぜ?随分と勉強熱心なんだな」
「この学園ではできない者は見捨てられるから、みんな必死なのだ」
そういえばこの学園はかなりの実力主義の学校だと聞いたことがある。
すでに何か教師に言われたのかもしれないが、まだ2時間しか授業に出ていない暁には分からないことだった。
「ふ〜ん。つまりこんな時間に登校してくるやつは出来るやつらしかいないってことか」
「なんだ?自慢か?」
「お前も含めてだよ」
暁は苦笑をしながら答える。暁は当然ながら、桜は頭も切れて十分に強い。
あの居合いの速さは常人では避けるどころか防ぐこともままならないだろう。
正直な話、魔刀に『絶対勝者』が効いていなかったら、今頃暁は最初の一撃で負けている。
こんなか弱そうな少女のどこにあの速さの居合いを出せる力があるのか。
「なんだ?人の顔をジロジロ見て」
「いや、なんでも」
暁は目線を桜から前へと移す。すると、その先に、ふんわりカールのかかった茶髪の教師の姿があった。
「あれは花森か」
「花森先生だ。先生を付けろ……ってそうだ!美結先生について教えてくれるのであろう。どういう知り合いなんだ?いつ知り合った?出会いは?」
「騒がしいやつだなぁ」
余計なことを言ってしまったと後悔しながら、暁は少し屈んで小石を拾う。
「何をしている?」
「気になるなら自分で聞いてみたらいいんじゃねえの!」
そして、拾った小石を振りかぶって前の茶髪の教師に向かって投げる。
もちろん普通に投げたのではない。しっかりと魔法で加速させてある。
「そんなことしたらあぶな……い?」
瞬きはしていなかったはずだ。だが、一瞬にして先生の姿はその場から消えた。まだ持っていた鞄を宙に残したまま。
「暁、これはどういう!?」
振り向くとそこには、暁に20丁の銃を突きつけている花森先生の姿があった。
実際に持っているのは二丁だけだが、他の18丁は銃口を暁に定めたまま空中で固定されている。
「おはよう、花森」
暁は声色も変えず、普通に挨拶をする。花森は睨むように暁の顔をジロジロと見る。
「な、なんだ。暁くんか〜」
バンッ!
今自分が銃を向けているのが暁だと分かると花森は容赦なく20発を撃ち込んだ。
「分かった上で撃つとか、教師の行動とは思えねぇな」
「いきなり人に向かって加速させた石を投げてくる暁くんは人としてどうかと思います!」
花森はぶつぶつと文句を言いながら展開された銃の片付けを始める。
宙に浮いている銃を取っては、ポケットの中に入れるという奇怪な動きだが、これこそがこれほどの量の銃を展開出来る秘密なのだ。
「え?え??」
状況が理解できていない桜が疑問の声をあげる。
「どうしたんだ?」
「美結先生って戦えたんですか!?」
「ま、まあね」
花森は隠し事をするようにたどたどしく答える。
「どういうことだ?」
「美結先生は普段、虫も殺せないほど穏やかで優しいのだ。ずっと戦いなんて出来ないと思っていたのだが」
「ほほう。なるほど」
入学式のあとの授業にも、昨日の通常授業にもろくに出ていない暁には、花森がどんな風に生徒と接しているのかは知らなかった。
だが、暁はその話を聞いて全てを察したのか、ニヤリといたずらな笑みを浮かべる。
「理由を聞こうか」
「いや、私としてはこっちの方が生徒からの受けがいいと思ったんですよ。キャラチェンです、キャラチェン。転職デビューです!」
「キャラチェンねぇ」
暁よりも少し低い身長の花森はばたばたと手を振りながら弁解をしている。
キャラチェン?転職デビュー?桜には、会話に出てくるその言葉が何を意味しているのか全くわからなかった。
「なんの話をしているのだ?」
「桜、お前花森とおれがどこで知り合ったか知りたいって言ってたよな」
「確かに言ったが」
「教えてやるよ」
「だめ〜」
隣で必死に言わせまいとする花森先生を左腕で制して暁は告げる。
「花森美結は元国軍 魔法師部隊 隊長だ」




