八章 『新入生トーナメント』3
きりがよかったので、短めです
『上井草 飛鳥 場外〜〜〜勝者 鬼嶋 竜斗ぉぉぉぉぉ』
大きなアナウンスと歓声が、会場中に湧き立つ。そんな中飛鳥は、アナウンスで負けたということだけはりかいしたものの、何が起きたのか理解できていなかった。
「なんで……」
倒れた体を起こして、鬼嶋を見る。目線の先では、鬼嶋はまだ背中をこちらに向けて立っていた。そう自分が隙だと判断し、ナイフを向けた姿。
だが先ほどと違うのは、轟々と燃える炎だけが、鬼嶋を体を離れて拳をこちらに突き出していることだ。
「悪いな。こいつ、炎鬼はある段階を超えると、俺の意識とは別に動くようになるんだ」
向こうを向いたままの鬼嶋からそんな声が聞こえてくる。
顔があるわけでも目があるわけでもないが、それでもユラユラと揺らめく炎がこちらを見ている錯覚に陥った。
『炎鬼』
まさに鬼と対峙している、そんな威圧感を感じ固まって、睨み合っていると、フワッと鬼嶋が身体に纏っていた炎が消えた。
「自動防衛っていうか自動攻撃というか……敵の裏をとって攻撃するお前には相性が悪かったってわけだな」
振り返った鬼嶋は、申し訳なさそうな顔をしながら声をかける。その様子を見て、自分は負けたのだという実感が遅れてやってくる。
倒れ込んで青空を眺めていると、場外に倒れている飛鳥に近づいてきていた鬼嶋から伸ばされた手が視線に入る。
「大丈夫か?」
「ありがとう!大丈夫だよ!」
手を借りて身体を起こす。
「悔しいけど、私の負けだね。情報収集は十分したつもりだったけど、そんな話は出てこなかったから完全に想定外だったよ」
悔しさに顔をしかめてから、飛鳥は清々しい笑顔を浮かべる。
「このトーナメントじゃあ、まだ炎鬼が出るレベルまでたどり着いてなかったし、授業でも出してなかったからなぁ」
「なるほどね。けど分かったからには、次戦うまでに対策を考えておくから!」
「おうよ!俺だってもっと鍛錬して、次は炎鬼なしにお前に勝ってみせるぜ!」
2人は強く手を握りあっていつかの再戦を約束する。それから飛鳥は、退場するために出口へと歩いて向かっていく。バトルエリアへの入退場口に勝っていれば次の決勝戦で当たるはずだったライバルの姿があった。
「アリス!」
「お疲れ様、アリス。惜しかったですわね」
「ありがとう!あの炎、威力も強いし、最後のは予想外だったよ……」
「確かに、自立型魔法は厄介そうですわね」
アリスはフィールドの反対側に立つ鬼島を、顎に手を当てて眺める。まだ轟々と髪から炎を揺らめかしているその姿は、全身が炎が出来ていると言われても疑わない。
「戦えなくて残念だよ」
「私もですわ。けれどこれからまだまだ機会はありますわ!」
「そうだね。次まで待っててね」
フィールド側からアリスの名前を呼ぶアナウンスが聞こえてくる。フィールドの修復が終わったのだろう。自分の戦いでは大きな破損はしなかったので、早く終わったらしい。
「呼ばれてるよ。アリス」
「ええ。それじゃあ言って来ますわね」
「頑張って!」
フィールドに向かうアリスを見送る。入場するやいなや先ほどよりも何倍も大きい歓声が聞こえてくる。
それだけアリスは有名で、強く、期待されているのだ。
(勝って決勝に行きたかった……)
暁が理由ではない。勝ってみんなに認められたかった。そんな気持ちが強く込み上げてくる。
飛鳥は、唇を噛み締めて入退場口を後にした。
エタってません!
また書いていきます!!!
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