八章『新入生トーナメント』2
合間合間でひと段落ついたので 更新です
「よ〜し、この試合に勝てばアリスとの決勝戦。賭けに勝つためにも負けられない!」
飛鳥は、ペチペチと頬を叩いて気合いを入れる。観客席に座る桜達の方を見ると、アリスは控え室ではなく席に戻ったようで、話しているのが見えた。
一人会話に参加していない三津茅がこちらの目線に気づいたのか、ガッツポーズをしてくれる。それに対し、力強くガッツポーズをし返してから、目の前にいる相手に向き直す。
「よろしく頼むぜ!上井草 飛鳥」
「こちらこそ、鬼嶋くん!」
お互いは挨拶をして、鬼嶋は手を握りしめ、飛鳥は両腰に付けた短剣に手をかける。
『準決勝、始め〜〜!!!』
アナウンスが会場に響いた。それと同時に鬼嶋は、両手を合わせ、詠唱を叫ぶ。
「纏うは不死の炎。我が身尽きようと燃え尽きることなかれ!『滅身獄炎』」
目の前に真紅の魔法陣が現れ、鬼嶋はそれを通る。抜けた鬼嶋は、両手足に炎を纏い、それ以外の場所にも炎が漏れ出すような姿になる。
固有能力『気炎万丈』──炎への耐性を有し、また本人の感情の高揚によって炎系魔法の威力を上昇させる。
魔法は魔法陣から出ると同時に使用者から独立する(暁のように魔力を巡らせ続ける場合を除く)。つまり、本来は炎を纏うという行為は自身の身を傷つけてしまう行為なのだ。
それを可能にする固有能力は、攻防の両面から見て優れていると言える。
「髪の毛まで燃えてるよ、鬼嶋くん」
シュルッと鞘と刃の擦れる音を放ちながら、飛鳥は二本の短剣を抜く。
「それだけテンション上がってるってことだ。準決勝だからな!燃えてくるぜ!!!」
どんどん気分が高揚しているのか、鬼嶋を中心に熱風が放たれる。
「いくぞぉぉ!!『炎鬼の息吹』」
鬼嶋は大きく息を吸い込み、口元現れた魔法陣へと思いっきり吹き出す。勢いよく噴射された炎は、フィールドの半分を覆い尽くした。
無詠唱としては破格となる威力を出せるのも、鬼嶋の固有能力のおかげである。
「ひゃ〜、やっぱり様子見なんてしてられないね」
固有能力『瞬間移動』によって鬼嶋の後ろに移動していた飛鳥が言う。
感情の高揚によって強くなれる固有能力。それはつまり、試合が進むにつれ、さらに強くなっていく可能性が高いということだ。
これまでの試合でも、進むにつれて威力が上がり、最後は相手が避けきれなくなるか、耐えられずに負けていた。
「全力でぶつかってこそ勝負!俺は最初から全力だ!!」
そう言った鬼嶋は、自身の拳同士を体の前で当てる。すると、体を纏う炎が勢いを増し、熱気がさらに強くなった。
「『炎鬼の爆拳』」
鬼嶋は右腕に炎を溜めると飛鳥の方に飛びつき、地面を叩く。ドカンッという音と共に、炎が飛び散った。
「そこっ!」
再び後ろに移動していた飛鳥が、右手に持っていた短剣を投げる。技を撃ってすぐだったために反応が遅れた鬼嶋の脇腹を短剣が掠る。
「くそっ!!『火球』」
咄嗟の反撃で腕から下級魔法の『火球』を繰り出すも、すでに飛鳥の姿はない。
「遅い、遅い!」
三度背後へ瞬間移動した飛鳥は、投げた短剣を空中で回収、再び鬼嶋に向かって投げつける。
「おらっ!」
次は右腕を振るって短剣を弾く。だが、
「なに!?」
弾いた一本目の後ろ、全く同じ軌道でもう一本の短剣が投げられていた。もう一本に対応が間に合わなかったものの飛鳥の狙いが甘かったのか、短剣は鬼嶋の頬に傷をつける。
「なかなかやるでしょ?」
「最初から侮っちゃいなかったが、思っていたより強いな。こっちだって負けてらんないぜ!」
さっきと同じように、拳を体の前で強く突き合わせると炎の勢いがより一層強くなった。纏う炎は、上半身の腹部を除きほとんどを占め、下は膝まで覆われている。
「『豪炎乱舞』」
鬼嶋は四方八方への炎球攻撃を繰り出す。飛鳥の苦手とする広範囲に及ぶ攻撃ではあるが、
「よっ、よっと」
瞬間移動と軽やかな身のこなしで、炎球の合間を縫って回避する。
(時間と共にどんどん炎が強くなってる。決着をつけるなら早くしないとこっちが不利になっちゃう)
そう判断した飛鳥は、左手に握る短剣の柄に付いている仕掛けに触れる。
「よし!」
1度目の移動は鬼嶋の死角となる右斜め後ろへ。そこで左の短剣を投げる。
チリンッ
さっき触れた仕掛けによって、柄から垂れるように鈴が増えていた。それが投げられたことにより、小さく音を出す。
瞬間移動する敵と戦う時、どこに移動したかわからない為に、些細な音に敏感になる。そこで、わざと音を鳴らせば意識を集めることができる。
ここ二回の攻撃で、反射的に範囲魔法を使うタイプでないと分かった。
(なら、一瞬でも意識を逸らせれば!)
案の定、囮で投げた短剣へ顔を向けた鬼嶋の背後へ移動。右手に握る短剣の峰を前に向けて持ち、まだ残る炎球を避けて自身での特攻を試みる。
無防備な鬼嶋の後ろ姿。炎に包まれているとはいえど、露出した首元を狙えば大丈夫だろう。
(もらった!)
と勝ちを確信したその瞬間、
「きゃあっ!!!」
真っ赤な熱い拳が、飛鳥を場外へと弾き出した。
受験生活もあと少し
もう一回更新できたらいいなと思ってます
感想などもお待ちしてます!!
更新しなくなったりはしないので ご安心を!




