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俺より強いのをやめてもらおうか!  作者: イノカゲ
第一部『彼は勝者だそうですよ?』
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六章『勝者は抜きで最強を決めましょう』3

 黒峰 桜は二本の刀を携えて、学校の校門の前に立っている。登校時間だというのに周りに人が少ないのは今日が新入生トーナメントであり、みんながそのために朝から準備しているからだ。

 桜が朝早く学校に行ってないのは別に余裕だからというわけではなく、無駄に魔力を使いたくないからである。なのでほとんどの試合の前は、イメージトレーニングだけで済ませてしまうことが多い。


「今回のトーナメントが大切なのは分かるが、みんなよくやるものだなぁ」


 桜が運動場から上がっているのであろう火柱や竜巻を見て言った。学年内カーストが決まってしまうと言っても過言ではない新入生トーナメント。周りの生徒達に対しての牽制なのだろうが、それにしてはやり過ぎなのではと思う。

 魔力の回復速度にも個人差がある。桜は平均くらいで、アリスは結構多い方だと言っていた。


「アリスは……私が運動場に迎えに行った方が良いのだろうか」


 朝、家を出た後すぐにアリスからメッセージが届いた。内容は大会の会場に一緒に行こうというものだ。アリスは先に学校に行って運動場でウォーミングアップしているらしい。

 特に待ち合わせ場所を決めていなかったので、校門から動けずにいるのが今の状況だ。普段の授業ならすでに予鈴がなる時間だが、今日のトーナメントの集合時間は30分遅いので余裕がある。


「別にすることもないし、迎えに行くか」


 そう決めて行こうと一歩踏み出したところで、急に目の前に2つの柔らかな障害が現れる。


「んっぷ!?」

「きゃあっ!! 」


 むにゅんと障害に埋もれた桜は、前からの勢いに押され、そのまま後ろに倒れた。尻餅をつくも、そのまま柔らかなものが覆い被さってくる。


「んんっん!?……ぷはぁ」


 潰されて息苦しくなり、何とか離して息を吸う。


「一体、誰だ……ってアリスじゃないか。それと上井草さん?」


 顔を上げると、覆い被さってきていたのがアリスだったことが分かる。気づいてはいたが、柔らかなものの正体は大きな胸だった。

 その後ろに立ってこちらを見下ろす明るい茶色の女子生徒の姿が見える。昨日今回の賭けを言い出した本人だ。


「飛鳥でいいですよ!同じ年ですし」

「分かった。それで飛鳥は何でここにいるんだ?」

「急いでるというのでアリスを瞬間移動で連れてきたんです。私もお話したかったので」


 そうなんですの、と桜から離れて立ち上がりながらアリスが言う。慌てて着替えてきたようで、制服のボタンも止めきれておらず、髪はボサボサだ。


「丁度更衣室の前で会ったのですけど、私達と話がしたいと言っていたので、私ごと瞬間移動出来ないかとお願いしたんですの。まさかちょっと浮いた状態で着くとは……」

「滅多に人を連れて移動することなくて少しずれちゃいました。ごめんなさい。桜も大丈夫でしたか?」


 謝りながら伸ばされた飛鳥の手を掴んで、桜は立ち上がる。


「ありがとう。別に急がなくても、まだ時間はあるから大丈夫だったのに」

「待ち合わせ場所を決めていなかったので、どこかで待たせてしまっているかと思いまして。桜なら校門にいると思って最初に来たのですけれど、大正解でしたわね」

「そうだな。とりあえず歩きながら話そう」


 アリスが制服などを整え終えたのを見て、桜は歩き出す。後ろから追いつくように右にはアリス、左には飛鳥の順で並ぶ。横に並んで分かったが、アリスは自分よりも少し背が高く、飛鳥は少し低いらしい。


(飛鳥の方が背が低いのに、胸が大きいとは何事だ……)


 自分のものを見下ろしてから、飛鳥のものを見て絶望する。右で何か揺れ動いているかそんなものは見ない。さっき潰された時に十二分に絶望した。


「そういえば飛鳥は暁からメール来ていなかったようだが、暁が今日来ないのは知っているのか?」

「もちろんです。というか二人にメールするように言ったのは私ですから」

「朝、暁に会ってきたのか?」

「そうです!一夜を共にしてきましたよ。朝まで気づかれてませんでしたが」

「流石、ストーカーはやることが違うな……」

「ストーカーはやめてください。ファンですよ、ファン」


 飛鳥は自慢げな顔を浮かべるが、アリスと桜は少し引き気味でそれを見る。


「来れない理由は知ってますの?」

「知ってますけど、他人には言えないというか、私も知ってちゃいけないというか」

「暁ならそういう理由があっても納得だな」

「そうですわね。この前も国の役員に呼ばれていましたし」


 昔、国から命を狙われたというこれ以上ないほどの秘密を持っている暁のことだ、人に言えないことなど山ほどあってもおかしくはない。あの力を持って普通の人生を過ごすのは無理だろう。

 そもそも、この学校に通えていること自体不思議だ。今度聞いてみよう。


「いなくても賭け自体は問題ありませんし、トーナメントは頑張りましょう!えいえいおー」


 飛鳥が元気よく拳を突き上げる。賭けというのは、今回のトーナメントで飛鳥が優勝出来れば暁と付き合うことが出来、出来なければ抱きつく権利の剥奪。アリスか桜が勝てば、買ったほうが暁と一対一で戦える権利を得るというものだ。

 このトーナメントはグループ戦ではなく、個人戦で一人しか優勝出来ないわけで、


「「…………」」

「あれ?聞こえませんでしたか?やる気あるんですか?」

「そういうのってチーム内の士気を上げるためにやるんじゃないのか?」

「そう言われてみればそうかもですね。私達はトーナメントじゃ敵同士でした!」


 飛鳥が色々ズレているというか抜けているところがあることを感じる。この学校に来るの厳しい特訓が身を結んで強くなった者。それか、ただの天才のどちらかだ。

 桜は前者に当たる。お世辞にも才能があるとは言えない桜ので、それならの時間を費やして技術を習得した。大体そういう人間は、努力家で真面目な性格がほとんどだ。

 それに対して後者の天才は、普通と違った感性を持っていたり、常識がなかったりと特異的なことが多い。


「まあまあ、細かいことは気にしないで!お互い頑張りましょうね!!」

「そうですわ。この中の3人が優勝しても悔いがないようにするのが一番ですの」

「優勝するのはこの3人じゃないかもしれんがな」

「それは最悪ですの……」


 先にも言ったように、合格者の中には天才がいる。そう奴らの中には、実技試験がほぼ満点に近くとも、筆記テストが壊滅という奴らがザラにいる。

 入学試験1位、2位であるアリスと桜だが、そういう戦闘の天才に負ける可能性は十分にあるというわけだ。その相手は飛鳥かもしれない。


「絶対負けませんよ!」

「私もだ!」

「もちろんですの!!」


 他には生徒が誰もいない噴水広場に、3人の少女達の元気な話し声が響き渡っていた。

今週にもう一回出せたらいいかなとは思ってます

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