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俺より強いのをやめてもらおうか!  作者: イノカゲ
第一部『彼は勝者だそうですよ?』
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五章『勝者はわりと働き者』3

「調子に乗るなよ?てめぇ」


 暁を吹っ飛ばした本人─ファディスは机に乗って壁から床に落ちた暁の方を見下ろす。その右手は赤くトゲトゲしい物に変わっていた。


「椅子の耐久度が足りないな」


 何事もなかったように暁は立ち上がって、パーカーを手で払う。外傷はなく、服にもダメージはない。


「それが魔装ってやつか。初めて見たけど、かっこいいな、それ」


 そのまま続けて軽口を叩く暁だったが、実際のところでは──


(あぶねぇぇ……魔装があんなに早く出来るなんて聞いてないぞ!あと数秒遅れてたら背骨折れるとこだった)


 めちゃめちゃ焦っていた。暁の能力における発動条件の1つである『相手の認識』──これは相手の服装や見た目が変わっただけで無効になってしまう。ましてや、体を悪魔化にする能力である魔装を使われれば、対象外になってしまう。

 再認識出来たのは殴られる寸前だった。


「殴った感触はあったはずだが……無傷とかさらにむかつく野郎だな」

「そりゃどうも」


 それも当然、暁の能力は攻撃の無効化ではないので、実際に殴っているからだ。身体強化を使っているので無傷ではあるが、強風であったり、今回のように足が浮いていて殴られればぶっ飛ばされる。


「椅子はどうしたら?」

「それなら少し待っていれば大丈夫だよ。ほら、ファディスも机から降りて」


 ガリウスにそう言われると、ファディスは机から降りて、自分の椅子へ戻る。不意打ちをしたのに凌がれてしまったからか、素直だった。


「待つ?」


 疑問を持ちながらもガリウスに言われた通りに砕けた破片を見ていると、急に破片が光を帯びる。すると、それぞれが動き出して椅子を形作り始めた。


「おお……」

「壊れない椅子を作るより、壊れた後に直る椅子を作る方が簡単だったんだ。魔法を持続させるより、後発的に発動させた方が楽だからね」

「なるほどな」


 リベルアスでは物に魔法を組み込むという技術が発達してない。月見が使っていた武器のように魔力を流して発動させるならまだしも、完全自立型の魔法を組み込むことは出来てない。

 

「それじゃあ、本題に入ろうか!」


 まったく同じ形に戻った椅子に暁が座ると、ガリウスが手を叩いて流れを変える。


「暁はどれくらい知っているのかな?」

「敵の事と呼ばれた理由くらいだ」

「そっか。じゃあ、いきなり今回の作戦について話をさせてもらうけどいいかな?質問はその都度受け付けるよ」

「ああ、大丈夫だ」


 それじゃあ、と言ったガリウスは黒い丸机のを撫でる。すると、机から幾つかの機械音が鳴り、全体に立体映像が映し出された。


「これは?」

「集まった5ヶ国全部の簡易地形だけど……見たことないのかい?」

「位置関係しか調べてもわからなかったんでな」


 五ヶ国の地形だというそれは、住居などの建物が一切存在していないことを抜いても、自然的に作られたものには見えなかった。バツ印のようにクロスしていたと思われる岩の壁の中心が、円形に抉られている。なので、円を共通して4つの区切りが出来ていた。

 円がリベルアス、北がミルフィリア、南がダクソス、西がザーミット、東がギルラミナということになる。


(他の国が岩の壁によって戦争しづらいのは分かるが、なぜうちは4国に壁なしで囲まれているのに攻められていない。国家機密の歴史書が正しいとするなら、歴史上一度たりともだぞ……)


 暁が映し出された立体映像を睨んでいると、成宮が声をかけてくる。


「どうしたのかにゃん?」

「いや、なんでもない。初めて見たから色々気になっただけだ」

「にゃはは、この地形を見て色々思うのはいいけど、暁ちゃんが思ってるより神秘的で怪奇的で難解な話だよん。今考えたところで納得はできないってわけ!」

「まあ、知るのはこれが終わってからでも遅くないしな。その時は説明頼むよ」

「お任せあれ!」


 成宮との話を終え前を向くと、それぞれの前にウィンドウが開かれていた。


「それが今回の作戦内容だよ。と言っても正面からの総力戦なんだけどね」


 ガリウスは内容を深く読む必要がないという趣旨を伝え、前の立体地形を見るように促す。指差していたのは、ダクソスとギルラミナの間にある岩壁。そのままガリウスが指を振ると、ギルラミナ側の岩壁がクローズアップされる。

 近づいたことで風景が詳しく映るようになり、岩壁の周りに森が現れる。

 さっきまで何も比べるものがなかったので、大きさがよくわかっていなかったが、木々が現れたことにより、その壮大さが分かるようになった。


「岩壁というよりは岩山って感じだな。横に長いが」

「そうでございますね。1番上では雪も降っておりますし」


 白峰が微笑んで言う。こんな岩壁が一箇所だけではなく、4つもあるとはいよいよ自然物とは思えない。


「そのせいで雪崩れとかも起きるから、下の方は危なくて誰も近寄らないんだけどよくやるよね」


 ガリウスが言っているのは森が開けている岩壁の真下にある建物だ。一階建てだが、横に長細い形をしている。


「ここが敵のアジトなのか?」

「そうだよ。おそらく人数は1000人ほど、戦略は今からこの映像に反映させながら話すから見ていてくれ」


 再びガリウスが指を動かすと、立体映像に人達が現れる。


「今回は正面からの総力戦になる。相手が1000人とはいえ、戦いの経験があるのは100人ほどで、それ以外はあとから入った犯罪グループがほとんどだからね」


 その言葉を始めの合図に映像が動き始める。


「僕達、ミルフィリアは主に空からの攻撃を受け持つ。地上からの攻撃の中心はダクソリスに任せようと思うけど大丈夫かな?」

「ああ、大丈夫だ」


 ガリウスの提案にファディスは肯定で返す。

 映像では翼の生えた人達が空から攻撃を放ち、飛んでいない翼の生えた人達が地上から敵陣地へ攻撃を仕掛けている。


「ギルラミナは左右からザーミットの武器を使って遠距離攻撃をしつつ、逃亡しようとする奴らを捕まえてくれ」

「わかりました。抵抗者の攻撃はどこまでなら許容範囲でしょうか?」

「殺すのは勘弁してあげて」


 了解しました、と白峰は頷く。

 今度は、刀を持った人達が左右に展開。これによって敵のアジトを三方向から囲むような形になる。後方は岩壁なので逃げる余地はなくなった。


「ザーミットは今言った通り、武器の提供と」

「私の戦闘人形達が戦意喪失者達を確保すればいいんだよね!」

「お願いします」


 戦闘人形を使いたくてたまらないのか、成宮が子供のようにはしゃぐ。そして、敵アジトの前では何機かの自動戦闘人形が目まぐるしく動き回るようになった。


「とりあえず決まっているのはここまでだね。暁がどんな能力を持っていて、どんなことが得意なのか分からないから、作戦に組み込めていないんだけど……何が出来る?」

「まあ、制圧くらいなら」

「なるほど。じゃあどこに配置しようか」


 冗談で聞くような感じで尋ねてくるガリウスに対して、暁は普通の声で当然のように答える。


「遠距離攻撃は得意じゃないんで、真ん中で頼むわ」

「真ん中というと?」

「味方と敵陣地の間だな」

「つまり1人で敵陣地に突っ込むってことかい?流石に君1人を狙わずに攻撃するっていうのは難しいんだけど」

「お気遣いありがとさん。でも大丈夫だ。俺ごと打ってもらって構わねぇ」


 得意げに調子に乗ったことを言う暁に、ファディスは舌打ちをする。だが、口を出すことはしない。

 ガリウスは、2人をみて苦笑いしながら入り口の近くに立つ久我に目線を送る。


「それで大丈夫です。死んだときは死んだときで、我々もありがたいので」

「言ってくれるじゃねぇか、久我」

「そうですか。なら暁は前線で戦うということにしましょう」


 戸惑いながらも暁の役割を決め、手をパチンと叩いて映像を終わらせる。


「作戦は明日です。集合はギルラミナの中心都市にしましょう」

「明日って……またか。新入生トーナメントの方は出れないとしても見ないとあいつら怒りそうだなぁ……」

「変に伸ばして相手に悟られるのも嫌ですから、申し訳ありません」

「それは仕方がないが」


 こっちは人の命が懸かっているので、優先順位が高いのは当然。最悪、桜とアリスの2人ともと戦うことまでは考慮しよう、と暁は思う。


「最後に何か質問はあるかな?」


 ガリウスが全員を見回して問う。ファディス、白峰、成宮は首を横に振って意を伝える。


「あー、じゃあ質問というか要望が1つある」


 それに対して暁は手を高く上げた。

国とキャラがたくさん出てきて申し訳ない

そのうちまとめたのを出しておきますね

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