四章『勝者は抜きになるそうです』3
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銀色に輝く長髪は巻かれて、縦巻きロールになっている。制服は紺色で、こちらを見る群青色の瞳と揃えているようだ。
「その通りだが」
暁の答えに周りの生徒達がざわつく。おそらく今学校で1番話題の中心である人が来たのだから仕方がない。
「静かに!」
だが、この女子生徒はあまり寛容ではないらしい。ざわついた室内に一喝を入れる。
話し声はピタリと止み、静寂が訪れた。そして、女子生徒は椅子から立ち上がり、こちらへと近づいてくる。
「私は副会長の八雲 麗花です。よろしく」
手を伸ばして自己紹介をする。握手を求められたようなので、素直に手を握る。
八雲といえば、確か忍者の名家だったはずだ。リベリアス国には忍者はいないが、他国にはいる。まだ見たことはないが、この前テレビでやっていた。
「よろしくさん。会長は?」
「会長達三年生は研修旅行中なので……入学式で会長の挨拶あったわよね?」
「悪いな。入学式は面倒で途中までしか出てないんだ」
「そう……」
八雲はどういう態度で話せばいいのか探っているようで、慎重な顔つきで返事をする。
本来なら堂々とされた入学式サボりました宣言に対して怒らなければならないのだが、下手に口は出さない。
「それで、話っていうのは?」
「それは今から会議をはじめるのでそこでさせてもらうわ。とりあえず席に座って頂戴」
「はいよ」
暁達3人は指差されたパイプ椅子に座る。並び方はさっきまでと同じ左からアリス、暁、桜の順だ。
「それでは、これから明後日の新入生トーナメントの最終確認および決議を始めます」
自分の席へ戻った八雲は、会議開始の声をかけた。
だが、注目は暁に集められており、会議を進めながらも周りの生徒達はチラチラとこちらを見てきている。中には潔くじっとこちらを見つめるものも数人。
「おい、暁」
「ん?」
右に座る桜が小声で話しかけてくる。さっきはあまり気にしていなかったが、座って顔を寄せると甘い香りがする。
「視線が痛いのだが……」
「このぐらいなら日常的なもんだぞ?俺と一緒に行動する気なら慣れないとな」
「わ、私はあまり見られることは得意じゃないんだ」
「そう言われてもなぁ。ほら、アリスを見てみろよ」
左に座るアリスは、視線など気にせずにふむふむと八雲の話を頷きながら聞いている。
朝の時といい、周りに注目されても気にしていないようだ。
「すごいな」
「慣れてるんじゃないか?知らんが」
「どうしましたの?」
2人が話しているのに気がついて、アリスが話しかけてくる。なので桜はそのまま質問をした。
「アリスは周りからの視線が気にならないのか?」
「特には気になりませんわね」
「桜は俺に向けられてる視線が気になって仕方ないそうだ」
「何でですの?視線は暁のものなんですから、無視していいんですのよ。自分より弱い人の視線なんて気にするだけ時間の無駄ですわ」
やはり今日は機嫌が悪いらしい。そう思っててもオブラートに包んで欲しいものだ。
周りの視線がより一層強く、また殺意を帯びたものになった。日常的に絡まれて戦うのも面倒くさいのだがなぁ。
「そ、そういうもの……なのか?」
「いや、こいつは特殊なだけだ。多分」
「三神さん」
八雲が暁の名前を呼ぶ。
「はいよ」
「話聞いてましたか?」
「あー悪い。全く聞いてなかったわ」
「はぁ……」
暁の悪びれる様子のない答えに、頭を抱えてため息をつく。
「まあ、いいです。最初から話を聞いてくれるとは思っていなかったので。座ってくれくれているだけで良しとしましょう」
「俺はどんだけ荒れてるやつだと思われてんだよ……」
「正直、部屋に入った途端に攻撃されると思っていたわ」
「そんなことしねぇよ!?」
どうせ、根も葉もない噂が背びれ尾びれを携えて流れているんだろうなぁ、と暁は思う。
別に暁は突然暴れだしたり、理不尽にボコることはない。する時には何かしらの理由をもって行動している。
大体そういうことをするやつは自分の能力を見せびらかせたい奴だ。
暁はそんなことに興味はない。いや、正確には──もうその時期は過ぎた。
「では、三神さん。今からあなたの話ですよ」
「俺の話?」
「といっても内容は1つだけ。あなたには今回の新入生トーナメントには参加しないでほしいの」
「ああ、わかった」
「…………え?理由は聞かなくても?」
暁の即答に八雲が戸惑って尋ねる。
「どうせ、他の人の実力が測れなくなるとかそんなんだろ?」
「まあ、それも1つの理由ですが……」
「こっちはその理由であらゆる大会の参加権がねぇんだ。今更言われたところで異論も反論もねーよ」
中学3年生の夏、暇だった暁は面白半分で出たリベリアスの国際大会で昨年の優勝者を一回戦で潰し、決勝戦では圧倒的な差を見せつけて相手の心をへし折るということをした。
結果として、国から今後一切の大会への参加の禁止を言い渡されてしまったというわけだ。
「そうだったのですか……でもそれはどちらかというとあまり強い理由ではありません。1番の理由は、参加者のやる気です。このトーナメントは優勝者に幾つか景品があるのですが、あなたが出ると優勝者が決まってしまうでしょう?」
最初から諦めている人もいるようですけれどね、と八雲は付け足して言う。
確かに最初から優勝者が決まっている大会には出る気になれない。自分で言うのもなんだが。
「なるほどな。まあ、なんにせよ出場出来ないことに関しては了解した。別に観戦はいいんだろ?」
「もちろんです」
「ならそうさせてもらう」
「そうですか……あと、今回のことは何かしらの形でお返しします。出たなら優勝が確定だったのですから」
「別にいらねぇよ」
「ですが……」
別に景品がなんだったであろうと興味はなかったので断ったのだが、八雲は食い下がってくる。
変に借りを残しておきたくないって感じか。まあ、こんな変な奴に借りは作りたくないよな。
「わかったよ。じゃあなんか頼むわ」
「ええ。そうさせてもらうわ」
そう言うと八雲はそれじゃあ、と言いながら姿勢を正して座り直す。
「これで会議は終わりです。お疲れ様でした」
背筋をピシッと伸ばして、会議の終了を告げた。
最低週2で出せるように頑張ります




