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俺より強いのをやめてもらおうか!  作者: イノカゲ
第一部『彼は勝者だそうですよ?』
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四章『勝者は抜きになるそうです』2

〜放課後〜


 終礼の挨拶は終わり、クラスメイト達が帰る準備をするのに合わせて暁も片付けをする。


「暁、今日急ぎの用事とかはないか?」

「昼寝を用事に入れてくれるなら」

「ないんだな」


 すでに片付けの終わっている桜が言った。


「なんでまた急に」

「今日はあなたにも代表者会議に出て欲しいからですの」


 その質問には反対にいるアリスが答えた。アリスもさわわわさ片付け終わったようで、鞄のチャックを閉めてそのまま話を続ける。


「今回の会議では、学年代表者の権利を持っているあなたの代わりはダメらしいとのことでして」

「学年代表者の権利ってなんだよ……」

「それは私も知りませんの」


 色々と面倒事があるならば、わざわざ1位で入学してくる必要はなかったかもしれない。でも、1位以外というのも負けた気がして嫌なので仕方ない。


「何について話し合うんだ?」

「明後日から開催される新入生トーナメントについてらしい」

「新入生トーナメント?」

「1年生同士で行うトーナメント戦のことだ。聖フィルリード学園でも大きなイベントの1つに数えられる」


 ふぅん、と暁は桜の説明に相槌をうつ。何も知らずにこの学校に入ってきたので、どんなイベントがいつ、どういう風に行われるか知らない。

 知っているのは、この学校にはイベントが多いということ。久我にこの学校を薦められた時に「いろんなイベントがあって楽しいぞ」と言われたからだ。


「今の順位は入学試験のものだから、トーナメント戦をしてしっかりとしたカーストを作ろうってことか?」

「言い方は悪いが、間違ってはいない。あと理由はそれだけではないぞ。一般公開もされるので、新入生の募集にもなるのだ」


 つまり一種の学校紹介、および授業参観といったところか。おそらくだが、いろんな企業や会社の人も来て、品定めする場にもなっているのだろう。

 警備会社が優秀な人材を学生のうちに唾をつけておくというのはよく聞く話だ。


「まあいいか。用事もないし、付き合うよ」

「ありがとう」


 桜はお礼を口にして、ドアへと向かう。暁はそれに続くように鞄のチャックを閉めて横を歩く。アリスは暁の横へと付いた。ここ数日で出来上がった3人での歩き方だ。


「暁ってもしかして優しいのか?」

「お前、俺にどんなイメージ持ってんだよ」


 廊下を歩いていると、桜が唐突に尋ねてくる。


「人のやる事を全て邪魔する最凶の悪」

「魔王か何かか俺は……」

「実際、ゲームのボス並みに強いですの」

「お前らのイメージはよく分かった」


 特にそんな悪い事をした覚えはないが、こいつらの中では悪役のイメージが強いらしい。


「別に俺は誰かの邪魔をしたいとかじゃなく、自分がしたい事をしてるだけだ。まあ、それに邪魔なら潰すが」

「悪じゃなくとも、外道であることに違いはありませんわね」


 否定は出来ない。自分でも外道だって分かるくらいに自己中心的な性格なのはよく理解しているからだ。

 それにしても今日のアリスは、ズバズバと遠慮のない言葉を使う。


「……なあ、桜」

「な、なんだ?」


 アリスの事を桜に聞こうと、顔を寄せて小声で話しかける。


「今日のアリスって機嫌悪いのか?」

「お昼に大好きなおかずを落としたんだ」

「完全に八つ当たりかよ……」


 俺並みにタチが悪いと暁は思う。別に辛辣な言葉をいくら並べられたところでどうということはないのだが、最近そういうことを面と向かって言ってくる人はいないので珍しい。

 昔は調子に乗って悪口を言ってくる人も多かったのに、今ではビビって話しかけてすら来なくなってしまった。

 ましてや、八つ当たりなど記憶にある限り、能力を得てから一度もない。


「ここだ」


 桜が扉の前で立ち止まった。扉には『生徒会室』と文字が刻んである。学校の行事なのだから、会議が生徒会室で行われるのは当たり前か。

 コンコンッと桜がドアを叩く。


「どうぞ」


 扉の向こうから女性の声が聞こえた。桜はそれに 失礼します、と答えて扉を開く。

 中に入ると20人ほどの生徒たちが、机をロの字に並べて座っている。


「あなたが三神 暁さんですか?」


 暁に名前を尋ねた真っ赤な長髪の女子生徒だった。

短い投稿となりましたが、次回から物語が展開していきます!

設定集の方も更新していくのでお楽しみに


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[一言] 人のやる事を全て邪魔する最凶の悪……こんな印象抱くシーンなんてありましたっけ?
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