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俺より強いのをやめてもらおうか!  作者: イノカゲ
第一部『彼は勝者だそうですよ?』
11/43

二章『今日も今日とて最強です』7

「ええ、もちろん!」


 月見は空いている方の手で、もう1つの剣銃をホルスターから抜く。

 模様も形も同じで、違いはない。双方をこちらに向けて、周りを回るように走り始める。それから交互に魔法を撃つ。

 新しく抜いた方に登録されていた魔法は、『炎球』

 先ほどアリスが発動した『ファイア・ブラスト』の炎の渦よりも、威力は劣るものの速度は申し分ない。

 だが、そんなことは暁にとってはどうでもいいことだ。炎の球は体に当たると消え去り、氷の塊は勢いを失い地面に落ちる。


「ふぁぁぁ……ぐごっ!?」


 退屈すぎて欠伸をした暁の口の中に氷の塊が入る。

 偶然ではない。狙って入れてきたのだ。


「やりやがったな」

「戦いの最中に欠伸をする方が悪いのよ」

「ごもっとも」


 言われたことが正論すぎて、何も言い返すことが出来ない。

 後ろからはアリスの「いけ〜いけ〜」という歓声が聞こえてくる。


「少しは真面目にやる気になったかしら?」

「いや、全く」


 暁は馬鹿にするような薄笑いを浮かべて言った。

 それに対する月見の一言は、簡単かつ直球だった。


「死ね」


 恐ろしい言葉とは裏腹に、笑顔でそう言った。

 暁は知っている。あの笑顔は怒りの次にあるものだと。今までにも何人か見たことがある。


「おー怖い、怖い。ほら、勝ちたいならかかってこいよ」

「言われなくてもそうするわ」


 月見が、トリガーから指を外して持ち方を変える。今度は双剣として扱うようだ。

 遠距離からの魔法で暁の周りを二、三週回りながら打ち続けた結果から、暁の能力に穴がないと判断して、近接で戦うことにしたのだろう。


「はぁぁぁぁぁ」


 月見が突っ込んでくる。なんと無謀な、と笑いたくなったが、少し付き合ってあげることにした。


 月見の戦い方はとても器用で素早いものだ。双剣による連撃だけではなく、片手だけでも巧みに技を繰り出す。

 突き出した剣を暁がギリギリのところで避けると、トリガーに指をかけて剣を回し、真っ直ぐ持っていた剣を横に持ち替えて、そのまま次の攻撃を仕掛ける。

 ギリギリで避けたといっても、もちろんそれはワザとである。

 ギリギリで避けることで、相手に当たるかもしれないと期待を持たせて、無駄に攻撃をさせるためだ。


(そろそろさっき使った『ウォーター・スプラッシュ』の分くらいは魔力を回復した頃か)


 暁は攻撃を避けながら、自分の魔力が回復したことを感じる。

 優しくデコピンの構えをして、月見の動きを先読み、おでこの位置に合わせる。


「はい、どーん」

「!?」


 軽快な声と共に月見が勢いよく吹っ飛ぶ。だが、月見は体勢を崩さずに足から地面に着いて、足を擦りながら止まる。

 額の前にクロスに重ねられた剣銃のおかげで直撃は逃れたようだ。


「なんて威力なの……まだ手が痺れているなんて」

「よく反応出来たな」

「舐めないで欲しいわね。これでも2年生では強い方なのよ?」

「みたいだな」


 今の攻撃は、並の人間なら直撃して気絶までは確定されている。手加減なしなら頭蓋骨が砕けても不思議ではない。

 これを防いだことは賞賛に値する(暁の勝手な意見ではあるが)。


「アリス!」

「な、なんですの?」

「びしょ濡れにしたお詫びに、特別魔法講座を開いてやる。よく見とけ」


 月見を向いたまま、アリスに声をかける。女子に対してびしょ濡れにしたことは少しやりすぎたと思っている。少しだけ。

 今回はそれにちょっとした気まぐれが重なっただけだ。


「やっぱり私のこと舐めてるわね」

「舐めていることに関しちゃ否定はしないが、別にお前だけじゃないさ。全員平等に見下してる」


 初めから敬語なんて使っていなかった暁だが、もはや先輩をお前呼ばわりだった。

 月見は、まだ痺れるのか手首を振っている。


「それはフォローしてくれているのかしら?優しいのね」

「何言ってんだ。俺は優しさの塊だろ。優しくなかったら今頃お前は血だらけで倒れてるぞ?」


 暁は凄惨に笑う。

 月見はその言葉を聞いて、息を呑む。その言葉1つでいとも容易く自分が血だらけで倒れているところが想像出来てしまう。


「とんでもない化け物に喧嘩を売っちゃったのかしら」

「やめとくか?」

「私にも意地があるわ。最後まで戦わせて頂戴!」


 再び月見は、まっすぐに突っ込んできた。


「同じことをしても結果は変わらないぞ」

「ええ。だから私も本気を出して勝ちにいく」


 暁の手前で月見は、横に跳んだ。


 そして──そのまま空中を踏みしめる。


 そこから暁の顔めがけてのドロップキックを繰り出した。

 ここから見ると丁度よく下着が見える。

 水色のレース。髪に合わせているかどうかは暁の知るところではない。


「くらえ!」


 月見の靴が暁の目先に迫る。何もしない暁ならば、そのまま攻撃は当たると思われた。


「あれ?」


 だが、月見の足が何かに当たる事はなかった。それどころか今、月見は空高く飛んでいた。

 何が起きたのか理解が出来なかった。衝撃もなくあっという間の出来事。

 むしろ、衝撃がなかったからこそ気付けなかったのかもしれない、と月見は思う。


「なんですの!?今のは!」


 後ろから見ていたアリスでも分からなかったようで、驚きの声をあげた。

8で二章は終わりの予定です


更新遅れてすいません

次の更新は9/5を予定しています

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