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プロローグ
「それでは、これより入学試験を始める!」
スーツを着た教員が右手を上げ、双方準備が出来ているのか確認する。
四方を灰色に囲まれたバトルルームで行われる試験は模擬戦。
戦うのは試験官である双剣を携えた教員とポケットに手を突っ込み、大きく欠伸をする少年。
武器を持っている様子はない。
「開始!」
右手を振り下げ、試合開始の合図を告げる。
相手である試験官は双剣を構えた。
だが、少年が動く気配はない。
元より教員は、相手に先行を与える決まりになっているため、先に攻撃はしない。
これは別に伝えられていることではないため、知らなかったとしても不思議ではないが、少年は合図を聞いてもポケットに手を入れたまま動かない。
「試験は始まったぞ」
審判をしている教員は少年に対して、そう言うもあまり聞いているようには見えない。
「ああ、はいはい」
少年は気だるそうな声でそれに答える。
それから、少年はふぁ、と欠伸をしてから、舐め腐った声と態度で言い放つ。
「とりあえずお前、俺より強いのをやめてもらおうか」