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第七章 そう、それは妹様のツンデレ恋模様

「買い物に行くぞ」

日曜日の昼過ぎ、何を思ったか駈が突然シャルと小恋愛に声を掛けた。

声を掛けられた二人は、驚いた様子で顔を見合わせる。

「何の買い物に行くのよ? どうせまた漫画だの人形だのじゃないでしょうね?」

小恋愛が明らかに不信そうな顔を駈に向けた。シャルは何と言っていいのか分からず困り顔。

「ちっがーう。今日の夕飯のおかずだよ。あと、日用品」

「はあ? あんたはそんなもの買いに行ったことないでしょうが」

そう、普段の生活に必要なものは基本的に西岡家の家計を預かる小恋愛が買ってきている。駈が買いに行ったことなどない。駈を連れて行ったこともない(というか面倒くさくて駈が逃げる)。

しかし、そこで駈がドヤ顔になって言った。

「今日は『スーパーつっぱり』で特売なんだよ。三時からのタイムセールで卵一パック五八円」

「ウソ! マジで?」

「マジマジ、大マジ」

五八円という数字に小恋愛の目がキュピーンと光る。

「お一人様一パック限りだ」

「やばい、急がなくちゃ」

「あと、トイレットペーパーと女性用ナプキンもゴス」

駈が言い終えるより早く、小恋愛の最速○神拳が駈の顔にめり込んだ。

「えっと、お財布持った。あと上着は……」

出かける準備を始めた二人に、シャルが少し寂しそうに言った。

「あ、じゃあ、わっちお留守番してるのだ」

駈が小恋愛だけを買い物に誘ったと思ったのだろう。駈が今までにシャルを出かけに誘ったことは一度も無い。誘うのは小恋愛だけだった。それでも、小恋愛が気を使って一緒に連れて行ったことが何度かあったが、駈が終始不満そうな顔で間が持たなかった。

だから、シャルは今回も同じだと思ったのだろう。先に留守番をすると告げる。

しかし、今回は違っていた。

「何言ってんだお前は?」

小恋愛のナックルから復帰した駈が、シャルに向かって呆れたように口を開く。

「俺の話を聞いてなかったのか? お一人様一パック限りなんだよ。お前も行くに決まってるだろうが」

駈の言葉にシャルが大きく目を見開いた。

「えっ、でも……」

「いいからさっさと支度してこい」

その言葉に、シャルは花が咲いたような満面の笑みを浮かべる。

「分かったのだ。急いで支度してくるのだ」

そして、シャルは足取り軽く階段を上って行った。


特売、それは家計を預かる者にとってはチャンスであり戦場である。

午後三時、安さと鮮度でご近所でも評判の『スーパーつっぱり』は、歴戦の猛者達でカオスとなっていた。そのあまりにも生々しく、凄惨な状況をお伝えするのは皆様の精神衛生上割愛させて戴くが、長い戦いを終えた三人は戦利品を持って帰途についていた。もっとも、荷物を持っているのは駈一人であったが。

シャルは嬉しそうに、小恋愛は満足そうに、それぞれ歩いている。疲れて死にそうな顔をしているのは駈一人。両手にそれぞれ買い物袋を五つずつ。背中にも荷物を背負い、口にはトイレットペーパーまで咥えている。駈の死にそうな顔を見て、シャルが申し訳なさそうに言った。

「あ、あの、ちょっと持つのだ」

「お、そうか。たすか……」

そう言って、シャルに荷物を渡そうとする駈。しかし、それを止めたのは小恋愛だった。

「ああ、いいのいいの。愚兄はこう見えても割りと体力あるから。それにこんな可愛い女の子に重たい荷物を持たせるなんてこと、オタクの誇りに懸けてもしないわよねえ? 愚兄」

駈のオタク道を逆手にとっての見事な話術。さすがは小恋愛である。伊達にこの変態と長年一緒に暮らしてはいなかった。駈にできるのはただ強がりを言うことだけ。

「おう、これくらい余裕だぜ。何ならもっと追加しても……」

「すいませーん。お米くださーい。あと、お味噌とお砂糖もー」

「嘘です。すみません。もうムリです。後生ですから勘弁してください」

所詮は強がり。駈は一分と保たず前言を撤回した。

「あっ!」

そんなやりとりの最中、シャルが突然足を止める。シャルが見ていたのは、車上販売しているクレープ屋であった。シャルの目は、その中の見本として置いてあったイチゴバナナスペシャルに釘付けになっている。

「何だよ、食いたいのか?」

全身に荷物を抱え、太ったカカシみたいになっている駈が言った。

「え、あ、いや、別にそんなことないのだ。ただちょっと珍しくて見ていただけなのだ」

シャルは当然ながらこの世界の金を持っていない。自分では買いたくても買えなかった。

「おっちゃん、このイチゴバナナスペシャル二つ」

「はいよ、毎度あり」

おっさんがピンク色に塗装された車でクレープを作る光景には激しく違和感があったが、愛想のいいそのおやじは馴れた手つきでクレープを作り、シャルに手渡した。

シャルはどうしていいか分からず困った顔をしている。

「あ、あの……」

「今日は無理やり付き合わせたからな。それぐらい買ってやるさ。もう一つは小恋愛にやれよ」

駈は照れくさそうにそっぽを向いてシャルにそう告げた後、小恋愛に向き直って言った。

「おーい、小恋愛。俺の財布から金払ってくれ」

そのやりとりを見ていた小恋愛は、珍しく黙って駈の言うとおりに金を支払う。

シャルがまだ両手にクレープを持ったまま、恐る恐る尋ねた。

「ほ、ほんとに食べてもいいか?」

「いいから買ったんだろうが。ていうか、早く食べないとアイス溶けるぞ」

慌ててシャルがクレープを一口齧る。そして、その顔が至福に包まれた。

「お、おいしいのだ。こんなにおいしいもの初めて食べたのだ」

ホワワーンとした顔でシャルが呟く。その顔を嬉しそうに見ていた駈の横に、小恋愛が並んだ。

「ねえ、知ってる? 愚兄」

「えっ? 何をだ?」

「明日、『スーパーよろしく』で卵一パック四八円なのよ」

「え! マジで?」

「うん」

小恋愛がコックリと頷く。

「じゃあ、何で今日……」

「まあ、あんたの考えてることが分かったからね。今日だけはあんたの顔を立てておいてあげるわ」

その言葉に、駈が素直に頭を下げた。

「そうか、サンキュ」

「いえいえ、どういたしまして。どうしようもない兄をフォローするのは、よくできた妹の務めですから」

「ほう、務めとな」

駈の目が怪しく光る。

「小恋愛よ。一つ頼みがあるんだが」

「な、何よ?」

「その一本まるごと入ったバナナをちょっとしゃぶって……」

「あ、そういえば新しい土鍋が欲しかったんだわ」

「すいません、調子に乗りすぎました」

そして、二人は少し離れたシャルの後を追って歩き出した。



「そういえばさ」

夕飯の席で小恋愛がポツリと切り出す。

「ん?」

「愚兄って、あの牙って人と仲がいいよね」

本日の夕食、マーボー丼(辛さ控えめ)を口に運びながら小恋愛は尋ねた。

シャルは初めての味に夢中で全く話を聞いていない。

「ああ、まあな。ひょっとして、牙が気になるのか?」

「いや、全然。キモいだけじゃん」

「あ、そうですか……」

「何であんなのと仲いいの?」

「あんなのって……」

あまりといえばあまりの言い草に、駈の頬から汗が一筋流れ落ちる。

「あいつはああ見えても良い奴だぞ。この辺じゃ顔だって広いしな」

「でも、オタクじゃん」

「…………」

駈は言葉に詰まった。どうやら小恋愛嬢はオタクというものに相当な偏見をお持ちのようだ。

「つまりは変態でしょ?」

「それは違う」

小恋愛の言葉を駈は即座に否定した。

「いいか、小恋愛。前々から言おうと思っていたが、お前はオタクというものを勘違いしている。オタクと変態は似て非なるものだ。そもそもオタクというのは……」

駈はオタクを勘違いしている妹に、真のオタク道というものを教えるべく教鞭を振るおうとした。

「ああ、いいからいいから。誰もそんなこと聞きたくないわよ」

しかしあっさりと小恋愛が却下。駈は涙を流しながら、少し塩気の増したマーボー丼を口に運ぶ。

「私が聞きたいのは、何でアンタとあの変態ピンクの仲がいいのかってことよ。アンタのオタク講義はどうでもいいの」

駈の頬からまたも汗が流れ落ちる。ちなみにシャルは、付け合わせのサラダをドレッシングまみれにしておいしそうに頬張っていた。

「やれやれ、ちょっと長くなるけどそれでもいいか?」

「簡潔に」

「かくかくしかじかブスッ!」

駈の手の甲に小恋愛の箸が突き刺さる。

「ごめん、よく聞こえなかった。もう一回言って♡」

「あれは、去年の秋頃のことでございました……」


流星学園のはずれには一本の大きな桜が植えてあった。

ゲームの世界ではないのでそこで告白したからといって、確実に成功する訳でも末永く幸せになる訳でもない。そんな辺鄙な場所を駈は訪れていた。理由は簡単。ただのサボリである。

学園付近では授業のない教師に見つかる可能性があるため、こうしてはずれまでやってきたという訳だ。そこは日当たりもよく、昼寝にはうってつけの場所だった。

駈はのんびりと昼寝タイムを決め込もうと桜に近づいた。しかし、先客がいたようだ。

その男は奇抜な格好をしていた。髪型はリーゼント(これは後ろからでも分かる)。そして、何故かピンク色の特攻服に、なにやらピンクのハチマキまで巻いていた。

ピンク色の特攻服の男(以後、特攻ピンクと呼称)はまだ駈に気づいていないようだ。なにやら一心不乱に何かの作業をしている。目の前の男に興味が出てきた駈は、こっそりと特攻ピンクの背後から何をしているのか覗き込んだ。

(あ、あれは……)

駈はなんとか声を出すことを堪えた。特攻ピンクがしていたのはお菓子の開封だった。それもただのお菓子ではない。

巷で人気上昇中のアイドル、SGY47のバッジが付いたお菓子(税込み五二五円)であった。

特攻ピンクは、今日買ってきたと思われる五つのお菓子の箱を開けて中のバッジを確認する。

「……くそ、またはずれだ」

どうやらお目当てのバッジは入っていなかったようだ。特攻ピンクはくやしそうに唇を噛む。

そして、特攻ピンクは一冊のホルダーを取り出した。

(おお!)

またも寸でのところで駈は声を出すことを堪えた。ホルダーはSGYの人気ナンバー1『ぱるな』こと桃先春菜のバッジ(全四七種)で埋め尽くされていたのだ。

このお菓子のバッジはメンバー四七人、一人ひとりにつき四七種類あり、自分の推しているメンバーだけを集めている者もいれば、果敢にも全メンバー全種類を集めようとする剛の者もいる。どうやら特攻ピンクは前者のようだ。特攻ピンクは再び盛大にため息を吐いた。

「ああ、あと一種類でコンプリートなのになあ」

駈がホルダーをよく見ると、そこには一つだけ空白があった。

そこで駈の脳内SGYデータベースが作動した。確か特攻ピンクの持っていない一枚は製造枚数を限定されたレアものだったはずだ。そのあまりの希少さにプレミアが付き、ネット上での値段も高騰、幻の一枚となっていた。どうやらその一枚が最後のピースらしい。

「はあ、今月の小遣いはもう全部使っちまったしな。今月はもう買えねえや。また来月まで我慢か」

特攻ピンクはションボリと肩を落とす。

駈は感動していた。この男、自分の小遣いを全部貢ぐほどぱるなに入れ込んでいるらしい。気が付けば、駈はダバーッと滝のような涙を流していた。何故なら、自分も同じだからだ。

駈は早速、特攻ピンクに声を掛けた。

「おい、そこの君」

「誰だ!」

まさか人がいるとは思わなかったのだろう。驚いた特攻ピンクはすぐさまホルダーを閉じて、駈から距離をとった。

「まあまあ、そう警戒するな。別に怪しい者じゃない」

「あ! あんたは……」

「ん?」

駈の顔を見た瞬間、特攻ピンクは驚愕の表情を浮かべる。

「どこかで会ったか?」

しかし、駈の頭のデータベースにはこの男のデータはない(というか、こんな強烈な格好をしている奴は忘れない)。

不思議そうな顔を浮かべる駈に、特攻ピンクは僅かに警戒を緩めた。

「い、いや、気にしないでくれ。人違いだったみたいだ」

「ふむ、まあいい。それより君」

そこで駈がニヤリと笑う。

「君もSGYのファンだね。しかもぱるな推し」

「だ、だったら何だよ。文句あんのか?」

特攻ピンクが再び警戒を強める。

「文句? とんでもない。私は君に敬意を表しにきたのだよ。これを見たまえ」

駈がおもむろに自分のブレザーのボタンを外し、その裏側を見せる。

「おお!」

それを見た特攻ピンクは、思わず感嘆の声を上げた。

そこにあったのは、ブレザーの裏地を埋め尽くさんばかりに縫い付けられた無数のぱるなバッジの数々であった。見渡す限り全てがぱるな。もちろん特攻ピンクの持っていないレアバッジもそこにはある。

「あ、あんたは一体……」

「フッ、人は俺をさすらいのぱるなマスターと呼ぶ」

「いや、聞いたことないが」

「…………」

場にブリザードが吹き荒れ、一瞬にして雪原ステージへと変化した。

「ま、まあ、それは置いといてだ。君」

「何だよ?」

「自分の小遣いを全てSGYにつぎ込む君の覚悟、しかと見せてもらった。そんな君にこれを授けよう」

強引に話題を切り替えた駈が、自分のブレザーから一つのバッジを取り外した。

そう、特攻ピンクの持っていなかったレアバッジを。

「こ、これを、俺に?」

「そうだ」

戸惑いながらバッジを受け取る特攻ピンクに、駈は鷹揚に頷いた。

「君のSGYに懸ける想いは本物だ。そんな君にこそ、このバッジは相応しい」

「で、でも、それじゃあんたの分が……」

「フッ、心配は無用だ。これを見よ」

そして、駈は今度はカッターシャツの裏側を見せる。するとそこにも大量のぱるなバッジが。

「おお!」

「予備もすでに確保済みさ。だから君は心置きなくそのバッジを受け取りたまえ」

「しかし、俺には何の礼も……」

「バカヤロー!」

駈の魂のこもった熱い拳が特攻ピンクの顔に炸裂した。特攻ピンクはもんどりうって倒れる。

「な、何を……」

「いいか、よく聞け」

駈が腕を組んで大仰に口を開く。

「たとえ生まれた日が違っても、ぱるなを愛する心は同じ。SGYを崇める気持ちは一つだ。そんな俺たちは兄弟も同然。だから、礼なんて水臭いことを言うな」

「ア、アニキーーー!」

そして、二人は涙を流しながら固く抱き締め合う。

二人は枯れた桜の木の下で、永遠の契りを交わしたのであった。


「と、まあこんな感じで……」

思わず熱く語っていた駈が、ふと食卓に自分一人しかいないことに気づく。

駈が周りを見回すと、小恋愛とシャルはすでに夕飯を終え、リビングでバラエティ番組に夢中になっていた。

「…………」

駈はまたも塩気の増したマーボー丼を無言で口に運び始めた。目の幅涙を流しながら。



「かけるさーん。見ましたよー」

教室で一人、今後のSGY応援スケジュールを確認していた駈に牙が声を掛けた。

「見たって、何を?」

「またまたー、とぼけちゃって。昨日ウチの店に来てくれたじゃないっすかー。その時に見たんですよ。小恋愛ちゃんとお嫁さんの三人で仲良く買い物してるのを」

そう、昨日駈達が訪れたスーパーつっぱりは牙の両親が営む店だったりする。当初、牙の両親は牙にも店で呼び込みをさせようとしていたのだが、牙が店のユニフォームであるエプロンを着けるのを頑として拒み、いつもの特攻服(SGYバージョン)で店に出ようとしたため、やむなく倉庫整理に回したのだった。

駈もそれを知っていたので、牙には見つかるまいと思っていたのだが……

「いやー、まずいっすよねえ。買い物とはいえ三人仲良くなんて、クラスの連中が知ったらどうなるか……」

「…………」

駈の顔が大きく引きつる。

確かに、リア充というものに過剰な殺意を向ける彼らにこのことがバレたら、駈はお墓直行であった。

「まあ、幸いこのことを知ってるのは俺だけですし、駈さんの出方次第では黙ってても……」

「……条件は何だ?」

駈の言葉に牙はニヤリと笑った。

「さすが駈さん、話が早い。駈さん、確かぱるなの激レアシークレットカード持ってましたよね?」

激レアシークレットカード。SGYのメンバーが不定期で開催するイベント『SGYプレミアムシークレットライブ』に参加した者のみに配布される、ファンなら死んでも欲しいアイテムである。駈はそのイベントに参加したことはなかったが、ある知人から秘蔵のフィギュアコレクション一〇体と引き換えに譲り受けた。

そう、それは駈にとって家宝とも言うべき至高の一品なのである。

「た、確かに持っているが、しかし……」

「あれ、欲しいなー」

「何とか他の物で……」

「これ、なーんだ?」

そう言って、牙が自分のスマホ(SGYデコレーション付き)を駈に見せる。そこには、昨日駈がシャルと小恋愛の三人で買い物している時の写真があった。

「やべ、一瞬手元が狂ってクラスの連中にこの写真ばら撒きそうになっちゃいましたよ。はっはっはっ」

牙はそう言って豪快に笑った。(駈には悪代官のニヤケ顔にしか見えなかったが)

「で、どうですか、譲ってもらえますかね?」

「……どうぞ」

こうして、今日もF組の平和は守られたという。



今日も無事(?)に授業が終わり、駈と小恋愛は二人で帰途についていた。

二人が一緒に帰るのは大変珍しい光景である。理由は単純明快で、小恋愛がこのオタクを公言するおバカな兄と一緒に帰るのを嫌うためだ。

駈がオタクであるということは、学校はもちろんのこと近所でも有名である。

最近では近所のおばちゃん達から、「がんばりなさい。そのうちきっと良い事あるわよ」とか、「あなたも苦労するわねえ。飴ちゃんあげるから元気出して」などと憐れまれる始末であった。 小恋愛が外では可能な限り駈と距離を置きたがるのも当然と言える。

しかし、今回に限っては事情があった。そう、こんな感じの事情が。


「小恋愛さん、入学した時からずっと好きでした。僕と付き「ごめんなさい」」

同級生と思われる男子生徒の告白を、小恋愛は瞬時に切り捨てた。少年は目に涙を浮かべて、その場を走り去る。今週はこれで五人目だ。

小恋愛にとっては、流星学園に入学して以来恒例の行事となっていた。いや、正確には小学生の頃から続く恒例の行事であった。

告白というものは、彼女が欲しくて堪らない青春街道爆進中の男子や、もはや後のないアラピー(こちらに入る数字は皆様でご自由にご想像ください)の女子達といった一部の例外を除けば、されて嬉しいものと嬉しくないものの二種類があると小恋愛は考えている。好きな人からの告白ならばもちろん嬉しいが、それが別に好きでもない(悪い言い方をすればどうでもいい)人物からのものであれば、正直言ってうざったいだけだったりする。それも、こう度々ポンポン立て続けに来れば、次第に断って申し訳ないという気持ちも薄れていった。

それ即ち、瞬殺である。

「小恋愛君。俺とつ「ごめんなさい」」、「ずっと見てました。お「ごめんなさい」」、「思わず君にフォーリ「ごめんなさい」」、「み「ごめんなさい。あ、しまった。何のごよ……」なとさん、俺とつきあ「ごめんなさい」」という具合に、千切っては投げ、千切っては投げの有様であった。

小学校の頃から幾度となく告白をされてきたが、流星学園に入学してから、その頻度はさらに増した。そしてこれが、オタクのバカ兄こと駈と並んで、小恋愛の頭痛の種になっている。

小恋愛は思う。自分も女の子だ。別に恋愛というものに興味が無い訳ではないが、残念ながら現在自分に好きな人はいない。……はずである。そう、いないのだ。それに、自分にはあのロクデナシという言葉がこれほどまでにピッタリと当てはまる人物が他にいるのか、というくらいにどうしようもない兄の面倒も見なくてはならないため、恋愛などに時間を割いている暇はないのだ。しかし、このままこんな状況がずっと続くのは大変困る訳で。何か手を打たなければならない。

そこで小恋愛は考える。ならば虫除けを付ければいい。幸いなことに、自分の周りには一人いるではないか。他人をドン引きさせることに関しては、おそらく日本一であろうクソ虫野郎が(小恋愛、言ってて少し悲しくなる)。本当はあんなのと一緒に帰るのは非常に辛いが、背に腹は変えられない。

そして、小恋愛は早速クソ虫野郎こと兄、駈の教室へと赴いていた。

小恋愛が二年F組の教室に入ると、学園のアイドルの急な登場に驚いたのか、周りの面々はどよめいていた。小恋愛はそんなことなどお構い無しに駈の席へと近づく。

「愚兄、今日からしばらくの間、一緒に帰るわよ」

「「「何だってーーーーーー!」」」

そう叫んだのは駈一人ではなかった。その言葉を聞いたクラスメイト全員の大合唱である。

F組の面々は大急ぎで小恋愛に近づき、「ど、どうしたんだんだ? 小恋愛ちゃん」、「熱でもあるの? 保健室行く?」、「おい、駈。お前まさか小恋愛ちゃんを強請ってるんじゃないだろうな?」、「小恋愛ちゃん、何か困ったことがあるのなら僕に相談してごらん。お兄さんがきっと力になるから」などなど、F組はたちまち収拾不可能なカオスモードへと突入していった。

小恋愛は内心で頭を抱えた。どういう訳か、このクラスは何かにつけて騒ぎ出す傾向があり、風紀委員でもある小恋愛にとっては、あまり関わりあいたくないクラスであった。さすがは駈のいるクラスといったところか。

しかし、今回の小恋愛には重要な目的があった。こんなところで挫けている場合ではないのだ。

ふと小恋愛が駈を見ると、駈は最初の一言目以降黙ったまま小刻みにプルプルと震えている。

小恋愛が対応に困っていると、突然駈が涙をダアーっと流しながら、小恋愛の両肩を掴んだ。

「こ、小恋愛、お前……」

駈が涙を噛み締めながら、何やら一人で感動している。

超キモい。それが小恋愛の感想だった。

「や、やっと、やっと兄ちゃんの愛が届いたんだな」

「いや、違うけど」

「…………」

一瞬だけ駈が沈黙する。

「……さて、こうしてはおられん。早速帰るか」

強引に先ほどの台詞を聞かなかったことにしたらしい駈が、おもむろに小恋愛をお姫様抱っこして教室を出て行った。駈の突然の行動に、小恋愛は顔を真っ赤にして借りてきた猫のように大人しくなっている。

しかし、ふと駈は何かを思い出したかのように再び教室に戻り、負けクラスメイトに向かってドヤ顔で一言。

「ではな。諸君。まあ、これも美少女を妹に持った者の特権だとでも思ってくれたまへ。君達もくやしかったらせいぜい来世でがんばるといい。ククク。では、アデュー」

そして、駈(と小恋愛)は瞬く間に残像を残して消えていった。

その後、F組が再び漆黒のカオスモードへと移行したのは言うまでもない。


とまあ、そんなこんなで駈と小恋愛は二人仲良く? 帰途についていた訳だが……ピカ!

「な!」

上機嫌で歩いていた駈の足が突如として止まる。小恋愛は不思議に思い、駈の視線を目で追った。

「ししょうさん?」

そう、駈の視線の先にいたのは、駈曰く自分の人生の師匠こと日向地雷矢であった。

しかし、どうにも妙だった。小恋愛の知っている地雷矢は美人ではあったが、上下にジャージを着て、始終酒を飲んでいるといった印象だった。しかし、今目の前にいる地雷矢は違っていた。

美容院にでも行ってきたのか、後ろで一つに縛っていた長い髪はきちんと手入れがなされてセットされており、服装はできるビジネスウーマンを思わせる黒色のスーツ。顔は薄くだが化粧もしており、小恋愛の知っている地雷矢像とは一八〇度違っていた。そして、そう思ったのは駈も同じだったらしい。

「ど、どうしたんですか? 師匠」

まるで、見てはいけないものを見てしまったかのような表情を浮かべた駈が、引きつった笑みを浮かべて地雷矢に声を掛けた。

「え? な! か、駈、どうしてこんなところに!」

駈に気づいたらしい地雷矢が、彼女にしては珍しく顔を真っ赤に染めてうろたえている。

「いや、普通に学校の帰りなんですが。師匠こそどうしたんですか? そんな格好して。それじゃまるで女性みたいで……ゴス!」

「ウゴ!」

目にも止まらぬ地雷矢の肘が、駈の胸に突き刺さる。格好を気にしてか、得意の足技は使ってこなかった。

「駈、一応言っておくが、私はれっきとした女だ。男ではない」

「そ、そうでした。すみません」

涙目になりながら謝る駈。

「でも、ほんとにどうしたんですか? 師匠が正装するなんて、明日は槍どころかミサイルが降りま……メキ!」

お次は正拳突きがきれいに決まる。駈は堪らず膝をついた。

「ほおう、私が正装するのがそおんなに珍しいのか? ん、どうだ? 正直に言ってみろ、バカ弟子よ」

「いいえ、そんなことありません。よくお似合いです。師匠」

確かに、普段の地雷矢を知っている者からすれば奇異な格好に見えるが、元々が美人の上に女優と言っても通じそうなほどのスタイルをしているので、傍から見れば十分に魅力的な女性となっていた。

「ふ、ふん。当然だな。実は、これから合コンに行くのでちょっと気合を入れてみたのだ」

地雷矢が照れくさそうにボソボソと喋りだす。

「ご、合コンって、師匠がですか?」

「そうだ。悪いか? 住職の娘さんが私と同い年でな。誘ってくれたのだ」

「なるほど、熊でも呼んだんですか?」

「小恋愛、すまんが一人で帰ってくれ。私は、とりあえずこのバカを半殺しにする」

「すみません。さすがにそれは勘弁してください」

本気で構えを取った地雷矢に、駈は慌てて頭を下げた。

「まったく、このバカ弟子が」

そう言いながらも、地雷矢は構えを解く。

「でも、師匠が合コンって。そんなに男に飢えてたんで……バキ!」

地雷矢渾身の○イダ―キックが決まり、駈は五メートルほど派手に吹き飛んだ。

「馬鹿者! 経験だ。経験。人生は何事も経験なのだ!」

そう言い残して、地雷矢は駈を放ったままタクシーへと乗り込んだ。


駈はしゃぶしゃぶにはポン酢。しゃぶしゃぶにはポン酢の男であった(重要なのでここ復唱)。

今晩の夕食はしゃぶしゃぶ。ごちそうである。しかし、残念なことにポン酢が切れていた。

小恋愛はゴマだれ派であり、シャルはどちらでもいい派だったので問題は無かったが、ここにいるバカ一名は違っていた。

「男は黙ってポン酢、ポン酢なんじゃああああーー!」

と、訳の分からぬことをのたまうバカ一名はそのままコンビニへと直行。無事にお目当てのポン酢を手に入れ、意気揚々と帰途についていた。

しかし、帰りに偶然通った公園で駈の足が止まる。そこには駈のよく見知った人物がいた。

シラフで黙っていれば女優と言っても差し支えの無い容姿。整った顔立ちに、珍しくスーツで身を包んでいるのは駈の師匠こと地雷矢であった。地雷矢はなにやら落ち込んだ様子で、ブランコに一人腰を下ろしている。はて、今夜は確か合コンだったはずでは。

「師匠、どうしたんですか? こんなところで」

さすがに素通りする訳にも行かず、駈は地雷矢の隣に座り声を掛ける。

「……なんだ。バカ弟子か」

そう呟く地雷矢の声には力がなかった。

「何だとはご挨拶ですね。合コンはどうだったんです……」

 ギン!

「うっ!」

地雷矢の強烈な視線を受けて、駈は自分が地雷を踏んだことを瞬時に悟った。どうやら今の地雷矢に合コンの話題はNGらしい。しかし、意外なことに地雷矢の方から話を振ってきた。

「……失敗した」

「ああ、やっぱり」

「何か言ったか?」

「いいえ、何も」

触らぬ地雷矢にたたり無しである。

「合コン相手の中に、一人中々良さそうな奴がいてな。そいつとずっと話していたんだ。もちろん、お淑やかにだぞ。それでな、その男が強い女性が好みだって言ったから、私はよっしゃきたーーと思ったんだ。それでな、その後……」

「その後?」

「その後、酔って絡んできたプロレスラーがいたから、いいところを見せようとして、そいつを軽くボコって、○ン肉バスターをかましてしまったんだ」

「…………」

「そりゃ引くわ」という言葉がのどまで出掛かったが、それを言ってしまうと自分も○ン肉バスターの餌食になってしまうので、駈はなんとか言うのを堪えた。

「で、それからどうなったんですか?」

「何も。みんな急に白けてそこで終了。その男はそれ以降、私と全く目を合わせなかった」

「ははは、そうでしょうね」と、駈は再びツッコミたかったが、それを言うと○ン肉ドライバーを喰らうのは目に見えていたので、やはり言うのを堪えた。

「なあ、駈。私は悪くないよな? 酔って絡んできたのは向こうの方だぞ。そりゃ、ちょっと○ン肉バスターはやりすぎた、ジャイアントスイング辺りにしておくべきだったかもしれんとは思うが。その男だって強い女が好みだと……」

「はいはい。分かりましたから、ちょっと落ち着いて」

技の問題ではないと駈は言いたかったが、酒が入っているためかなり興奮気味の地雷矢に何を言っても無駄だと判断し、駈は珍しくフォロー役に回っていた。

「ちょっと時代のニーズが師匠に追いついていないだけですって。大丈夫。師匠は何も悪くありません」

「そっか、そうだよな。私は悪くなんてないよな」

駈の言葉を聞いた地雷矢が、安心したように笑みを浮かべる。

「よし、元気も出てきたし、そろそろ帰るか……って、あれ?」

ブランコから立ち上がろうとした地雷矢が急によろめく。駈はすかさず支えに回った。どうやらかなり酒が入っているらしい。

駈がブランコの周囲を見渡すと、先ほどは暗くて気が付かなかったが、大量のビール缶が落ちていた。駈は呆れたようにため息を吐いてから口を開く。

「やれやれ、その様子じゃ一人で帰るのは無理ですね。送っていきますよ」

「なにおう。私を誰だと思っている。この世で最も気高く、強く、そして美しい、日向地雷矢様だぞ。これくらい何とも……」

そう言った傍からすでに足元がふらついていた。

これ以上の言葉は無駄だと判断した駈は、地雷矢に背を向けて地面に膝をつく。

「ほら、送っていきますから乗ってくださいよ」

「……うむ。いいだろう。よきにはからえ」

いきなり殿様にクラスチェンジした地雷矢を背に、駈は天道寺を目指して歩き始めた。


天道寺への帰り道、眠っているとばかり思っていた地雷矢が急にポツリと呟いた。

「ずいぶんと大きくなったな」

「え?」

「背中だよ。背中。昔はこーんなに小さかったのにな」

そう言って、地雷矢は親指と人差し指で隙間を作る。

「はは、そうですね。そんな頃もありました」

「あれから、どれくらい経ったかな?」

「五年弱ってところじゃないですか?」

「そうか。もうそんなになるか」

地雷矢が感慨深そうに呟く。

「本当に大きくなったものだ」

そして、地雷矢は再び寝息を立て始めた。

駈もそれ以上は何も言わず、ただ黙々と歩き続けた。


ちなみに非常に余談ではあるが、駈が家に戻った時、夕食がすでに終わっていたことは言うまでもない。



「愚兄―、今からちょっと……」

今日も元気に自分の部屋でSGYの振り付けを踊っていた駈に、小恋愛が声を掛けようとして止めた。部屋には大音量の音楽が流れている。最近テレビ等でよく流れているSGYの新曲だ。どうやら小恋愛は、今何を言っても無駄だと悟ったらしい。ツカツカと駈の部屋に上がりこみ、駈の後ろから、その横っ面にローリングソバットを叩き込んだ。蹴った瞬間、小恋愛のスカートからピンク色の布がバッチリと見えたが、残念ながら駈はそれを見ることはできずにそのままオーディオに激突した。

「今日も調子良さそうね。愚兄。私達これからちょっと出かけてくるから」

華麗に着地を決めた小恋愛が、何事も無かったかのように床に突っ伏したボロ雑巾(駈)に話しかける。

「ど、どこに行くんだ?」

プスプス煙を立てながらも、駈は何とかそう尋ねた。

「ちょっと、シャルの服とか買いにね」

小恋愛が後ろに目を向けると、ようやく騒ぎが終わったと思ったのだろう、シャルがとてとてと部屋の中に入ってきた。

「この子、あのゴスロリ服しか持ってなかったでしょ。今までは私のお古とか着せてたんだけど、いまいちサイズが合ってなかったから新しいの買いに行くの」

そう言った小恋愛に、シャルが申し訳なさそうに口を開く。

「小恋愛、やっぱり悪いのだ」

シャルの言葉に、小恋愛は優しく首を振った。

「いいのいいの。バイト代入ったし。それにシャルに可愛いの着せてみたいしね。足りなかったら愚兄のお小遣い減らすから大丈夫よ」

何かさらりと聞き捨てならないことを言われたような気がしたが、駈の頭の上ではまだヒヨコがピヨピヨと飛んでいたので、何も言うことができなかった。

「あと、下着をちょっとね」

キュピーン!

下着、その言葉を聞いた駈が、頭の上を飛んでいたヒヨコをいきなり鷲掴みにして口の中に放り込んだ。完全に目を覚ました駈がさわやかな、そうまるでどこかの国の王子様のような笑顔(歯がキラーン付き)で二人に告げる。

「俺も行こう」

「「え?」」

その言葉に二人は驚いた。

「ふっ、荷物持ちが必要だろう。それに美少女二人、変な虫が付いてきたらどうする? やはり男手は必要だ。そんな訳で、この西岡駈、今日は二人のために身を粉にして働こうぞ」

「変な虫はあんたでしょうが。いいから留守番してなさい」

「お願い。そげなこと言わないで。一緒に連れてっておくんなまし」

冷たく切り捨てる小恋愛の足元に、駈が擦り寄って懇願した。見苦しいことこの上ない。

靴の裏にへばりついたガムのように、べったりと張り付く駈を振り払いながら、小恋愛は困った視線をシャルに向ける。

「どうしよっか? シャル」

小恋愛の言葉にシャルは少しもじもじしながら答えた。

「えう、わっちは別に一緒に行ってもいいのだ。その、駈にも選んでもらいたいし……」

恥ずかしそうなシャルの態度に、小恋愛はため息を一つ吐きながらも、しぶしぶ駈の同行を許可した。


『巨大ショッピングモールヘブンズドア』

ご大層な名前に負けず、中の施設もそれは大層立派なショッピングモールであった。オーナーが品揃えでは○マゾンにも負けないと豪語するとおり、日用品から同人誌までとりあえずここに来れば揃わないものは無いとまで言われている。

おまけにアミューズメントフロアやカラオケ、ボーリングといった娯楽施設も完備。しかもホテルまで併設されており、至れり尽くせりの施設であった。

三人はその一角、客の割合の九七パーセントを女性が占める場所、『ランジェリーショップ』へと訪れていた。

色とりどり下着、ノーマルなタイプからこれが本当に下着としての機能を果たすのかと疑問を持つようなものまで多数取り揃えられている。

普通、男子はこういった場所を敬遠する。身の置き場がないからである。例え彼女に連れられて来たとしても、客の大半が女性、そして置いてある品物がオール下着とくれば、普通の男子は気後れすることだろう。しかし、ここにいる変態(駈)は違っていた。

「ひゃっほーい。パラダイスだー。いいねいいね。最高だね。また脳内ランジェリーボックスのメモリが増えそうだ。今年の新作は……ふむふむ、うんうん、これはいい。これを頭の中でももはたんやワイスたんに着せて……はあはあ」

などと、一人で恍惚の表情を浮かべている。駈にかかってはランジェリーショップもただの遊び場のようだ。しかも、自分一人で来たのではなく美少女二人の付き添いという大義名分もある。自分には何ら恥じることなどない。

しかし、一緒に来た二人は当然他人のフリ。こんなバカの連れだと思われたら、もう外を出歩くことなどできはしない。だが、駈にはそんなことなど関係なかった。

「さあ、こんな機会はまたとない。しっかりと心ゆくまでこの楽園を堪能しなくては。さて、お次は……」

トントン

場所を移そうとした駈の肩を誰かが叩く。駈が振り向くと、そこには「あなたは本当に女性ですか? ゴリラの雌じゃないんですか? 早く動物園に帰りなさい」と言いたくなりそうなほどごつい顔とガタイをした女店員が駈を睨んでいた。

「お客様、恐れ入りますが、他のお客様のご迷惑になりますので退店していただけますか?」

全く恐れ入っているようには見えない様子でそのゴリラは駈を睨み続ける。

駈は「俺にはゴリラの言葉は分からん。とりあえず○んやくこんにゃくを持ってくるか、人語の喋れる奴を連れて来い」と言いたかったが、さすがにこの状況で面と向かってそれを言う勇気はなかった。

「いや、俺は妹の付き添いで……」

「ほう、その妹さんはどちらに?」

「いや、そこら辺に……」

駈が辺りを見回すが、二人の姿は無い。いるのは駈を汚物のような目で見る女性客のみ。

「あれ、いやほんとにいるんですよ。黒色の長い髪で、格好は……」

「ああ、それならさっき私に、あそこに不審者がいるから摘み出してほしいと言ってきたお客様によく似ていますね」

「…………」

駈の頬を一筋の汗が伝う。

「お客様、どうしますか? もしご退店していただけないようなら、病院に搬送させていただくことになりますが?」

そう言って、雌ゴリラが○ンシロウのように指をポキポキと鳴らしながら近づいてくる。

駈はスゴスゴと楽園を後にした。


ランジェリーショップを追い出された駈は、一人寂しく施設内のゲームセンターを訪れていた。別れた際は中央広場に集合と決められている。

もういいだろう。そう思った駈がゲームセンターを出ると、そこには両手に買い物袋を下げて泣きそうになっているシャルがいた。

「お前、こんなところで何やってんだ?」

その声に振り向いたシャルが、今にも泣きそうな顔で駈に擦り寄ってくる。

「えぐ、人が多すぎて小恋愛とはぐれちゃったのだ」

「中央広場に集合って決めてあっただろ」

「それがどこか分からなくって。色々歩いて回ったけど、ここすごく広いし……」

駈は失念していた。当たり前のように普通に生活しているから忘れがちだが、シャルは異世界からきたのだ。当然、こんなところにきた経験などない。分かっていたはずなのに。

「誰かに聞こうと思ったけど、誰に聞いたらいいのか分からないし……」

シャルが目に涙を溜めてそう呟く。

「ったく、しょうがねーな。ほら、荷物貸しな」

駈はシャルの荷物を手に取った。

手の小さいシャルには両手でも、駈には片手で十分だった。

「ほら、行くぞ」

「あ、うんなのだ」

駈の言葉に、シャルは一つ頷くと、嬉しそうにその後を付いていった。


「えう、あう」

施設内の客が急に増え始めた。おそらくどこかでイベントでも行われているのだろう。小柄なシャルは人込みに揉みくちゃにされながらも、必死に駈の後に付いていく。

「おい、大丈夫か?」

駈が少し歩調を緩めてシャルに尋ねた。

「あ、大丈夫なのだ。遅くてごめんなさいなのだ」

健気に頭を下げるシャルに、駈はため息を吐いた。

「やれやれ、全然大丈夫そうに見えねえよ」

駈は空いている方の手でシャルの手を握る。

「ふぁ?」

シャルが真っ赤になってあわあわした。

「あ、あの……」

「こうすりゃはぐれないだろ? 行くぞ」

照れくさそうに少しだけ顔を赤くした駈は、シャルの手を握ったまま中央広場へと向かった。シャルは笑顔を浮かべたまま、大人しく駈に身を任せていた。


中央広場に着くと、そこは家族連れやカップルなどで溢れかえっていた。その一角、ちょうど四人掛けのソファが置いているフロアで、小恋愛が立ったまま腕を組んで待っている。

アイドルばりの美少女が一人待ちぼうけ。普通ならナンパでもされそうなものだが、小恋愛の放つ怒りのコスモがそれを阻んでいた。二人はそんな小恋愛を見つけ、話しかける。

「おーい、小恋愛」

「まったく、どこほっつき……あっ!」

嫌味の一つでも言おうとした小恋愛がその口を止める。そして、今度は拗ねたような顔になった。

「あーら、お手々繋いで仲良くデートしてたって訳ね。こっちは寄ってくる虫を追い払いながら、ずうっと待ってたっていうのに。なーんのためにあんたは付いて来たんだったかしら。まったく、良いご身分よねえ。愚兄」

到着早々嫌味の嵐。駈が困ったように口を開く。

「何言ってんだ? デートな訳ないだろ。そりゃ遅れたのは悪かったけど」

「じゃあ、その手は何?」

小恋愛に言われてようやく駈は理解した。今の今までずっとシャルの手を握りっぱなしだったことに。気付いた二人は慌てて手を離す。

しかし、その様子は傍から見れば、どこからどう見ても初々しいカップルのイチャつく様にしか見えなかった。小恋愛の怒りのボルテージがまた上がる。

「どうやら私はお邪魔のようねえ。先に帰らせていただくわ。私のことは気にせず、どうぞごゆっくり」

そう言って、小恋愛は一人でショッピングモールを出て行った。


「小恋愛、どうして怒ってたのだ?」

「さあ、俺にもさっぱり分からん」

残された二人は、小恋愛の消えた通路をただ呆然と見つめている。

「駈、何かしたのか?」

「何で俺なんだよ?」

「小恋愛が駈以外の人に怒ってるの見たことないのだ」

「うぐ、確かに」

品行方正で誰にでも分け隔てなく優しい小恋愛。駈も小恋愛が他の人間を怒鳴り散らすのを見たことが無かった。

「よし、帰ったら一緒に謝ろう」

「わっちは何もしてないのだ」

「バカ、俺一人だったら殺されるだろうが。小恋愛の怖さはよく知ってるだろ?」

駈の珍しく真面目な顔にシャルは思わず頷いた。

「わ、分かったのだ」

そして、二人も小恋愛の後を追ってショッピングモールを後にした。


▲▲▲

胸が痛い。最初は小さな痛みだった。

でも、最近はだんだん痛みが大きくなっている。

病気って訳でもない。こう見えても、仕事柄体調には人一倍気を配っている。

にも関わらず胸が痛い。締め付けられるように胸が痛い。

どうしたんだろう。今まではこんなこと一度もなかったのに。

いや、一度だけあった。そう、もう何年も前に。忘れていた。あの時と同じ痛みだ。

どうすればこの痛みは治まるんだろう。前は時間と共に少しずつ痛みが和らいでいった。

でも、今回は……

▲▲▲


「「ごめんなさい」」

ヘブンズドアから帰って来て早々に、駈とシャルは小恋愛に土下座を敢行した。(正確には駈が土下座、シャルは三つ指ついてのお辞儀)

「え? 何が?」

言われた小恋愛は目をパチクリさせて驚いている。

「いや、何がってヘブンズドアで……」

「ああ、そのこと……」

小恋愛は少し困った表情を浮かべた。

「あれは、あんた達が来るまでナンパがうざかったからイライラしてただけよ。あんた以外に八つ当たりする相手がいなかったから、ちょっと憂さ晴らししただけ」

「じゃ、じゃあ小恋愛、もう怒ってないのか?」

シャルがガバッと頭を上げて笑顔になる。

「当たり前じゃない。私が可愛いシャルに怒る訳ないでしょ。そこのバカには怒るけど」

その言葉で、シャルは思わず小恋愛に抱きついた。小恋愛はくすぐったそうに優しくシャルの頭を撫でている。そんな二人の様子を見ながら、駈は恐る恐る言った。

「じゃ、じゃあ、もうお怒りでない?」

「だから、そう言ってるでしょ」

そこまで言ってから、小恋愛が少しだけ視線を上げて遠くを見る。

「でも、そうね。私も彼氏作ろっかな。変な虫ばっかり付いてうざったいし」

「何?」

その言葉に最も速く反応したのは駈だった。

「あーあ、どこかにいい人いないかなー」

冗談めかしてそういう小恋愛に、駈が土下座しながら口を開いた。

「恐れながら小恋愛様、私、そのような立派な御仁に一人だけ心当たりがございます」

「ふーん、誰よ?」

駈のノリをあっさりとスルーして、小恋愛は胡散臭そうに尋ねた。駈は起き上がって自分を指差す。

「俺、俺」

ピシリ、小恋愛とシャルは無言で固まった。

「俺と付き合うか? 小恋愛」

「…………」

駈の顔に、突如真っ赤になった小恋愛の鉄拳が炸裂する。

「バ、バッカじゃないの!」

小恋愛は完熟トマトのように顔を赤くしたまま、そっぽを向いた。

「だ、だれがあんたなんかと。第一、あんたにはもう嫁がいるでしょうが」

小恋愛が指差すと、そこには先ほどの笑顔はどこへやら、目に大粒の涙を浮かべてへこむシャルの姿があった。

「い、いったいなー。冗談に決まってるだろ。何もそんなに本気で殴らなくたって……」

駈の言葉を聞いた小恋愛が、急に真顔に戻った。

「冗談、か。そっか、そうよね」

そう言って少しだけ寂しそうに笑う。

「おい、どうかしたのか?」

駈の心配そうな声に、小恋愛は慌てて首を振った。

「な、何でもないわよ。それよりほら、晩御飯にしよ」

胸の痛みを隠しつつ、小恋愛は笑顔でそう言った。



「みんな、聞いてくれ」

澄み切った空の清々しい平日、ちょうど昼休みを迎えようとしていたその時、駈のクラスであるF組の男子生徒の一人が教壇に立った。何やらものすごく真剣な顔をしている。もっとも、モブキャラなので顔は無いが(そこは気分で)。

しかし、そのあまりに真剣な様子に、購買へ向かおうとした者も、机を並べて弁当を広げようとしていた者も一斉に教壇へと視線を向けた。

「驚くべき情報を入手した。なんと前日このクラスの男子に、美少女二人連れでデートをした者がいる」

「「なにー!」」

その言葉にクラスの全員(特に男子)が飛び上がった。

「場所はヘブンズドア。美少女の内の一人は我が校のアイドル、西岡小恋愛。そして、もう一人は名前はまだ調査中だが、先日我がクラスに現れた金髪ロリッ子少女。どちらも特上が付くほどの美少女だ」

「ふざけんなー。どこのクソ野朗だ。殺してやる。そして埋めてやる」

「二人連れなんてそいつ何様? 分かち合いの精神とか無いの? 死んじゃえばいいのに」

「リア充に死を。リア充に死を。リア充に死を」

「ははははは、……死ね」

などと、たちまちF組はカオスへと突入した。

しかし、言い出しっぺの司会者モブがそこに待ったを掛ける。

「みんな、落ち着け。薄々は分かってるんじゃないか? このクラスにそんな不届き者な真似をするゴミ虫野朗は一人しかいないってことを」

そこでクラス全員の視線がこっそりと教室を出ようとしていた駈に集まった。

見つかった駈は、てへペロの表情を浮かべてその場を誤魔化そうとしたが、当然そんなものが怒り狂ったF組の面々に通じるはずもなかった。司会者モブが駈に向かって冷たく言い放つ。

「容疑者西岡駈。何か申し開きはあるか?」

ことここに至って、司会者モブは裁判長モブへとクラスチェンジしていた。

「ございません」

裁判長モブの言葉に、駈はきっぱりと言い切る。

「ほほう。中々いい度胸だな。では、罪を認めるのだな?」

「罪かどうかは存じませぬが、出かけたのは事実でございます。この西岡駈、美少女と出かけたことを、自慢はしても誤魔化したりは致しません」

裁判長モブは感心したように頷いた。

「ふむ、大した武士もののふよ、してどのようなことをしたのだ?」

「はい、下着などを選んでおりました」

ピキ!

F組男子の額に青筋が浮かび上がる。

「ほ、ほう、それは中々楽しそうだな」

周りの空気を気にもせず、駈は続けた。

「はい、至福の一時でございました。その下着を(脳内で)私の愛するハニー達(妄想の)に着せてそれから……」

恍惚の顔を浮かべる駈に、裁判長モブが手を振りながら口を開く。

「もうよい。では、西岡駈よ。最期に言い残すことはあるか?」

その言葉に駈が真剣な表情で言った。

「一言だけございます」

「申してみよ」

殺気立つ裁判長モブプラスクラスの男子に向かって、駈は勝ち誇った顔で告げる。

「フッ、負け犬共がピーチクパーチク囀るな。俺様はモブとは違うのだよ。モブとは。貴様らは教室の隅っこでワオーンとでも吼えているがいい。はっはっは」

駈の言葉に、その場にいた全員がプルプルと震えている。裁判長モブが怒りを押し殺しながら短く言った。

「やれ」

それが合図だった。クラスの男子ほぼ全員と一部の勇敢な女子が、一斉に駈に向かって襲い掛かる。

「テメー、身の程をわきまえろや。こらあ!」

「誰がモブだ。誰が。テメーの方こそホラー映画で最初に殺られる被害者Aだろうが!」

「あの学園のアイドル、小恋愛ちゃんと一つ屋根の下ってだけでも許せんのに、しかも金髪ロリッ子付きだと。……殺す!」

「神よ。何故あなたはこうも無慈悲なのですか?でも、私はあなたに弓引くことはできない。だから、せめてこの幸福を独り占めする不届き者を殺します」

「死ね死ね死ね死ね死ねー!」

思わず目を覆いたくなるような制裁という名のリンチに、駈は満身創痍でクラスの隅にいた牙に助けを求めた。

「牙、助けてくれ。殺される」

しかし、牙は静かに首を振る。

「駈さん、それはムリっす」

義兄弟の契りを結んだ同志の言葉に、駈は信じられないといった表情で目を見開いた。

「な、何故だ? 同士よ」

「駈さん、俺達の誓いを忘れたんですか?」

「誓い? 確か……『リア充に死を。モテル男に鉄槌を。彼女ができたら即他人。デートなんかしたらマジ殺す』」

「そういうことです。買い物くらいなら許せますけど、これはムリっす」

そう言い残し、牙は静かに教室を後にした。

そしてその後、この惨劇は昼休みが終わるまで続いたという。


▲▲▲

「小恋愛―、今日仕事休みでしょ? 一緒に遊びに行かない?」

小恋愛に声を掛けたのは、同じクラスの露原小鳥つゆはらことりだった。小恋愛とは中学時代からの友人である。小恋愛にモデルの仕事がない時は、こうやって度々遊びに誘っていた。

「ていうか、お願い、付き合って。ほんとは今日合コンする予定だったんだけど、友達が一人風邪でダウンしちゃったの。私がセッティングしたから中止なんて言い辛いし。だから、私を助けると思って、お願い」

小鳥が手を合わせて小恋愛に頼む。しかし、小鳥は内心無理だと思っていた。

小恋愛がこれまで合コンに参加した話など聞いたこともない。男に興味が無い訳ではないらしいが、今まで数多くの男達が小恋愛に交際を申し込み、ことごとく撃沈していた。

対する小恋愛も最初はこの申し出を断ろうとしていた。生憎と自分は合コンなどに興味はない。それに、家では手の掛かるどうしようもない兄がお腹を空かせて待っている。なんだかんだと言っても、自分は兄の世話を焼くのが嫌いではないのだ。だから、今日は仕事も無いし、早く帰って夕食の用意をしなければ。まったく、あのバカは、自分がいなければ本当にどうしようも……。

そこまで考えて小恋愛の思考は停止した。

そうだ、もう違うんだ。確かに手の掛かる兄はいるが、その兄にはもう嫁がいる。最初はうまくいってなかったが、最近はそうでもない。つまり、自分が世話を焼く必要ももう無い。そして、自分の居場所も……。

「いいよ」

気が付くと、小恋愛は小鳥の申し出にイエスと答えていた。

▲▲▲


「ただいまー」

時刻は午後八時過ぎ、外は真っ暗である。

リビングの扉が開き、小恋愛が入ってきた。

「おかえりー」

「おかえりなのだ」

ラジカルももはのDVDを見ていた駈とシャルは、目はテレビに釘付けのまま、言葉だけを返した。

「ごめんね、シャル。ご飯はちゃんと食べた?」

鞄をダイニングテーブルに置いて、申し訳なさそうに小恋愛が尋ねる。小恋愛の言葉にシャルは笑顔で頷いた。

「ん、大丈夫なのだ。駈と二人で作って食べたのだ」

小恋愛がキッチンに視線を向けると、そこには食べ終わったままの食器や調理器具が手付かずのまま置いてある。

「……そっか」

シャルの言葉に小恋愛がほんの少しだけ寂しそうに笑った。シャルは、そんな小恋愛の様子に気付かず続ける。

「小恋愛はこんなに遅くまでどこに行っていたのだ? 仕事か?」

シャルも小恋愛がモデルの仕事をしていることは知っている。しかし、小恋愛はシャルの質問に首を横に振って答えた。

「ブブー、はずれー。合コンしてきたの」

「何!」

その言葉にいち早く反応したのはシャルではなく駈だった。見ていたテレビを一時停止し、小恋愛に詰め寄る。

「合コンって誰とだ? 女同士でか?」

「んなわけないでしょ。女同士で合コンして誰が喜ぶのよ?」

「俺が喜ぶ」

「死ね」

小恋愛がテーブルの上にあった鞄を駈に向かって投げる。しかし、駈はあっさりとそれを受け止め、小恋愛に言った。

「じゃあ、男と合コンしてきたのか?」

「当たり前でしょ」

「何もなかっただろうな?」

「何もって何よ?」

「そりゃ、あれだよ。ピーとかピピーとか伏字を使わないと誰かに怒られそうなあれだよ」

「はいはい、面白い、面白い。良かったわねー」

普段は顔を赤くしてツッコんでくれる小恋愛が、今日はツッコんでくれない。

駈は若干の虚しさを感じつつも小恋愛に続ける。

「おい、兄ちゃんは結構真剣に……」

「何にもないわよ。ていうか、何かあってもあんたには関係ないでしょ」

「何? 関係ない訳ないだろ。兄ちゃんは可愛い妹が超心配だ」

駈の言葉を聞いた小恋愛はまた寂しそうに笑った。

「……妹か。血は繋がってないけどね」

この時駈は、小恋愛の言葉を致命的に勘違いして受け取ってしまった。

「何? 血なんか繋がってなくても、小恋愛は一生俺の大事な妹だ。その証拠に、俺は小恋愛の生理の時期から今日穿いているパンツの色まで何でも……ゴチン!」

ダイニングテーブルに置いてあった花瓶の一撃を喰らい、駈は派手に仰け反って倒れた。

「そういう意味じゃないわよ、バーカ」

そして、小恋愛は鞄を拾ってリビングのドアを開ける。

「何か疲れたから今日はもう寝るわ。シャル、悪いんだけどそのバカお願いね」

そう言い残し、小恋愛はシャルの返事を待たずに自室へと戻っていった。

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