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消えたマスター 2
勢い良く開かれた扉の呼び鈴は、先ほどとは違う鈍い音を奏でた。
その音は嫌というほど響き渡る。
店には、先ほどすれ違った男どころか、マスターの姿も見当たらなかった。
ほんの数分の間に・・・
人が消えるなんて・・・。
銃の音も、睡眠薬や毒薬の臭いもない。
それに、争った形跡もない。
しかも、マスターは現役でなくたって相当やり手の殺し屋だ。
マスターがいなくなるなんて、ありえない。
先ほどまでマスターが立っていたカウンターの中には、
拭きかけのグラスと布巾が無造作に置かれていた。
一体、何があったんだ・・・・?
~~♪
その時、ポケットに入っていた携帯が鳴った。
すぐに取り出し、画面を見てほっとして通話ボタンを押した。
「もしもし?・・・カイ?・・・・」
自分で発した仲間の名前にどこか安心を覚えた。
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