第十二話
「くそったれがぁぁぁぁ!」
伍長が血管を額に浮かせて触手を刺すも黒い化け物は少しも堪えた様子がない。それどころか伍長をグイグイと締め付けていく。
「グググググ…ぐあぁぁ」
伍長は顔に脂汗を浮かべて顔を真っ赤にして唸る。
「伍長!!!」
ユフラナの叫ぶ声が聞こえる。やっと、荷物から抜け出ると化け物に向かって矢を放つジャックの姿が見えた。矢を何度か放つも化け物の目を捉える事はできずに矢を撃ち尽くしてしまった。
「ジャック!!!もういいからコイツを発破で私ごと吹き飛ばせ!」
「そんな!!んな事できないスよ。」
ジャックが泣きそうになりながら怒鳴り返す。
「何故だ!お前はもう発破の初級研修は終了してるだろ!」
「そういう問題じゃ…」
ジャックがそう言いかけた時に化け物が大きな叫び声を上げる。見上げるとモンスターの目に数本の矢が刺さっていた。触手をくねくねと動かし伍長は宙へと放り出され、地面へと転がり落ちた。
「いたたたた、くそっ。」
伍長がそう言って呻き声をあげるとジャックが叫ぶ・
「師匠!!」
ジャックの見ている方向を見ると馬に跨った数名の人影が見える。
「あれ??小隊長さんが来たのぉ?街までは、まだ随分と距離があるみたいだけど…。」
ユフラナが首を傾ける。 ジャックは「おーい」と大声で両手を振っている。伍長は額に手をやり小さくため息をついた。
「ボウガンは落ち着いて狙い、数を撃ち込むより一発一発を丁寧に撃てと言ったでしょう?まだまだ鍛錬の余地がありそうですね。」
僕らの近くまで来ると大型のボウガンを肩に担いだ女性の小隊長は口をきゅっと結んで笑った。
「申し訳ないッス。」
「気を緩めない。トドメを刺す前に気を緩めるといつか命取りになりますよ。」
ジャックの頭をコツンと叩くと小隊長はユフラナの方に向く。
「ユフラナさん、やっちゃってください。大分弱っている様だし、詠唱を途中で止めたその魔法でもトドメをさせるでしょう。」
「あっ、し、しまったっ。ごっ、ごめんなさい。」
ユフラナはへこへこと女性の小隊長に頭をさげると長槍の先を化け物に向けた。長槍の先から放たれた炎は化け物を焼き尽くしていく。
「ぴぎゃあああああああああああ」
化け物は断末魔の叫びを上げて少し暴れ動かなくなった。




