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ターニング  作者: かすがいななみ
エピローグ
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4/4

エピローグ

 

 大学構内のカフェテラス。

 春の日差しの心地好い昼下がり。

 私は書きかけの歌詞カードを片手に、のんびりと紅茶を飲んでいた。

 高校を卒業して、私は音楽大学へと進んだ。

 大学へ行きたかった理由は、もちろん歌を続けるためでもあったけど、「歌う」ということをもっと真剣に考えてみたかったから。

 キャンパスライフやアルバイトを楽しみながら、オリジナル曲の作成に明け暮れる……。

 それは、以前の私からはとても想像できない、前向きで充実した日々。

「それまで」の私は、自分の生い立ちにコンプレックスを持っていて、とても臆病だった。

 ずっと、一人ぼっちだと思い込んで生きてきた。

 そんな私を変えた、あの歌。

 遠い思い出の中に忘れていた、大切なきっかけ。

 舞台の上から歌を通して送られた、温かいメッセージ。

 他人と違っていても決して一人じゃない、ということ。

 他人と違っていても人と人は繋がっている、ということ。

 あの時、私の心を満たしてくれた想い……。

 そんな歌を歌いたくて、そんな想いを届けたくて、私は今も歌を続けている。

 大事なのは、何のために歌っているのか。

 何を表現したくて、何を伝えたくて歌っているのか。

 一人ぼっちだった私だから分かる、人と繋がることの喜び。

 それを気付かせてくれたあの歌との出会いと再会は、偶然じゃなかったのかもしれない。 

 臆病だった私。

 一人ぼっちだと思い込んでいた私。

 歌に戸惑いを覚えた日もある。

 悩んで眠れなかった夜もある。

 怖くて逃げ出そうとした日々がある。

 それでも私は、過去を忘れたいとは思わない。

「それまで」の私も、今の私にとっては大きな糧になっているから。

 自分の居場所は、自分で見つけるもの。

 ずっと、自分のために歌を歌ってきた私だけど。

 今は、それよりもずっと大事なものが見え始めてきているから。 

 今はただ、自分のできること。

 自分にしかできないことを、一つずつ積み重ねていくだけ……。 

 今、私には一つの夢がある。

 それは努力では叶わない、儚い理想なのかもしれないけど。

 生涯を懸けて叶えたい夢がある。

 それは、この町で歌を歌い継いでいくこと。

 忙しく、流れの速い現代社会。

 飽きられることのない歌を歌い継いでいくことは、困難なことなのかもしれない。

 でも、私は思う。

 歌う時代を選ばず。

 歌う場所を選ばず。

 伝える言葉を選ばず。

 聞く人を選ばない。

 そんな歌手がいたなら、きっと歌い継いでいけるはずだ、と。

 だから私は障害を、人種を、宗教を、ありとあらゆる個性を差別せず。

 全ての人のために、歌うことができる人になりたい。 

 この町で教えられた、人と人との繋がりを伝えていきたい。

 他人と違っていても、決して一人じゃないって伝えていきたい。

 いつまでも変わらずにこの町と、人々が温かくあってほしいから……。


 私は自作の歌の歌詞を書き終えると、ゆっくりと立ち上がる。

 これから先、道の険しいこともあるかもしれない。

 辛くて、逃げ出したくなることもあるかもしれない。

 けれど、私は諦めない。

 もしも辛くなったら、きっといつでも思い出すだろう。


「それまで」の私を変えた、そんな町を。




  fin


長文、お付き合いくださりありがとうございました。

趣味でちまちま書いているので、かなりの時間が掛かってしまいました。


振り返ってみれば、この物語を書き始めたのが約4年前…。

デリケートな内容を多く含んでいたので、悩みながら書いていたのを思い出します。

何度も挫折しかけましたが、無事に完結することができました。

このまま腐らせておくのももったいなかったので、公開に踏み切りました。

ちなみに、「きっかけ(ターニング)」となった歌のタイトルですが、実在する歌で、本文中にさりげなく書かれています。


内容も文章も稚拙ですが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

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