表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/69

8話 中村桜 剣聖   妹視点


――あの日のことは、今でもはっきり覚えている。


 ダンジョンが世界に現れた日。


 テレビのニュースより先に、私の耳に入ってきたのは、お母さんの声だった。


「大門が……病院に運ばれたって……」


 一瞬、意味が分からなかった。


 お兄ちゃん?


 そんなはずない。

 朝まで普通に学校に行くって言ってたのに。


 気づいたら、私は家を飛び出していた。


 どうやって病院まで来たのか、正直あまり覚えていない。ただ、胸の奥がぎゅっと締め付けられて、足だけが勝手に前に進んでいた。


 病室で見たお兄ちゃんは、静かに眠っていた。


 呼吸はある。

 でも、目は開かない。


 私は、ベッドの横に立ったまま、しばらく動けなかった。


 ダンジョン。


 突然現れて、人を巻き込み、街を混乱させる存在。


 そのせいで、お兄ちゃんはここにいる。


 そして、円頓寺カレンさんも。


 お兄ちゃんの幼馴染で、いつも明るくて、誰にでも優しかった人。


 その人も、意識を失ったままだと聞いた。


 胸の奥に、はっきりとした感情が生まれた。


 ダンジョンを、知りたい。

 理解したい。

 そして、立ち向かえるなら、立ち向かいたい。


 そう思った瞬間だった。


 頭の中に、澄んだ声が響いた。


 ――《適性を確認》


 驚くより先に、身体が熱くなる。


 ――《スキルを付与します》


 視界が、一瞬だけ揺れた。


 ――《剣聖》


 次の瞬間、世界の見え方が変わった。


 床の硬さ。

 空気の流れ。

 人の動き。


 全部が、理解できる。


 剣を振ったことなんてないのに、どう動けばいいのかが、自然と分かる。


「……これが、スキル」


 怖さよりも、驚きと期待の方が大きかった。


 もしかしたら。

 この力があれば。


 お兄ちゃんのいる世界に、何かできるかもしれない。


 数日後、通知が届いた。


 《スキル覚醒者は、指定された学校へ登校してください》


 そこは、普通の学校だった。


 でも、中にいる人たちは、普通じゃなかった。


 魔法を扱う人。

 武器を具現化する人。

 支援系の能力を持つ人。


 教室には、緊張と期待が混じった空気が漂っていた。


 誰もが、これから何が始まるのか分かっていない。


 でも、全員が、前を向いていた。


 そこで、仲間と出会った。


 一人では危険でも、力を合わせれば進める。


 最初の目標は、近くに発生したダンジョンの攻略。


 怖くないわけじゃない。


 でも、それ以上に。


 この力を、無駄にしたくない。


 ダンジョンを知り、攻略し、戻ってくる。


 その積み重ねが、きっと世界を変える。


 そしていつか。


 眠ったままのお兄ちゃんが目を覚ましたとき。


 私は胸を張って、こう言えるはずだ。


 ――ちゃんと、前に進んでたよって。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ