34話 戦争準備
ダンジョンの改修は、想像以上に骨が折れた。
まず最初に手を付けたのは――配置そのものの再構築だ。
火山ダンジョンを相手にする以上、最前線に“燃えるもの”を置くのは愚策。
そのため、俺は思い切った決断を下した。
「ジャングル階層を、地下に下げる」
豊かな植生を誇るジャングルは、火に弱い。
だからこそ地下二階へと移動させ、外気と隔離した。
代わりに、地上階――ダンジョンの入口にあたる階層は墓地エリアとする。
侵入者が最初に踏み込む場所だ。
◇
墓地階層には、即戦力を集中配備した。
まずはスケルトンを一気に百体追加召喚。
数で圧をかけ、足止めと消耗を狙う。
さらに――火属性対策としてスライムを五十体召喚。
結果は、予想以上だった。
「……進化、してる?」
フロースが驚いたように声を上げる。
通常のスライムが、環境と死属性の影響を受けて変質していた。
・アンデッドスライム
物理耐性が高く、斬撃を受けても再生する。
・ポイズンスライム
触れたものを腐食させ、毒をばら撒く。
どちらも、火属性との相性は決して悪くない。
「……これは、使える」
さらに階層ボスとして、Cランク・ワイトを配置。
知性を持ち、魔法を扱えるアンデッド。
前線を指揮し、状況に応じて魔法支援を行える存在だ。
加えて――
スケルトンアサシン。
スケルトンタンク。
スケルトンファイター。
スケルトンマジシャン。
それぞれが連携し、墓地全体を一つの“殺し場”に変える。
◇
次に、地下1階――廃遺跡エリア。
ここには新たにゴーレムを追加配置。
耐久力重視の壁役だ。
さらに、オークの数も増やした。
単純な戦闘力と集団戦能力は、ここでこそ活きる。
「突破されても、ここで削る」
俺はそう判断した。
◇
そして、ジャングルエリア。
ここは“迎撃”と“撹乱”を兼ねる。
新たにDランクのハーピーを五体召喚。
空を飛び、爪で襲うシンプルな戦闘特化型だ。
「この部隊は、私が統率します」
アイリスは一歩前に出て、静かに胸に手を当てた。
「索敵、迎撃、連携。
いずれも問題ありません。私が責任を持って指揮します」
その声には無駄がなく、迷いもない。
淡々としていながら、確かな自信が滲んでいた。
「……任せた」
俺がそう答えると、彼女は小さく頷いた。
「はい。主の期待に応えます」
加えて、フロースが管理するトレント部隊。
さらに、自然発生したマッシュルームマンたちも戦力として編成した。
毒胞子と再生能力。
地味だが、確実に厄介な存在だ。
◇
最後に――
マリーとシャドウウルフ。
この二人は遊撃隊だ。
敵の主力を削ぎ、混乱させ、撤退経路を断つ。
決定打を与える切り札。
そして、都市部。
ここには――
戦士である結衣。
そして、シスターの彩乃。
戦闘には出ない。
だが、もしもの時の防衛と支援、回復の要だ。
「……よし」
全体を見渡し、深く息を吐く。
「これで、準備は整った」
火山ダンジョンがどれほどの戦力を誇ろうと――
ここは、簡単には落ちない。
むしろ。
「来るなら来い」
静かに、そう呟いた。




