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22話 カフェ建設

カレンが目を覚ますまで、しばらく時間がかかる――

アイリスの見立てはそうだった。


「魔力環境には適応していますが、意識が安定するまでには猶予が必要です」


なら、できることをやるしかない。


俺は皆を集めて言った。


「……じゃあ、カフェを完成させよう」


その一言で、空気が切り替わった。



まず動いたのはトレントたちだった。

ダンジョンの森の奥から、建材に適した木を選び出し、根を揺らして引き抜く。


「その木、節が少ないな。いいぞ」


マリーが目を細めて指示を出す。


続いて結衣が斧を担ぎ上げる。


「よし……えいっ!」


――ドンッ!


怪力スキルが発動し、太い幹が一撃で真っ二つになる。


「うわ……」


本人が一番驚いていた。


「だ、大丈夫かな……?」


「大丈夫どころか、職人泣かせの仕事だよ」


マリーが笑いながら言う。


切り出された木材は、スケルトンとゾンビたちが黙々と運搬していく。

無言だが、作業効率は異常にいい。


「……あの、案外頼りになるんですね」


結衣がぽつりと呟くと、


「うん、指示通りに動くからね。扱いやすいよ」


とマリーが軽く答えた。


上空では、アイリスが羽ばたきながら全体を見渡している。


「柱の位置、もう半歩内側です。

そのままだと動線が悪くなります」


「了解!」


彼女の指示は正確で、迷いがない。


そして――


建物の内部では、雪が設計図を広げていた。


「カウンターはこの位置ね。

お客さんの動線を考えると、ここに窓があると落ち着くわ」


柔らかな声でそう言いながら、棚の位置や照明の高さまで細かく指示する。


「……やっぱり、慣れてるな」


「ふふ。カフェで働いてたから、少しはね」


笑顔は穏やかだが、その目は真剣だった。


皆がそれぞれの役割を果たし、少しずつ形になっていく建物。


俺は、その様子を少し離れた場所から眺めていた。


……正直に言うと。


「俺、やることないな」


誰かが言ったわけでもない。

ただ、皆があまりにも自然に動いていて、割り込む余地がなかった。


マリーがちらっとこちらを見る。


「ボス、暇?」


「……ああ」


「じゃあ、見守り役でいいじゃん。

一番大事な役だよ、それ」


その言葉に、少しだけ胸が軽くなる。


俺は腕を組み、完成しつつあるカフェを眺めた。


木の香り。

人と魔物の気配。

穏やかに流れる時間。


――ここはもう、戦うだけの場所じゃない。


守るために、誰かが生きるための場所だ。


カレンが目を覚ました時、

きっとこの光景を見せてやりたい。


そう思いながら、俺は静かに頷いた。





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