表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/69

17話 ダークエルフ マリー

まずは、どうしてもやりたいことがあった。


――カレンのための場所だ。


「500ポイント……簡易個室生成」


メニューを操作すると、地下2階の一角に淡い光が広がる。

音も振動もなく、空間そのものが“区切られる”感覚。


壁は白く、天井は低すぎず高すぎない。

簡素なベッド、最低限の医療設備、清潔な空気循環。


豪華とは程遠い。

けれど、静かで、安心して眠れる空間だった。


「……これで、少しは」


カレンが目を覚ましたとき、

せめてここが“安全な場所”であるように。


胸の奥で、そっとそう願う。


――ポイント残量、減少。


次に考えたのは、アイリスの住居だった。


「次はアイリスの家を――」


そう口にした瞬間、


「不要です」


即座に返ってきた。


「主より先に、私が住居を持つ理由はありません。

まずは主の拠点を整えるべきです」


その声は淡々としていたが、

そこに疑いも打算もなかった。


「……そうか」


少しだけ、笑ってしまう。


「なら、せっかくだ。

ちゃんとしたのを作ろう」


俺はメニューを開き、深く息を吸った。


「5000ポイント。

屋敷配置」


一瞬、ダンジョン全体が震えた。


地下2階の中心部――

広い敷地が確保され、石畳が敷かれ、

重厚な屋敷が“最初からそこにあったかのように”出現する。


二階建て。

中庭付き。

防衛結界と簡易転移門も組み込まれている。


「……立派、です」


アイリスが、ほんの一瞬だけ言葉を失った。


中に入ると、家具は最低限。

大きなテーブル、簡素なソファ、空の本棚。


だが――


「部屋は、用意してある」


主寝室とは別に、

アイリス用の個室。

そして、ダークエルフ用の部屋。


「……え、あーしの部屋も?!」


金髪のエルフが目を輝かせる。


「マジで?

やば、テンション上がるんだけど!」


「まだ家具は少ない。

必要なものは、これからだ」


「全然いいし!

壁にポスター貼っていい?」


「……許可制だ」


「ケチー!」


そんなやり取りを横で聞きながら、

アイリスは静かに頭を下げた。


「感謝します、主。

この身、より一層お役に立ちましょう」


最後に、もう一つ。


「そうだ」


俺は、ダークエルフを見る。


「名前を、決めてなかったな」


「え、あーし?」


「仲間になったんだ。

呼び名くらい、あった方がいい」


少しだけ考えてから、口にする。


「――マリー。

どうだ?」


一瞬、きょとんとしたあと。


「……マリー?」


ゆっくりと、その名前を噛みしめる。


それから、にっと笑った。


「いいじゃん!

かわいいし、覚えやすい!」


弓を肩に担ぎ直し、胸を張る。


「じゃあ改めてよろしく、ボス。

Aランク弓兵、マリーでーす!」


こうして――

円頓寺ダンジョンの地下2階には、


病室があり、

屋敷があり、

そして“仲間の居場所”が生まれた。


戦うためだけじゃない。

守り、暮らし、待つための場所が、

静かに形を持ちはじめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ