1話目 世界が変わった日
新作小説です。
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その日、世界は何の前触れもなく壊れた。空が割れたわけでも、雷が落ちたわけでもない。ただ地面が低く唸り、耳の奥に不快な振動が残り、違和感を覚えた次の瞬間には足元のアスファルトに一本の亀裂が走っていた。
俺――中村大門は学校帰りの通学路の交差点で足を止め、何が起きているのか理解できないまま、その光景を見下ろしていた。
「大門くん、なに突っ立って――」
隣から聞こえた円頓寺カレンの声に反応するより早く、乾いた音が鳴り、その亀裂は一気に広がった。まるで巨大な力で引き裂かれるように、道路そのものが左右に割れる。
悲鳴が上がり、車が急停止し、人の流れが乱れる中で、カレンの身体がバランスを崩して前に倒れかけた。
「危ない!」
俺は反射的に彼女を突き飛ばしていた。次の瞬間、俺の足元から地面が消え、身体が宙に放り出される。
視界から空が遠ざかり、代わりに暗闇が迫ってくる。風が全身を叩き、回転する感覚の中で、これはもう助からないな、と妙に冷静な考えが浮かんだ。その直後に、カレンは無事だろうか、というどうでもいいようで一番大事なことだけが頭に残った。
衝撃は一瞬だった。
硬いものに叩きつけられた感触と同時に全身に激痛が走り、肺の中の空気が強制的に吐き出される。声にならない呻きが喉から漏れた。死んだと思ったが、意識は途切れず、俺は何かの上に落ちたまま荒い呼吸を繰り返していた。
視界が定まってきて、痛む首を無理に動かして下を見た時、そこにあったものを理解するのに少し時間がかかった。
黒い岩の塊のような巨大な身体。鎧のような外皮。人間とは明らかに異なる形状。それでもはっきり分かったのは、その胸部が俺の身体の下敷きになって完全に潰れており、頭部も石の床に叩きつけられて動かなくなっているという事実だった。
「……は?」
意味が分からなかった。俺は何もしていない。ただ落ちただけだ。能力もなければ、武器もない。それなのに、目の前のそれはどう見ても生きていなかった。
周囲に視線を向けると、そこは地下空間だった。黒曜石のような壁、赤い結晶が浮かぶ天井。ゲームや漫画で見たことのある「ダンジョン」という言葉が、説明もなく頭に浮かぶ。
夢だろうか、そう思った瞬間、空間全体が低く鳴動した。
《ダンジョンボス生命反応、消失》
《討伐確認》
《想定外の討伐方法を確認》
「……討伐?」
俺は戦っていない。ただ落ちただけだ。
《管理者不在を確認》
《最終接触個体を暫定管理者として認定》
嫌な予感がした。
《――中村大門》
《ダンジョンマスター権限を付与》
「ちょっと待て……」
赤い光が視界を埋め尽くし、世界が反転する。
この章のみ短めです。
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