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泣き虫村人のレベルアップ冒険譚  作者: 砂糖雨


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22/25

帰還とリアへの報告

アステルは、長期休暇を終えて、エルドニア職業学校へと帰ってきた。

荒野の岩窟の乾いた熱気とは違い、学校周辺は初秋の冷たく澄んだ空気に包まれていた。石造りの校舎からは、授業が始まったことを示す規則正しい鐘の音が遠くで聞こえる。彼はまっすぐにグラード先生の教室へと向かった。古書とインクの独特の匂いが漂う教室に、グラード先生はいつも通り机に座っていた。

アステルは、木剣を背に背負ったまま、深く頭を下げた。

「先生、ただいま戻りました。【戦士】の訓練を完了しました」

グラード先生は、アステルの身体を一瞥した。彼の背筋は伸び、数週間前までのひょろりとした印象は完全に消え、代わりに剣を振るう者の確かな力強さが宿っている。

「フン。バルトの地獄に耐えたようだな。STR(力)とVIT(体力)のステータスを確認した。問題ない」

アステルは、興奮を抑えきれずに、新たな発見を報告した。

「先生!訓練中、二つのジョブスキルを組み合わせる複合スキルを発見しました!【隠密】と【剣術】を融合させた『隠密剣術(仮)』です。STRとAGIを同時に活かせるため、あらゆる状況で使える汎用性があります!」

グラード先生は、その言葉を聞くと、口の端をわずかに持ち上げ、満足そうに微笑んだ。

「貴様が、このジョブシステムを打ち破るための、最初の成功だ。知識を捨てる訓練をしたからこそ、知識を活かす方法を見つけられた。その複合スキルこそが、『万能』の片鱗だ」(バルトの知識嫌いの訓練と、私の知識授業。この対極にあるものを融合させた。これで、アステルは、もはや単なる【村人】でも【見習い】でもない。システムが生み出した例外だ。)

グラード先生への報告を終えたアステルは、訓練場へ向かった。日が傾きかけ、訓練場は夕焼けの赤みがかった光に照らされている。

リアは、教官と一対一で模擬戦の訓練をしていた。彼女の剣は、以前にも増して鋭く、速く、迷いがなかった。訓練を終えたリアは、額に心地よい汗を浮かべ、アステルに気づくと、眩しい笑顔を見せた。

「アステル!おかえりなさい!」

リアが駆け寄ってきたその瞬間、アステルは驚きで息を呑んだ。リアもまた、この休暇中に著しい成長を遂げていたのだ。彼女の体は引き締まり、纏う魔力の密度が明らかに増している。

「リア……君、【騎士】に昇格したのか?」

「ふふ、さすがアステル。気づいたのね!この休暇中に、ついに【騎士見習い】から【騎士】に昇格したわ!」(リアの成長を心から喜ぶと同時に、自分がどれだけ急いでも、リアもまた先へと進んでいるという事実が、アステルの「焦り」と「更なる動機」を刺激した。)

二人は訓練場の端にある木陰で、互いの休暇中の出来事を話し合った。

アステルは、荒野の岩窟での地獄のような日々、拳で岩を砕いたこと、そして新しい複合スキルを発見したことを語った。話を聞くリアは、アステルの手のひらを優しく撫でた。手のひらには、もう血豆はなく、硬い皮膚が力強さを物語っていた。

「【戦士】の訓練、本当に大変だったのね。でも、アステルはもう泣き虫じゃないわ。ちゃんと約束を守って、強くなって帰ってきた」(アステルが私と同じくらい、あるいは私以上に危険な道を選び、強くなっている。もう、彼を庇う必要はない。次は、二人で並んで戦えるかもしれない。)

アステルは、リアの言葉の温かさを感じながらも、静かに次の旅立ちの準備を伝えた。

「リア、ありがとう。でも、僕はすぐにまた旅に出るよ。」

リアの笑顔が、一瞬だけ寂しげな陰りを帯びた。しかし、彼女はすぐに、騎士としての強い意志を取り戻した。

「分かったわ。アステルが万能の英雄になるまで、私はこの学校と、あなたがいない間の故郷を守るわ。必ず、連絡は入れること。私の昇格の祝いは、次に会う時までとっておくからね」

アステルは、リアの強い瞳に応えるように、力強く頷いた。彼は、この複合スキルを持つ自分の体が、次のジョブを吸収するための、最高の土台になったことを確信していた。


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