戦士スキルと【剣術:初級】
荒野の岩窟からエルドニアへの帰路、アステルは自身の身体に起こった変化を噛み締めていた。
馬車の座席に座っているだけで、昨日までの鉛のような疲労感は完全に消え、代わりに内側から湧き上がる力強い感覚が満ちていた。
彼は、背負っていたリュックの重さも、もうほとんど感じない。
「これが、【戦士】の力……!」
岩窟では封印していた知識を、アステルは再び解き放った。彼は、脳内で【戦士】のスキルツリーと、自身の他のジョブスキルを重ねていく。
スキルリスト:
• 【生活魔法:浄水】(知識系)
• 【隠密:Lv3】(盗賊系 / AGI依存)
• 【剣術:初級】(戦士系 / STR依存)
• 【暗号解析:初級】(知識系)
(【剣術】は、ただ振るだけじゃない。STRが向上した今、知識と組み合わせることで、その威力を最大限に引き出すことができるはずだ!)
肉体の無力さを克服したことで、知識に対する恐怖がなくなり、純粋な知的好奇心と、能力を最適化したいという喜びが湧き上がっていた。
学校に戻る前に、アステルは近くの森に入り、新しいスキルを試すことにした。森の空気は、岩窟の乾燥した匂いとは違い、湿った土と青々とした葉の匂いが心地よい。
彼は、バルトから譲り受けた木剣を構えた。
試み1、単純な力(STR)
「まずは、力任せに!」
アステルは、習得したSTR(力)を全開にして木剣を振るった。「ブオン!」と木剣が風を切る、鋭い音が響く。その一撃は、訓練用の立ち木に深く食い込んだ。
(すごい威力だ。でも、次の攻撃に移るまでが遅い。これでは素早い魔物には勝てない)
試み2、知識と盗賊の融合(AGI + 剣術)
次に、彼は【盗賊】のAGI(敏捷性)と【隠密】の技術を組み合わせた。
彼は、地面の感触を足裏で探り、音を立てずに素早く踏み込みながら、木剣を振るった。剣は、高速で二度、三度と立ち木を浅く削った。
(これは使える!敵に気づかれずに接近し、高速で急所を狙う。リアのように正面から戦うだけでなく、奇襲で致命傷を与えられる!)
昔、村で遊んでいた際、リアが「アステルは隠れるのが得意だから、逃げるのは任せてね」と言った。その得意な隠密が、今、戦闘に直結している。
万能の道、「複合スキル」の発見
アステルは、立ち止まり、深く考察した。
「【戦士】は防御が固い。しかし、【盗賊】は紙装甲。どうすれば、この二つを融合できる?」
彼は、グラード先生の授業で学んだ、「ジョブシステムは、互いのスキルを干渉させる」という理論を思い出した。
アステルは、木剣を握ったまま、目を閉じた。
彼は、【剣術:初級】の剣筋と、【隠密:Lv3】の気配を消す魔力経路を、頭の中で同時に動かした。
そして、再び目を開けた瞬間、アステルは低い姿勢で、立ち木へと踏み込んだ。
木剣を振るう!その一撃は、STRによる破壊力を保ちつつも、AGIによる超低姿勢で、相手の視界から一瞬消えるような動きを伴っていた。
「ズバン!」
一撃で立ち木は半分に割れた。しかし、攻撃後のアステルの体勢は、すぐに防御に移れる安定した体勢を保っていた。
(できた!これは……【隠密剣術(仮)】だ!【戦士】の力を使いながら、【盗賊】の敏捷性と隠密性を活かし、攻撃と同時に防御態勢に入る動きだ!)
異なるジョブスキルを、理論に基づいて融合させることに成功したことで、アステルは自分の「万能」への道が、知識の力で可能であることを確信し、強い興奮と喜びを感じた。
アステルは、自分の手を見つめた。その手は、かつては血豆だらけの【村人】の手だったが、今は力強く、そして知的に動く「万能の器」へと変わりつつあった。
彼は、すぐさまグラード先生に報告するため、学校へと急いだ。次のステップは、知識と実戦の融合の結果を、先生に承認してもらうことだった。




