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泣き虫村人のレベルアップ冒険譚  作者: 砂糖雨


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2/25

【村人】の役割 役立たずと蔑まれて

アステルがリアに手を引かれながら、村の広場に戻ってくると、数人の村の大人たちが厳しい顔で彼らを待っていた。

「アステル!また魔物に怯えて大声を出したそうだな」

村の自警団長を務めるゴードンが、太い腕を組みながら声を上げる。彼は【見習い戦士】としての修行を終えたばかりのリアには優しいが、アステルにはいつも厳しい。

「す、すみません、ゴードンさん……」アステルはすぐに俯き、ゴードンのブーツに泥がつかないように身を引いた。

「謝るのはリアの方だ!リア、お前はもうすぐ本格的な【見習い戦士】になるというのに、なぜあんな弱いスライム程度で騒ぐアステルに付き合ってやらねばならない?」

リアはムッとした表情で言った。「スライムだって油断できないわ。それに、アステルを放っておけないもの」

「無駄だ!」ゴードンは声を荒げた。「来月で村の子供たちは皆、正式なジョブを得る。リアは【見習い戦士】として村を守る義務がある。だがアステル、お前はどうだ?」

ゴードンはため息をつき、アステルの小さな肩を指差した。

「お前は村でも異例だ。五歳になってもジョブの才能が開花せず、【村人】のままだ。ステータスは全て『1』。戦えるはずもなく、何か生産的な作業ができるわけでもない。お前が村にできることは、騒ぎを起こさず、大人しくしていることだけだ」

その言葉は、アステルの胸を深くえぐった。役立たず。無価値。彼はただ泣くことしかできなかった。

翌日。アステルは村の畑仕事を手伝おうと試みた。村人である以上、村に貢献しなければならない、と彼なりに努力しているのだ。

しかし、全てのステータスが最低値の彼には、簡単な作業すら困難だった。

畑を耕す

力(STR)が低すぎて、鍬が地面に食い込むたびに全身が悲鳴を上げる。

水を運ぶ

体力(VIT)が低すぎて、バケツを半分運ぶだけで息切れしてしまう。

「おいアステル、そっちの畝はもういい。お前はただ座っててくれ」

農夫のピエールは優しかったが、その言葉は事実だった。アステルがいることで、かえって作業の邪魔になっているのだ。

「ご、ごめんなさい……」アステルはまた謝り、隅に座り込むしかなかった。

リアが通りかかり、心配そうに声をかける。

「アステル、大丈夫?学校までまだ時間があるわ」

「大丈夫じゃないよ、リア」アステルは地面に小枝で文字を書きながら、涙声で答えた。「僕が【村人】なのは仕方ない。でも、その【村人】としての仕事すら、僕はまともにできないんだ」

リアはそばに座り、そっとアステルの肩に触れた。

「アステルはね、力仕事じゃなくて、頭を使う仕事が向いてるわ。だって、村の誰よりも難しい本を読んでいるもの」

リアの言葉に、アステルはハッとした。

そう、彼には畑で働く力はないが、文字を読む力はあった。

それからアステルは、毎日のように村の古い集会所にある小さな蔵書室に籠もるようになった。

他の子供たちが木剣を振るう訓練に熱中する中、アステルが手に取るのは、埃をかぶった分厚い書物ばかりだ。

「『世界ジョブ理論大全』」「『古代魔導士と失われた魔法』」「『レベルとステータスの相関性について』」

それらの本は、村人や見習い戦士には難解すぎ、ほとんど読まれることのない書物だった。

アステルは、これらの本を読むことだけは、誰にも邪魔されない、自分だけの役割だと感じた。

ある日の午後、彼は「レベル」に関する記述に目を通していた。

「レベルは経験値によって上昇するが、ジョブの才能とステータスは、生まれつきの資質と、6歳時までに経験する決定的な出来事によって大きく左右される」

「決定的な出来事……」アステルはつぶやいた。彼にとっての決定的な出来事とは、常にリアに助けられることだった。

さらに読み進める。

「ジョブを保持しない【村人】は、すべてのステータスが最低値となるが、これは同時に、あらゆるジョブへの適性が開かれていることを意味する。極めて稀なケースで、特殊な条件を満たした【村人】は、単一ジョブの頂点を超える【万能ジョブ】へと進化する可能性がある」

アステルの目に、光が灯った。

「万能ジョブ……」

【村人】は無能なのではなく、まだ、何者にもなれる可能性を秘めた器なのかもしれない。

彼の心の中で、リアを守りたいという願望が、明確な目標に変わった。

力や魔法で勝てないなら、知識で勝つ。

そして、誰にも到達できない「万能」の道を探し出す。その日から、アステルの読書は、単なる逃避ではなく、未来への投資となった。


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