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泣き虫村人のレベルアップ冒険譚  作者: 砂糖雨


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リアとの約束と【戦士】への道

職業学校の長期休暇が始まった。ほとんどの生徒が故郷へ戻るか、観光地へ向かう中、アステルは寮の自室で、次の旅の準備をしていた。

彼のリュックには、前回とは違い、知識の古書と、携帯用の木剣が一緒に入っている。木剣は、リアの師匠である教官に頼み込み、戦闘ジョブの基礎練習用として譲り受けたものだ。木剣の硬質な感触が、アステルの手にずしりと重く響いた。

「まさか僕が、【戦士】の訓練をするなんてね」アステルは自嘲気味に笑った。

(【盗賊】のAGIは上がった。だが、力(STR)も体力(VIT)も、まだレベル1の【村人】と変わらない。グラード先生の言う通り、僕にとって【戦士】の基礎は、最も困難な壁だ)

【村人】時代、村の自警団の訓練を見学するたび、剣の重さに耐えられず、すぐに音を上げて逃げ帰った。あの時の「弱い自分」を克服するため、彼は最も苦手な道を選ばざるを得なかった。

その日の夕方、リアが僕の元を訪れた。彼女は私服に着替えていたが、その立ち姿には、すでに【騎士見習い】としての凛としたオーラが漂っている。

リアは、アステルのリュックと木剣を見て、尋ねた。

「アステル、本当に次の休暇も帰らないの?村に帰れば、お母さんも喜ぶのに……」

できるだけ明るく振る舞おうとして、リアは小さく笑った。

「ごめん、リア。でも、僕には時間がないんだ。君が次の学期で【騎士】に昇格するのと同じ速度で、僕も成長しなくちゃいけない。すべてのジョブの基礎を極めるために、【戦士】の力が絶対に必要だ」

彼は、リアの手に自分の手を重ね、力強く言った。

「次のジョブは【戦士】なのね。私も訓練を頑張るけど、アステルも……無理しないでね」

けれど、その声の奥には揺らぎがあった。

(アステルが私を置いて、どんどん別の世界へ行ってしまうみたいで……寂しい。しかも、その道はいつだって危険と隣り合わせで……)

不安に揺れるリアの瞳が、かすかに潤んで光を反射しているのがはっきりと見える。夕暮れの橙色がその瞳に映り込み、まるで壊れやすいガラス細工のように震えていた。彼は、思わず息を呑んだ。

言葉より先に、その視線の意味を理解してしまったからだ。「心配しないで。僕は、知識と頭脳で君のいない場所で強くなって、必ず学校に戻る。君の訓練が終わる頃には、僕も君を一人で守れる強さを手に入れて見せる」リアの寂しさを受け止めたことで、彼の「守りたい」という決意が固まり、それが次の苦行に耐える精神的な支柱となった。リアは、彼の言葉と、その手に宿る確かな決意を感じ、微笑んだ。

「分かったわ。でも約束して。絶対に、怪我をせずに帰ってきて。そして、帰ってきたら、あの古木を登った時の話を聞かせてね」

「約束するよ」

二人は強く握手を交わし、リアは故郷へ、アステルは新たな修行の地へと旅立つことになった。

リアを見送った後、アステルはグラード先生から受け取った、次の修行地を示す地図を広げた。

それは、街の遥か南、地図の端にある『荒野の岩窟』を指していた。その地図は古びており、紙は湿気を吸って少し波打っていた。

「次の師匠は、元・最凶の傭兵だ。知識を最も憎む男でもある。貴様の頭の良さは、絶対に隠せ。そして、そこで得たスキルは、私が貴様とジョブ理論を融合させるための『土台』になる」

(知識を憎む師匠か……)

アステルは、リュックに押し込んだ木剣を握りしめた。木剣のざらついた感触が、彼の手にしっかりと伝わってくる。

彼は、旅の前に【戦士】の基礎知識を復習した。

「【戦士】のレベルアップは、痛みに耐える経験(VIT)と、敵を打ち砕く意思(STR)の二つに集約される。知識はその補助にすぎない」

アステルは、自分にとって最も遠い、「痛みに耐える」という訓練が、ついに始まることを悟った。彼は、深く息を吸い込み、荒野の岩窟へ向かう馬車の鉄臭い匂いがする待合所へと足を踏み入れた。

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