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泣き虫村人のレベルアップ冒険譚  作者: 砂糖雨


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レベル1の誕生 田舎村の泣き虫

静かな朝靄が、小さなファーメン村を包み込んでいた。村はずれの畑の隅。幼い少年が、その場にうずくまって嗚咽を漏らしている。

少年アステル、五歳。体は小さく、頬には泥がついていた。彼の頭上には、大きな水滴が落ちてくるたびに、びくっと肩を震わせる。

「うう……ひっく……」

その水滴の主は、木の枝からぶら下がっていたスライムだった。わずか手のひらサイズの、最も弱い魔物。村の子供ですら石を投げれば逃げ出す程度の存在だ。しかし、アステルにとっては、それが世界で最も恐ろしい捕食者だった。

「ひっ、ひいいい……ごめんなさい、おねがい、たべないでえ!」

アステルは、スライムが自分を捕食し、ドロドロに溶かす未来を想像し、さらに大声で泣き出した。彼のステータスウィンドウが表示されていれば、そこにはこう書かれているだろう。

• 名前: アステル

職業ジョブ: 【村人】(未認定)

• レベル: 1

• 力(STR): 1

• 体力(VIT): 1

• 魔力(MAG): 1

• スキル: 【泣き叫び】(効果:周囲の敵意を引く)

すべてのステータスが最低値の「1」。まさに、この世界で最も弱い存在だった。

「アステル!」

甲高いが力強い声が、畑の向こうから響いた。

駆け寄ってきたのは、アステルと同じ歳の少女、リアだ。彼女は太陽のような明るい色の髪をポニーテールに結び、腰には木製の短い剣を差している。

リアは泥だらけで泣き崩れるアステルを一瞥すると、すぐに状況を理解した。

「またスライムに泣かされてるの!ほら、いつものやつでしょう?」

リアは呆れた顔をしたが、すぐにその表情は引き締まった。彼女はアステルの前に立つと、小さな木剣を構えた。

「大丈夫よ、アステル。リアがついてるから」

リアのステータスウィンドウが表示されていれば、こう書かれているはずだ。

名前: リア

職業ジョブ: 【見習い戦士】(未認定)

• レベル: 3

• 力(STR): 4

• 体力(VIT): 3

• 魔力(MAG): 0

• スキル: 【木剣の構え】

スライムは、リアの木剣から発せられるわずかな敵意を感じ、プルプルと震え始めた。

「ほいっ!」

リアは勇敢にもスライムに駆け寄り、木剣の柄でゴンッと一撃。戦闘スキルではなく、純粋な突撃だった。スライムは悲鳴のような音を上げ、枝からポトリと落ち、そのまま畑の土の中に隠れてしまった。

「……逃げたわよ」リアはそう言って、木剣を鞘に戻した。

アステルはまだ震えながらも、顔を上げてリアを見た。彼の瞳には、リアの背中が、光を放つ英雄のように映っていた。

「リア……ありがとう」

「もう、泣きすぎよ。村の大人たちにまた怒られちゃうわよ」リアはため息をつきながらも、そっとアステルの手を取った。彼女の手は、泥だらけのアステルの手よりもずっと温かく、力強かった。

手を引かれて村へと戻る途中、アステルは小さな声でつぶやいた。

「ねぇ、どうして、リアはスライム怖くないの?」

リアは立ち止まり、アステルの目を見つめた。

「怖くないわけないでしょう。レベル1のスライムだって、油断したら危ないんだから」

彼女はそう言うと、アステルの小さな頭を撫でた。

「でもね、アステルが泣き虫で、私が守らないとすぐに泣いちゃうから。私が怖がっている暇があったら、さっさと魔物を追い払わないと。そうでしょ?」

その言葉は、アステルの胸に深く突き刺さった。いつも自分は守られるばかり。リアは、自分のせいでいつも危険な目に遭っている。

「僕、強くなるよ」アステルは、きつくリアの手を握りしめた。「レベルを上げて、魔法を覚えて、いつかリアを守れるくらい強くなる!」

「ええ。楽しみに待ってるわ。」

リアは微笑み、アステルを見つめながら笑った。

その夜、アステルは決意した。たとえ今は最弱の【村人】でも、必ず強くなる。そして、リアのように誰かを守れる英雄になると。


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