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コンダクターはコマンダー  作者: 双鶴


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3/7

2話

午前10時。

リハーサル開始から1時間。

ベートーヴェン第7交響曲は、すでに3度爆死していた。

テンポは崩壊、音量は暴走、指揮者は過労。

だが、真の戦いはここからだった。


「ちょっと、今日のテンポ、速すぎません?」

「いや、むしろ遅い。俺の感情に合ってない」

「てか、昨日の飲み会で告白されたんですけど、どうすればいいですか?」


——内乱、勃発。


指揮者・陣内奏一は、譜面台の海を見渡す。

そこには、音楽ではなく、感情の地雷原が広がっていた。


混乱の火種たちは、


神崎雷人ティンパニ:自称・天才。リズムは魂、テンポは無視。

白石美月ヴァイオリン:恋愛中。昨日、トランペットの男に告白された。演奏中にLINEを確認する癖あり。

佐藤翔トランペット:就活中。ESエントリーシートと譜面を間違えて持ってきた。

藤堂遥フルート:空気を読む天才。だが、読んだ空気に流されてテンポが毎回変わる。

• ヴィオラ隊:沈黙の抗議。存在感が薄いことに怒っている。演奏中に「俺たち、必要?」と囁く。



「昨日の告白、断った方がいいと思いますか?」

「え、俺のこと好きだったの?」

「いや、違う。あれは酔ってただけ」

「じゃあ、なんで俺のソロの時に目を見てたの?」


——演奏中、恋愛相談が飛び交う。

音符は感情に飲まれ、テンポは崩壊。

指揮者は、譜面ではなく人間関係を調整する羽目に。


「お前ら、これは戦争だ。感情は置いてこい。

音楽は、命令だ。恋愛は、後回しだ。

今は、ベートーヴェンの魂を撃ち込む時間だッ!!」


だが、神崎雷人が立ち上がる。


「俺は、音楽に命令されたくない。

俺のティンパニは、俺の怒りで鳴るんだ」


——反乱軍、再び出現。


彼は、ティンパニを叩く。

その音は、まるで空爆。

テンポ無視、音量MAX、感情フルスロットル。


「雷人、やめて!譜面が燃えるッ!」

「いや、燃えてるのは俺の魂だッ!!」


指揮者・陣内は、静かに指揮棒を握り直す。

そして、言った。


「ならば、俺がその魂を指揮してやる。

お前の怒りを、音楽に変えてみせる。

俺はコンダクター。だが、同時にコマンダーだ。

この戦場をまとめるのは、俺しかいない」


そして、指揮棒が空を裂く。

雷人のティンパニが、テンポに乗る。

美月のヴァイオリンが、感情を抑える。

翔のトランペットが、就活を忘れる。

遥のフルートが、空気ではなく音楽を読む。

ヴィオラ隊が、沈黙を破る。


——音楽が、戦場を制した。


そして、陣内は思う。


「俺たちは、音楽で戦ってる。

だが、同時に音楽で救われてる。

この戦場は、俺たちの青春だ」

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