Lesson4 ミイ曰く
『パチンコ・マン』に掴まれた吸血鬼の腕から白煙があがる。
「ぎ、ぎええぇー!」
悲鳴も上がる。
そう、『パチンコ・マン』は単なる近接パワー型の像ではなく、二つの特殊能力を持っていた。そのうちの一つは、独特の波長!
ラッパーという『陽の者』を模した生命エネルギー体は太陽と同じ波長を持っており、吸血鬼にとって銀の武器すら上回る、非常に有効な対抗手段となっていたのだ。
吸血鬼は強引に腕をちぎり、ミイから距離をとった。ちぎれた腕の再生は遅い。
しかし、敵もさるもの。人型のままだと不利だと悟った吸血鬼はミイを翻弄すべく、無数の蝙蝠に化けて襲いかかってきた。ペルラも翻弄された戦術だ。
しかし、この状況に限りそれは悪手だった。何故ならーー
「バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリィ!」
「「「「「ギヒィィー!」」」」
裂帛の気合いの声と共に、『パチンコ・マン』が掌から銀の球をじゃんじゃん射出して攻撃!
そう、それは『パチンコ・マン』のもう一つの能力。それは『手のひらから銀玉を射出する力』!
しかも、ミイが元々修得していた技術により球には強力な『回転』が加えられており、威力が倍増されていた。それを散弾銃の様にぶっ放し、全ての蝙蝠を撃ち落とす。それが決定打となり、ここにポールと呼ばれた『純血種』は消滅した。
「す、凄い……」
ペルラは目の前の光景に圧倒されていた。
今夜の戦闘前には『二級』止まりだったはずのミイが『パチンコ・マン』を発現したから、ではない。
才能あるものが命の危機に瀕した際に新しい能力を発現する事は珍しいものの前例がある。ペルラもそうだった。
しかし、『発現したての能力を完全に掌握』し、『元々持っていた独自の技術と融合』させたなどと言う話は聞いたことがない。それを成せるミイは今までどれだけの経験と鍛錬を積んできたのか……若き天才のペルラにとって珍しい未知の領域であった。
「状況を説明して頂戴。」
惚けていたペルラはミイの声でハッと我にかえる。
「先程きいた話の流れからすると、まだポリンキーとかいう強敵がいるのかしら?」
「そ、そうです。『始祖』がいました、結界を壊そうとしています。早く止めないと!」
「ピンチの時ほど落ち着いて。ほら、1、2、3、5、7、9……」
ちゃめっけたっぷりにミイに諭され、ペルラは自分が平常心を失っていたことに気づいた。
「ありがとうございます。あと、1と9は素数じゃありませんよ……」
「よし、落ち着いたわね。それじゃあ、迅速に情報を擦り合わせて、勝ち筋を探しましょう。」
そして、ミイはペルラに秘策を授けた。孔子の言葉を引用すると、それはすなわちこういうこと。
勝利というのは
戦う前に全て、すでに決定されている!!
To be continued...