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第95話 帰ってきたユリの花
魔王の娘であり、分身でもあるエクシー。
そして、その悠久の命を分け与えられた、元勇者のユウト。
魔王の娘と元勇者の夫という、異色の夫婦は、入学式が終わった集会室を後にしていた。
暖かな陽の光。
「ユウトさん、そろそろどう思うか、教えていただけ無いと……」
従者の"制服"を着たエクシー。
「あぁ……綺麗だよ」
顔が赤くなるのが判る。
60年以上か……見飽きない美貌。
魔王の娘にして、分身、エクシー。
並んで歩くだけで、入学生の視線を一手に集めていた。
「あの、すみません」
突然声をかけてくる女性。
「え……」
懐かしい響き。
胸の奥をくすぐられ、思わず振り向いた。
女性の髪がフンワリと風になびく。
揺れるスカート。
あぁ……彼女を見て、確信した。
理由もなく、涙がこみあげてくる。
「ユウトさんでよろしいですよね?」
うなづくおれ。
わかるよ、名乗らなくても判る。
「初めまして、リリスの孫。
イーストテリアの第四王女。
リリッシュ・イーストと申します」
涙が止まらなかった。
あの日、旅だったユリの花と瓜二つの女性が嬉しそうに微笑んでいた。