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永遠 ♾️ バディ無双 〜爆弾娘と不器用勇者の旅〜  作者: アキなつき
第五部 無双のスローライフ〜人助けと共に〜
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第94話 残されたミラベル


ファミリーの夕方の食堂は、ダンジョン帰りの冒険者達で、ごった返していた。

食堂のすみの円形テーブルで、お茶を飲む白髪の人物。


ミラベル。


時々、会釈していく人達。

彼女がかつてのファミリー長の妻だと知っている人達。

「ここ?いい?」

エクシーが、ミラベルの前に座った。

「あぁ、エクシーか」

香水の匂いで気付いたようだ。


何も話さない二人。


静かにお茶をすする。


「ユウトさんはどうだい?」

そっと、ミラベルが聞いた。

「頑張っては、いるけど、中々ね。

カイラの件が…きつかったみたい」

その死から、ちょうど一年が経とうとしていた。


ーカイラ最後の日


「ユウくん、エクシー。

ありがとう。ボクしあわせ……」


噛み締めるようにも見えた。

先にいくのを謝るようにも見えた。

小さな会釈。


創業メンバーのジジ。

マルスの五人の奥さん達。

ミノック。

風の噂で亡くなった事を聞いた、リリス、ダン。

そして、カイラが亡くなる数年前に亡くなったマルネロ。

そして、カイラが逝ってから、もう一年が経つ。


「エクシー、おれ、もがいているんだが。中々、ダメだ」


常に心の中で、歯をくいしばっているが。

気分が前に向かないらしい。


悠久の時を生きるユウト。

残る彼には、周りの人の死が重いようだ。


「ひとりぼっち、寂しくないの?」


と常に聞かれている。

呪いのように。

ボケて忘れる事も出来ない悲しみ。


ミラベルはお茶のカップを静かに置いた。

一息。

「エクシーがいるってのに何してるんだか……うちの大将は」

その一言に、眉間にシワを寄せて口角をあげて、エクシーはうなづいた。


ファミリー長室。

初代はユウトが、今はミラベルとマルネロの孫、リオネルが座っていた。


ここの暖かさは創業時から、全く変わっていなかった。


「エクシーさん、聞いてくれ」

リオネルが懇願している。


「うちの婆さん、貴族の『デュランダルト学園』への入学を認めてくれないんだ」

「あたしゃ、貴族は嫌いさ」

変わってないなと、エクシーは心の中でクスっと笑う。


「そうは言っても、貴族の中にはいい人もいれば、悪いやつもいる。

しかも、依頼してきてるのは、あの二人の孫だよ」

「ふー、わかったよ。ただ、わたしゃ貴族の責任を忘れて、ただ、威張ったり、贅沢するやつは大っ嫌いさ」

「そういう、貴族が入らないように、ちゃんと面接するさ」


ファミリー室にお茶の香りが静かに漂う。


「まぁ、じゃあ……"監視役"にうちの大将に出てもらうか?」

「え……大将って、お年玉おじさん?」

「あぁ……ちょうどいいじゃないか。

美少年入学生として、話題になるよ。

エクシーも大将の従者として、一緒に入ればいい。

貴族は従者を連れているもんだろ」

エクシーは笑っていた。

何年ぶりの制服だろう?

あれ、制服って……デュランダルト学園には、無い。


「ミラベル、一つ提案があるんだけど……」

「なんだい?」

「もちろん、学園内で貴族が威張るのは、ダメよね?」

「ああ……もちろんだ」

「じゃ、学園内は身分は関係ないって、規則でいいのかな?」

「そうだね」

「じゃ、学園内では貴族も平民も同じ服を着るのはどう?」

「……うん……ありだね!」

「それに"制服"って名前をつける」

「わかったよ、良かったら、制服を選ぶのを手伝ってくれないかい?」


こうして、世界に“制服”が誕生した。


そして“制服”制度を貴族たちに通知するため、彼らの入学は三年間遅れた。


ユウトとエクシー、悠久の二人を残して……。


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