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永遠 ♾️ バディ無双 〜爆弾娘と不器用勇者の旅〜  作者: アキなつき
第五部 無双のスローライフ〜人助けと共に〜
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第92話 まずは……過程から


季節外れの雨、冷たい空気。

ファミリー長室。

書類仕事をエクシーとやっていた。


ノックの音。


「ユウトさん、ちょっと良いかな?」

マルネロと、後ろからミラベル。


その目に、はっきりとした闘志が宿っていた。


おれが言った。

"できっこ無いを超えてみろ!"

そこから、1週間。


「あぁ……答えは見つかったか?」


うなづくマルネロ。

はぇーよ。ほとばしる才能よ。


「じゃあ、お聞きしましょう?!」


テーブルにマルネロとミラベルを通して、おれはエクシーと並んで目の前に座った。



ゴクっとお茶を一口飲むマルネロ。

口を開いた。


「僕の"できっこ無い"は……。

貧乏を無くすこと」


上目遣い。


「あぁ、それをどうやって超える?」


「読み書き、計算をみんなに教える」


「そうだな……それも一つの答えだ」

少しショックを受けているマルネロ。


すかさずフォローする。


「いや、答えは何通りかある。

そう……おれは思ってる。

全部を答えとして用意する必要は無い」


少し空気がほぐれる。


「だから、貧乏を無くす。

――それで、貧乏を無くすために、読み書きと計算を教える。

うん、いいじゃないか?!」


顔に笑顔が浮かぶ。


「どうして、そう思ったんだ?」

今後の為に、過程も聞いておきたい。


……テーブルの上を眺めるマルネロ。

ミラベルが。バシン!と。

背中を叩いた。


マルネロの背筋が伸びた。


「この歳で、親に聞くなんて恥ずかしいけど、母さん達に聞いたんだ」


少し言い淀む。


「ユウトさんも……ご存知の通り……母さん達は貧乏だったからさ」


うなづくおれ。

マルスさんの5人の奥さんは、みんな貧乏で困ってた、シングルマザー。


「読み書き、計算ができれば、騙されなかった……最初の夫も戦争にいかずに済んだ……

商売を始められたって、まとめると読み書き計算にたどり着いたんだ」


うなづくおれ。過程も悪くない。


「じゃ、次の質問だ。

読み書き計算を教える方法は?」

具体的に考えれているか?


「ファミリーに、学ぶ施設を作って、貧乏になりそうな人を集める」

おお、学園計画か?


「その費用は?その子達の滞在費は?」


「結局、今やってることと同じだったんだ」


苦笑いするマルネロ。


「セレナ母さんの革細工。

シャイン母さんの農業。

フローラ母さんの香水作り。

ローズ母さんのワイン作り」


負けを認めるような一息。


「そして、ベルナ母さんの孤児院と同じ教育システム」


「みんな、ユウトさんが作ったシステムね」

ミラベルが笑った。


「答えは、もうあった。提示されてた」

悔しそうなマルネロ。


そとの雨風の音は収まってきていた。



「まぁ……おれが作ったシステムと少し違う。だから、それはマルネロの答えさ」


おれがやってきた本質を認めてもらえて嬉しくなる。


「おれは、“貧困に落ちた人”を救う仕組みを作った。

でもな、マルネロ――お前の計画は"貧困に落ちる前に学ばせる"」


「……はい」


「それがもう、大志が違う。

お前のほうが、はるかに立派だよ」


マルネロの目が大きく見開かれる。


「……いままでやってたのは、人に言われてやってただけ。

本質的に、自分で選んでなかったんだ。

今回の事で、自分で選んで、おれを超えていくんだ」


「まだ、学ぶ場所できてないけどね……」

苦笑いするマルネロ。


そう、コイツは構想と、実践に壁があることをちゃんと理解している。

だから、間違い無い。


「ひとつだけ、アドバイスだ。

読み書き計算は必須スキルだ」


目を見て話す。


「他と混同するな。

むしろ、読み書き計算さえできれば、どこに行っても食いっぱぐれない。ただな――学びながら金にはならん」


理解できてるな?よしよし。


「逆に、革細工ができても、ワイン作りができても、読み書き計算ができなきゃ、どこかで必ず詰む」


静まり返る二人。


「読み書き計算と、仕事のスキルをごっちゃにしないで、両方の力をつける場所になればいいんじゃ無いか?」


納得して、晴れやかな顔をする二人。


これ、マルネロに課した、卒業試験だったんだが。答えを出しちゃったか?


外の雨風は止み、晴れ間が見えだした。


ファミリーに、一つの“時代の終わり”が、静かに訪れようとしていた。




一週間後の創業メンバー会。


『学び舎構想』立ち上げと共に、おれからマルネロへリーダー交代を発表。


ミラベルの補佐、おれとエクシーの相談役を条件に、リーダー交代は静かに受け入れられた。



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