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永遠 ♾️ バディ無双 〜爆弾娘と不器用勇者の旅〜  作者: アキなつき
第五部 無双のスローライフ〜人助けと共に〜
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第91話 マルネロの外


漂う木の樽の匂い。

お茶の香り。


「あぁ……問題無いよ。

今年もいいワインになりそうさ」


マグカップを持って、すーっと笑うローズさん。


「よかった」

「ユウ坊とエクシーに真っ先に飲ませてあげるよ」

その顔に。

この人、上品に見えて、結構、下世話だよなーー心の中で笑う。


ノックの音。

扉が開いた。


「ユウトさん、いる?」

マルネロ。

「おぅ……どうした?」

「ちょっと、相談に乗ってもらいたくて」




薄暗く、しんみりと冷たい空気。

ワインの貯蔵庫、樽が並ぶ。

幕が下りた舞台、そんな静けさ。


「おぅ?それでどうした?」

「あのさ……外に出たいと思ってるんだ」


顔を伏せるマルネロ。


「そうか……マルスさんにも、お前の希望を優先してくれって言われてたからな」


「うん……たださ。

ミラさんの事を想うと……どうしたらいいか、判らなくて」


なるほどな。

二人の交際は前から知っていた。


「結婚したい気持ちもあるけど。

でも、まだ挑戦したい気持ちもあるし」


彼の言葉に心の中でうなずく。


「結婚と、挑戦な」


真剣だから悩むんだな。

少し、自分の頭をクリアにするように、斜め下を向く。

彼の未来、二人の未来。


「マルネロ……普通な、選択肢にはメリットとデメリットがある。

メリットだけ受け取りたいってのは、

まぁ、"わがまま"だ」


重く言わないように、軽く笑顔を作る。


顔色が曇るマルネロ。


「だから、悩んでる時は、わがままになってないか、考える必要がある……」


うつむくマルネロ。


「ただ、今回は……まぁ、ラッキーだ」


顔が少し明るくなる。


「外ってのは、心じゃないか?」

キョトンとするマルネロ。

「できっこ無いって、決めてる心じゃないか?」

幕が下りた舞台におれの小さな一言。


「“できっこない”を超えてみろ。

お前が本当に――やりたいことは、なんだ?」




食堂。

「……って、ユウトさんに言われちゃってさ」

顔にポジティブが溢れているマルネロ。


自然と口角が上がる。

「ふふふ、それで、マルネロは何をやりたいの?」


「それが判って無いんだ」

笑うマルネロ。


「それじゃ、お姉さんは外に出るのも、OK出来ません!」

からかうような口調になってしまう。


「判ってるよ、それくらい。

ミラさんから見て、僕はどうしたらいいと思う?」


「うん……マルネロは、マルスさんみたいに、とにかく稼ぎたいって感じゃないよね?」


思い出す、マルネロの父、世界ナンバーワン商人。稀代の天才。


「そうだけど、僕だって、親分並みに稼げるよ」

「判ってるわ」

そう、この子は父を超える、あふれ出す商才の持ち主。


豪胆さ、ピカ一な交渉力、地道さ――。

それに、まだ二十一で、人をまとめられる懐の深さ。


世界一の商人の"忘形見"

それがマルネロ。


「僕は、困っている人をほって置けないんだよね」


少し違う、違和感……なんだろぅ。


「違うと思う。

マルネロは貧乏な人には優しいのよ」


「貧乏……」


私には答えがわかった。


「貧乏を無くす……できっこない」


心に響く、ユウトさんの声。

(それを超えろ!!)


「貧乏を無くす……できっこないを超える、

おれは貧乏を無くしたい!!」


特大の闘志が彼に灯った。

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