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第88話 本当に強いのは？
シルフィンがファミリーにきて、2年。
イーストテリアにリリスが旅立った次の日。
カイラは寝室で、ボーっと眺めていた。
地下に作られた寝室は、朝の光が入ってこない。時が止まったような、静かさ。
魔力灯の灯り。でも、怖くない。
落ち着く。いつもの部屋のにおい。
空いてしまった、反対側のベット。
思い出す……。
「お姉ちゃん、トイレ一緒に行ってくれない？」
恥ずかしそうなリリスの顔。
「え……っ？お姉ちゃん、娼館辞めるの？」
嬉しそうなリリスの顔。
あの娘は強くなった。健気でたくましく。
フっ。思わず口角があがる。皮肉なものだ。
強くなったのは私だった。
けだるい朝が減った。
考え込まなくなった。
そして……。
男の人に抱かれなくても眠れるようになった。
「カイラ〜、そろそろ行くよ？」
ベルママ（ベルナ）の声。
相互助の部屋（孤児院）の仕事。
現実に戻される。
がんばろうね。
あの娘はきっと、大丈夫。強いユリの花。
私もがんばるね。
異国の地にいる、妹にそっと想いを送った。
