表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永遠 ♾️ バディ無双 〜爆弾娘と不器用勇者の旅〜  作者: アキなつき
第五部 無双のスローライフ〜人助けと共に〜
84/96

第83話 元勇者は第二部ぶりに戦う


ワイナリーから続く、石積みの道を歩く。師匠のミノックと、作ったっけ。


打撃音と掛け声が聞こえる。


「ここは……」

ルークの声が少し明るくなる。

「ああ、訓練場だ」

校庭ぐらいの、土の床。

ダンジョンの土で作ったグラウンド。


「あれは?」

王様も興味津々だ。

「うちは、人と戦うより、魔獣とたたかうことが、多いから……」

猪の頭をつけた槍で低空で攻撃して、それを迎撃する訓練をやっていた。


そう……冒険者はとかく、腰を落としすぎて、動きが重く見える傾向にある。

訓練をまとめて見ている、A級冒険者のジジさんに手で挨拶する。


「はんっ、所詮は冒険者か……軍人には敵わんな」

デカい声。ルークが鼻で笑いつつ、目が蔑んだ目になる。

その一言に、白髪のA級冒険者の目が細くなる。ジジさん、キレるなよ。


「ふふふ、鍋の護衛が、イキがるじゃない?」

あ、うちの奥さんがキレた。

おれは思わず、伏目がちで王様の顔を見る。


3年前に、王様の拉致を、鍋の貸し借りに例えて、返還契約を結んだ。その"例え”を持ち出し、奥さんが煽り出した。


「やめい!!」

王様の声が響く。

訓練生もこちらを見ている。


「ユウト殿、ルークと一度、立ち会ってもらえんか?」

……まぁ、こうなるよな。

ルークの顔を見る。ニヤニヤ笑っている。

訓練生が顔を見合わせている。彼等とは時々、手合わせしているからな。


「王様、私言いましたよね?

この人の五年間、魔王を殺すために頑張っていたと。それを人類は知りもしない、感謝もしないと……」

声は淡々と静かに、でもしっかりと聞こえる。


「しかも、それを知っても敬意を払わない、身の程をわきまえないカス」

冷たい声。

身体が冷えた気がするのは、高原だからじゃない。


「ふん、魔王を殺したのは、皇帝ネロだろ? そいつ(ユウト)が嘘ついてるだけじゃないのか?」

空気を読まずに、ルークの口角があがる。


「その、カス皇帝がどうなったか、知らないのですか?」

エクシーが、ゆっくりと自分の首のところをスーっと、親指で横一直線でなぞる。


それを見た、王様の顔はみるみる青くなる。そう、おれの奥さんは『皇帝殺し』。

その圧がおれにまで降りてくる。


「ふん、イーストテリアの"剣聖"と呼ばれる、おれを随分と舐めてくれるじゃねぇか?」

伊達に王様の護衛してないか?


「まぁ、いいや。ルーク君、やろう?」



見た目は美少年。

中身はオッさん。


世界を救っても、誰も感謝しない。

謙虚でいたら、舐められる。


キャンキャン吠えるな。


クソな城壁ルークなら、理屈も説教もいらねぇ。

殴って、壊す。


忘れられた勇者、ユウト。

今、再び──暴れ出す。


フッ。


「魔王に臆病風吹かしてた剣聖さまが、

いったい、どれほどのものか、見てやるぜ!!」


満を持して。

発進!




ーー入道雲が影を作る、グランドに立った。

目の前には木剣を持ったルーク。


「本当に素手でいいのか?」

ルークの声にイラつき。

「別に舐めてないけど、持ってるとやりづらくてな、ピーキーなんだよ」


間に立つジジがおれら二人の顔を見て、うなづく。「双方、いいか?」


「では、はじ……」


スっと、彼の懐へ。

両手を添えて。


ドンッ!!


彼の身体がふっ飛ぶ。


糸の切れた操り人形のように倒れるルーク。

やべ、やり過ぎたか??


でも、上手くできたな。無重力魔法で浮いて、彼の懐に瞬間移動。

そして、両手で押す瞬間に、自分をめちゃくちゃ重くして、ドンっ!!


介抱されている彼には申し訳ないが、フリーキックを決めたサッカー少年のように喜んでしまっていた。


ーー介抱されたルーク、王様、ジジ、エクシー、おれの六人で、ファミリーの拠点の入り口を通り抜け、2階へ。


「ルーク殿……」

ジジの静かな芯の通った声。

振り返るルーク。

「ふて腐れるなよ、強さは、この時ぞよ」

しっかり目を見て話す、ジジ。

さすがに、一度、右腕を無くしている冒険者。厳しくて、優しいな。


「剣聖だろ?!立ち上がるぐらい自分で立ち上がれよ」

負けたことも忘れて、食いしばって、こちらを見てきた。

……怒りもエネルギーさ、頑張れよ。


マルスさんの奥さん、シャインさんとローズさんに続いて……?


ドアをノックして、扉を開く。

甘い香り。


ふんわりと、笑顔で振り返る女性。

フローラさんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ