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永遠 ♾️ バディ無双 〜爆弾娘と不器用勇者の旅〜  作者: アキなつき
第五部 無双のスローライフ〜人助けと共に〜
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第81話 幸せのお裾分け


寄り添う杖の食堂は、懐かしくて、騒がしい顔ぶれでワチャワチャしていた。


「ユウ坊、結局、エクシーちゃんはドレス作らせてくれなかったんだから」

ベルナさんの声が響く。

「あぁ、色々と忙しくて、ついつい後回しになっちゃってるな。スマンな」

何だろう……おれは彼女に式を挙げよう?って、勧めているんだが。


「いいんですよ、ベルナさん。

……私とこの人と並んだら、新婦と子供にしか、見えないので」

エクシーが、結構ひどいことを笑いながら言う。

おおかた、無料で作ってもらえるので、遠慮したんだろう。


「でも、いいのか??

ここに滞在するって事は、何かしらの仕事をしてもらう事になっちゃう」

「ふふふ……まだまだ、ユウ坊に心配してもらう歳じゃないよ」

ローズさんが、色っぽく笑う。

「そう、働くのは好きだから」

可憐で天然なのに、一二を争うぐらい、仕事ができるフローラさん。


「ね、頑張るよ」

ムードメーカーなシャインさん。

「五人バラバラで仕事しようって、話が上がってるの」

マルネロの実のお母さん、セレナさん。

一番歳下なのに……この落ち着き。


「ユウトさん、鼻の下が伸びてますよ?」

エクシーが笑う。

「……え?そうか?」

そう言われると、なんか意識しちゃうじゃねーか。もう、やめてくれ。


扉が開いて、マルス、マルネロ親子がきた。

「お?到着したな……長い間、おつかれだったな」

お店のことだろうな。いい店だったよな。

「これからは、親分と一緒だよ」

ベルナさんの言葉に一斉にうなずく五人。

「母さんたち、おつかれさま」

マルネロも五人に言う。ちゃんとセレナさん以外も母親よびしないと、怖いらしい。

お茶をすすりながら、五人のかしまし娘具合を眺めていると、カイラとリリスがやってくる。


事前に話を聞いていた、おれとエクシーはそっと席を外した。



マルスと五人の奥さん、マルネロの前に座るカイラとリリス。

「奥さん達、お久しぶりです。マリ姉の結婚式以来ですね」


カイラは外いきの顔を浮かべてスッと頭を下げる。


あの日、沢山おしゃべりをして、マルスとはやましい関係じゃないとわかってもらえたと思っていた。

ただ、好きか嫌いかで言えば、性欲が絡まない好き。

どうしたんだろ……。


「カイラちゃん、わしの娘にならんか?」

唐突な一言。

食堂が沈黙に包まれる。


五人の奥さんの顔を見るカイラ。柔らかな微笑み。

貰ったことの無いクリスマスプレゼントを貰う子供の顔つきに変わるカイラ。

「いいの……?」

おそるおそる。


「ああ……一番下のマルネロが、成人して出ていったろ、寂しくてね」

ローズさんの言葉に、心の中で笑う。

(ボク、マルネロより7〜8個年上なのにね)


「リリスちゃんも娘にならない?」

友達になってくれない?ぐらいの気やすさで声をかけてくれるフローラ。


リリスの顔に戸惑いが浮かぶ。

ただ、嫌悪感は見られなかった。


暖かいお茶の香りが静かに漂う。


「二つだけお願いがあります」

カイラの思いもしない発言に神妙な顔をする面々。


「一つ目、財産はいりません。私はマルセル商会のマルスさんの娘になりたい訳じゃなくて、ただのマル爺の娘になりたいんです」

普段のボク発言を消して、毅然とした態度で話すカイラ。

「二つ目、親分と呼ぶのは頑張りますけど、今まで通り、マル爺って呼んでもいいですか??」

上目遣いのカイラの発言に奥さん達も心を奪われる。


「ふふふ、私達のことを婆さん呼びしなければいいんじゃ無い?」

フローラが優しく笑う。

「ね、マルネロみたいに、ローズママって呼んでもいいよ」

「呼ばないと怒るくせに……」

苦笑いのマルネロ。


「……よろしくお願いします」

頭を下げるカイラ。

今まで、お客さんに貰ったプレゼントより……欲しかった。家族……。


「リリスちゃんはどうじゃ?」

「私は……」

一度、小さく膝を見た。

まだ、母親を亡くして、そこまでの時間は経っていない。

いいのだろうか、自分が不安だからと甘えてしまって。

戸惑いが漂う。


「私だけ、幸せになっていいんですか?」

小さく、顔を上げた。


「うーん、そうじゃな。幸せになれるか、なれないかは君次第じゃよ」

突き放すような一言なのに、その一言は大地に張る根のようにどっしりしていた。


「さっきも言ったけど、子供がみんな出ていっちゃって寂しいの」

リリスの不安を取り除くようにさっぱりと笑う、シャイン。


「そうじゃのぉ……少しでもありがたいと思ってくれるのなら……」

ゆっくりとお茶を飲むマルス。

「まずは君を幸せにしてあげて、そのお裾分けを誰かにしてくれないかの?……」


マルスを女手ひとつで自分を育ててくれた母に、あの時もっと何かできていたら──


母の死への想いの続きとして、差し出した。


「幸せのお裾分け」だった。


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