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永遠 ♾️ バディ無双 〜爆弾娘と不器用勇者の旅〜  作者: アキなつき
第五部 無双のスローライフ〜人助けと共に〜
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第79話 嫌なやつは助けないのか?


次の日、おれはフレアを最上階にある、ファミリー長室に呼び出した。


組織をまとめるって事はイヤなことも言わなきゃならない。

前世の課長時代を思い出す。


目の前には、いかにも、勝気な女性、フレア。


「フレアさん、確認したい」

「……なんだい?」

「うちの組織は、あんたの宿代、メシ代を全て払っているが、今のところ、あんたは鹿の解体しか、やってないよな?」

「……っふん。金払ってやってるから、言うこと聞けってか?」


「あぁ……端的に言うとそうだが、うちもキチンと取り決めしてなかった。

これからの宿代、メシ代をもらいたい」


「なんだぃ、なんだぃ、カイラが助けてくれるって言うから、来てみりゃ、アンタも国といっしょだね、金だけとって偉そうにするだけで、傷めつける」


「いつ、傷めつけた?」

「ふんっ、期待させるだけさせておいてさ、調子いいもんだよっ!?」


「……ごめん、よくわからない、いつ傷めつけたか?聞いている。な、タダ飯食って、タダで泊まらせてもらうことが、傷めつける事になるのか?」


チッ……と舌打ちして、黙るフレア。


「なぁ!!一緒に働く相手を叩くことは、舌打ちする事は傷つける事じゃないのか?」


ついつい声が大きくなる。


「そりゃ、あんたがノロノロと……」


「ノロノロしてたって? だったら、口で言えよ。あんたの方が、よっぽどひどいだろ」


「なんて口の聞き方だい!!

こっちは、ケルトン釜の女将だよ!!」


「こっちは、魔王殺しだよ!!」


顔の表情が固まるフレア。

「へっ?」


「嘘じゃない……魔王、レオンはおれが殺した」

「ふんっ、こっちは魔王より怖い事も経験してるんだい」


折れないフレア。


魔王より怖いこと?

あの旅より?


虐殺、強姦、種床、生贄、捕食。

魔物に人がゴミのように扱われ、尊厳もない。吐き気。トラウマ。血のり。臭気。


あれに比べれば、まぁ、コイツなんてマシか?


「なぁ、カイラに頼まれたから、あんたの助けになりたいとは思った。……でも、それだけじゃない。おれは、あんたの焼き物にワクワクしたんだよ」

すこし、顔を上げるフレア。


「でも、うちは寄り添う杖なんだよ。

施す杖じゃねーんだ」

「どう違うんだよ??」


「格安で取引しねーか?」

「ふん……」

「あんたは窯元を自分の手で立ち上げたい?」

「そうだね……」

「その金をおれたち、ファミリーで貸すのはどうだい?無利子で」

「結局は助けてくれないじゃないか?」

「そうか?無利子だぞ?」

日本人的感覚だとわからないかもしれないが、十日で1割も普通の世界で、無利子は破格の条件だ。


……黙っているフレア。数秒が長く感じられた。


「はいっ!!ここまでだな。

おれはカイラの顔を立てて、しばらくのタダ飯、タダ宿、そして、無利子の融資を提案した。


それに対して、アンタは気に入らないって怒るだけだろ?


多分、これ以上、ここにいても上手くいかない。今すぐ、出ていってくれ!!」


フレアは少しだけ固まっていた。

そして、決意したように何も言わずに出ていった。


窯元の立ち上げ、やってみたかった。


ただ、おれの初めの進め方が良くなかった。タダ飯、タダ宿じゃなくて、格安での融資を告げる、うちは施す杖じゃない。


後味だけが悪くなった。



ーー夜、カイラが拠点に帰ってきた。


「そんな事があったんだ、ボク、知らなかった」

「すまんな、カイラ」

「いいよ、ボクの仕事は面接までだしね……選んだボクにも責任あるし。

ただ、この前会った時、フレアが“いい土が見つかった”って、言ってたから、期待してたんだ。……目がキラキラしてた」

……マジかぁ。

「ユウくん、なんでも、上手くはいかないよ」

カイラの瞳の奥の優しさが、身に染みた。


どんな会社でも、学校でも、組織でも、合わない人はいる。

人が集まりゃもめ事は無くならない。

でも、偽善組織の長として、少しでも今後の彼女の人生がプラスになるように、"偽善"だとしても祈っていた。


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