表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永遠 ♾️ バディ無双 〜爆弾娘と不器用勇者の旅〜  作者: アキなつき
第五部 無双のスローライフ〜人助けと共に〜
76/97

第75話 力士な嫁


息を潜めて、じわじわと距離を詰める。

背中に汗がにじむ。


目の前にいるのは、特大バンサイズの巨大鹿。

毛並みはツヤツヤ、角は堂々たる大枝。

まさに――このダンジョンのぬし


…と、ソイツがこちらを向いた。

目が合う。深くて重たい視線。

――一瞬で理解した。


(ヤバっ、見つかった)


殺気が走る。


ドドドドッ!!


「え……ヤバい」

ひかれる、これはマジで――!


「大丈夫ですっ!」


エクシーが、おれの前にスッと立つ。

甘い香水の匂いが、鼻先をかすめた。

……って、香りかいでる場合じゃねぇ!!


巨大鹿が、頭を下げて突進してくる。

角が――エクシーに!


ガン!!


鈍い音。

鹿の角を、両手で掴んで受け止めている。

エクシーの両足が、ズブズブと地面にめり込んでいく。


「ドスこい!!」


野太い掛け声とともに、

そのまま角を――ねじる!!


ギギギギ……!


鹿の頭が、つられるように横倒しに。

そして。


ドシンッ!!


口が、開きっぱなしだった。

いや、むしろ脳が止まっていた。


だれか、うちの嫁が力士な件、

説明してくれ。



森の広場。

静寂。鳥のさえずり。


その真ん中に、転がる巨大鹿。


「ユウトさん、これ……仕留めたのはいいですけど……」


エクシーの言いたいことは、すぐにわかった。


「ああ、血抜き……」


吊るせない!!


あらためて見ると、でかすぎる。

駐車場2台ぶんはある。


スッ。


鹿が一瞬で消えた。

エクシーの収納魔法だ。


「まずは、傷まないように保存ですね」


「でも寝かせてさばくか? どうする?」


「滑りづらい一枚板……いえ、岩板の方がいいかもしれません」


「ミノック師匠に頼んで作ってもらうか」


「妥当ですね。石なら、滑らないでしょうし」


「それにしても……エクシーの魔法、やっぱすごいな」


「すごいじゃなくて、女の子の前に立って守ってください」


……と言いながら、後ろからギュッとバックハグされる。

おれの方が背が低いので、肩の上から腕が回された。


「どうやって止めたの?」


「魔法の名前は『ドスコイ魔法』です」


……嬉しそうだ。


「ぶっちゃけ、名前でぶりっ子してるだろ?」


「そんなふうに言われると、恥ずかしいのですが……ユウトさん、性格悪いですよ?」


顔を赤くして、ニコッと笑う。



ドスコイ魔法――

それは、重力魔法で自分の体重を鉄筋コンクリート並にし、

さらに身体強化魔法で突っ込んできた相手をガチ受け止めするという、

超・力技の複合魔法だった。


……さすが、エクシー。

度胸も、魔法も、「ドスコイ」級。



ダンジョンを出る頃には、日が傾きかけていた。

拠点近くの崖に、土魔法で大穴を空ける。

即席の貯蔵庫だ。


階段を降りる。


「ライト」

子どもでも使える生活魔法で、照明を灯す。


コンクリートの床に、真っ白な漆喰の壁。


「ヒンヤリしてて、いいな」

「湿度調整もバッチリです」

エクシーがにっこりと笑う。


ただよう秘密基地かん。

ふたりきりの貯蔵室。


「空気穴の位置もいいな」

弱い風が触れる。


あの巨大鹿が――ここを埋め尽くす。

思い浮かべる、肉の山。


「エクシー、あのサイズ、捌いた事ある?」


「……さすがに、初めてですね」


未知のサイズ、未知の肉量。

だが――


「まぁ、やってみるか」


ここを、肉でいっぱいにして。

みんなの腹を、パンパンにして。


焼肉パーティーも、ステーキ祭りも楽しみだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ