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第65話 幕はまだ降りない


「ネロを“虐殺皇”にしたのは……あなたよね?」


――死刑宣告。


そう聞こえたようで、大臣の股間は濡れていた。

失禁したようだ。

圧倒的な脅し。


「別に殺そうとしてないの」

その一言で、少し大臣の震えは止まる。


エクシーは小さく息を吐いた。

「その、ネロに私の夫は殺されかけた」

苦虫を噛み潰したような大臣。


「ね、この国のために召喚され……。

5年間、使い潰されて……。

最後は殺される」

「それは……」

「報酬??ぐらい頂いてもいいのではなくて??」


「金か……?」

その大臣の顔を見て、エクシーは小さく鼻で笑った。


「いいえ……。

あなた達、感謝してる?」


大臣の目が揺れる。


「魔王を殺してもらったこと、感謝してる?

ねぇ……」


沈黙。


「この国のために5年間頑張った。

血を流し、仲間を失い、歯を食いしばってね。

ねぇ……感謝の一言でも、誰か言った?」


夜風が窓を殴る音がした。


「そして、妻の私が、帝国民の大多数と、前第一皇妃の要望で、ネロを討った。

しかも、無償でね。

感謝してる? “ありがとう”の一言、国として言った?」


大臣にとっては、永遠とも思える時間だったろう。


「……すまなかった。

そして……感謝してる」

眉を八の字にして、目の奥には自責の念が揺れていた。


「まぁ、信じてないけどね」

エクシーはニコリともしないで言い切った。

「ぅッ」

「でも、忘れないでね。

セントラルは私達、夫婦に大恩がある。

もし、それを忘れたら……」


グッ!!

重力魔法で、大臣の股間に圧をかけた。

「国ごと、握りつぶす」


大臣は、ウンウンと涙目でうなづいた。


「すみませんでした……未来永劫、この国は大恩を忘れません……!」


土下座した。


「そんなに、かしこまらないで。

この国には友人家族もいるしね」

エクシーはニッコリと笑った。




ーーセントラルの東に位置するイーストテリア

赤い絨毯、静寂。

そんな王の間。


「グッワッハッハ!」

王の笑い声が、薄暗い天井にこだまする。


家臣たちが控えめに笑みを浮かべる。

その顔には、甘ったるい期待と浅はかな陶酔。


「ついに……ついに!

セントラルを蹂躙できる……!」


イーストテリア王の瞳がギラリと光る。


「魔王殺しの英雄 ネロが死んだ……

もう、セントラルに怖いものは無い……!」


家臣たちも、領地拡大の幻に酔いしれる。

拳を震わせる者、瞳を潤ませる者。


王は、ゆっくりと玉座から腰を上げる。

その指が、小刻みに震えていた。


「1ヶ月……!」


緊張が部屋を切り裂いた。


「1ヶ月後が、セントラルの命日だ……!」


うつむく王の肩が、震える。


「戦の準備じゃーー!!」


勝鬨のように拳を振り上げた。


家臣たちは歓声を上げ、空気が狂喜と戦慄で震えた。


欲にまみれた、彼らの毒牙が、もうすぐ口を開く。

狙われているのは──マルスとマルネロ親子の故郷。

そして、5人の奥さんたちが営む店「6番目のマルス」。

そこに毒牙が届くまで……。


あと1ヶ月!!


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