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第63話 心の絆創膏


暖かい湯気、魔力灯に揺れている。

そこそこ、デカい大浴場。


エクシーは、桶の中のお湯が揺れるのをボーっと、見ていた。


息子の仇を立ち直らせる決意をした、前第二皇妃……救われなかった。


ユラユラお湯が揺れていた。


「何が見えるのー?」

突然の声にビクッとして、振り返る。


エクシーの顔に笑みが浮かぶ。

「カイラ」



湯船にむかうエクシー。

ヘリに座るカイラ。


「ユウくん、ドレス着たエクシーとしたがってたよ?」

「……そんなこと、言ってた?」

顔が赤くなる。

「心の声が聞こえた……だってボク、面接官だよ?」

「ふふふ、そうね」

二人で笑い合う。


「最近は娼館じゃなくて、こっちにいる事が多いの?」

「うん……ほら、こっちのが寂しく無いからさ」

少し照れくさそうなカイラ。

No. 1娼婦でない……子どもみたいな一面が、少し見えた気がした。


エクシーは身体を湯船に沈める。

力が抜けるのが判る。

カイラ、誰かと喋りたくて待っていたのかな?

心の中で小さく笑った。


音がして、二人入ってきた。

ミラベルとリリスだ。


「あ、久しぶり」



ーーエクシーと、カイラがフチに座り、ミラベルとリリスが、湯船へ


「リリス、今日はお姉ちゃんと一緒に寝ない??」

カイラの言葉に、リリスがコクコクうなずく。


カイラは嬉しそうに、リリスと一緒にお風呂を出ていった。


「カイラ、自分がさびしいんだよね」

エクシーはクスっと笑う。


「でも、正直、助かるわ。

リリス、一人で寝るの怖がるのよ」

ミラベルが小さく息を吐く。

口元は笑顔だが瞳の奥に哀愁がジワる。


「ああ……カイラも一人で寝るの、苦手みたい」

かつて、カイラを拾ってくれた元No. 1娼婦のマリアさんから、エクシーはそんな話を聞いていた。


壮絶な生い立ちの者同士……夜の孤独。



「最近はジジさん達、どう?」

エクシーは一度、右腕を無くし、ユウトのセンイントポーションで腕を取り戻したA級のことが、気になって聞いた。


「順調そうよ。新人が文字を覚えなくて、私を甘く見てたんだけど、ジジさんがビシッと言ってくれて、うまくいったわ」

新人冒険者の教育も順調そうだった。


「それより驚いたのが……リリス」

ミラベルの一言が気になる。


「あの子、頭がいい。記憶力と観察力がずば抜けている」

「ああ、なるほどね」

エクシーはうなずいた。

記憶力と観察力が良すぎて、傷つきやすいのだろう。なんとなく、判る。


「エクシー、この後、少し飲まない?」

エクシーの口角が少し、あがる。

「嬉しいけど……そろそろ、旦那を甘やかしてあげたいから」

「あ、そうね……じゃ、また今度」


ミラベルがフッと笑った。

「あ〜、今日は飲めないかぁ」と肩をすくめるような、軽い名残惜しさが滲んでいた。


エクシーはお風呂を出て、ユウトのためにドレスを着てあげたい気持ちと……どうせすぐ脱ぐのにという気持ちと、葛藤していた。



エクシーに断られた、ミラベル。

それでも、物足りなさを埋めるために、食堂へ一人歩いていた。

「あら……?」

マルネロ君が一人ご飯を食べていた。

「あ……こん…ばんわ」

マルネロの頬が赤くなる。


ミラベルはエクシーが来る前の、デュランダルトNo.1美女だ。

風呂上がりのその彼女が、微笑む。


「ね……マルネロ君、お姉さんと、飲むの付き合ってくれない」

破壊力は抜群だった。



ーーユウト

本当にカレー曜日だ。

いや、忙しいのは判るが、新婚である。

でも、中年の余裕は出したい。

ったく……。

寝室の扉を明ける。


「おかえりなさい……」

花……キレイなのに色っぽい、蠱惑的な花。

ドレス姿のエクシーが、ベッドに座っていた。


花から漂う甘い香り。


疲れ切った心に、砂糖水を一気に流し込むような甘さと色気が、ガツンと効く。


「あぁゝ……おかえり」

エクシーが、艶やかに笑った。

「ふふふ……いらっしゃい?」

補食されるように両手を広げる。


魔力灯が静かに消えた。


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