第41話 未来に残るために
「こっちのメンバーを、やって欲しい“役割”と併せて、紹介するな。」
おれがまとめて紹介する。
「ジジさん、A級冒険者。
これから剣の指導と、ダンジョンでの探索指導係をお願いしたい」
ジジさんが手をあげる。
「ダン、元貴族。
孤児院での文字や計算、そして“社会”のことを教えてやってほしい」
少し困惑気味だが、嫌そうではない。
「カイラ、娼婦。
ファミリーに入りたい人の面接を頼む。悪意ある人や、利用だけする人はいらない。要はかなめだ」
カイラは笑顔を浮かべている。けれど、その奥にある感情までは読み取れない。
「ミラベル、元ギルド受付。
孤児院の運営を任せたい。文字と計算の先生も、おいおい決めよう」
ミラベルにはギルドを辞めてもらった。
さてと、今日の重めの課題、二つ目だ。
エクシーに目くばせする。うなずいた。
「実は、俺とエクシーは“別の世界”から来た」
「知ってるよ」
カイラの言葉に、場が固まる。
「ええ、そうね」ミラベルも落ち着いて返す。
あれ? 拍子抜けする。
ミラベルが言う。
「だって二人で、訳わからない言葉で喋ってるじゃない?」
マルスさんが口を開く。
「そういうことじゃないぞい」
彼には以前、日本の話をしていた。
「ユウトさんが言う“別の世界”ってのは、ここじゃない、もっと……天の裂け目とか、あの世に近い場所からじゃ」
ーー異世界の説明が終わるーー
「異世界から来た証拠……というわけじゃないけど。
エクシーは、一人で三万人分の軍を相手にできる。
世界最強の力を持ってる」
おれの言葉に、場が静まり返る。
ミラベルの顔が曇る。
「うそ……」
ジジさんも声を出す。
「強いとは思ってたが……」
エクシーは、ただ静かに微笑んでいた。どこか、申し訳なさそうに。
その静寂を破るように。
「ごめん、おれも最近、エクシーに鍛えられて、そうなっちまった」
ミラベルがゆっくり問いかける。
「だったら、二人で好きなように世直しできるじゃない?」
その声に、一瞬、空気が止まった。
「……人をたくさん殺して、未亡人を出してまでか?
戦争のときに真っ先に突っ込むのは農民兵だ。
おれとエクシーが無理やり作った国に住む人たち。それは“自立”じゃなくて、“依存”だ」
重い沈黙が落ちる。
カイラが口を開く。
「ユウくん、寂しいんだ?」
笑いながら、本質を突いてくる。
「横にいて欲しいんでしょ?」
「そうだよ、寂しいんだ。だってな、俺とエクシー、あと数百年は生きるんだ」
言いながら、自分でも笑ってしまいそうになる。
……でも、言わなければ、ファミリーにはなれない。
「つまり、小僧のために付き合えってことか?」
ジジさんの声が響く。その大きさがありがたかった。
「ああ、そうさ。おれの自己満足だ」
「その代わり、未来に連れてってやる。
ファミリーの創業メンバーはすごかったんだぞって。
こんなにでっかくなったファミリーは、世の中を良くするために頑張ってたんだって。
未来に語り継いでやるよ」
「だからさ。地道にコツコツ、でかいことやろう。
……おれたちは、数百年かけて、未来に届くことをやるんだ。
どデカい仕掛けに、一緒に乗ってくれよ」