第35話 私の寿命を♾️に分けてあげる(B面:エクシー視点)
私の名前はエクシー。
母は『漓音:リオン』っていって、元、日本人。
最終的に魔王と呼ばれた人物。
父はエルフだったらしい。
私が生まれた時には亡くなっていた。
「ママには前世があってね、でも、前の世界でも子供がいなかったの……」
それで私が生まれた。
ちょっと自己中だと思う。
私が母のお腹にいる時。
ママが私に使った魔法。
【パーソナリティインプラント】
記憶と人格の総移植。
ママの記憶と性格をお腹の中で総移植された。
「こんにちわ、エクシー、あなたは私の分身」
何故か、嫌な気はしなかった。
母の寿命は♾️。
コアを壊さなければ永遠に生きられる。
「じゃ、私の寿命は?」
ある時に母に聞いた。
「♾️÷2は幾つ??判る?」
質問で返された。
「そ、♾️」
どうやら、私は、母と同じだけ生きられるらしい。
「でもね、私の魂には呪いがかかっているの」
「呪い?」
「そそ、人の『穢れ』が溜まると、この世から間引きたい(虐殺したい)という魔王の欲望の呪い」
……確かにその記憶もちゃんとある。でも、私はそんな気分にならない。
だから、『呪い』の話だけ、嘘みたい??…と思った。
「ね、エクシー。
ずーっとこの『呪い』に苦しめられてきたの」
「わかってるよ、私はリオンだもん」
♾️の時間を共有するにつれて、私はママって呼ぶのを辞めた。だって、リオンは私だから。
「ね、エクシー。あなたには『呪い』は無いよね」
「うん、無いよ」
だって、魂の呪いは、パーソナルインプラントで引き継げないから。
「楽しく生きて。
私の『呪い』以外を受け継いで、本当に自由に生きていいから……」
「リオンはそれでいいの……寂しくないの?羨ましくないの……?」
「もういいんだ、貴方が私の希望……」
たくさん話して、たくさん時間を共有して、リオン、私のママ。私自身。
私の理解者。
「本当はエクシーが羨ましいよ。
でも、この『呪い』を消す方法がわからなかった。
他にやり方なんてわからなかった」
死ぬ数日前に、リオンはそんなふうに言っていた。
ーーそして私は気づいてしまった。
誰よりも長生きすることに。
リオンが死んでしまったら、私はひとりぼっち。
私も、誰か、悠久の時を一緒に生きる相手が欲しい。
そうだ、魔法があればいい。
そうママから受け継いだ、♾️の寿命は分けても無限大だよね??
そこで、身につけた魔法が……。
【エクセレント・ヴァイタルシフト】
自分の寿命を、分け与える魔法。
♾️÷2=♾️
ユウトさん、ユウ君、ユウちゃん。
♾️の寿命を分け与えたから、ずーっと一緒にいようね。