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永遠 ♾️ バディ無双 〜爆弾娘と不器用勇者の旅〜  作者: アキなつき
第三部 次の無双の前の静けさ
33/96

第32話 治さないという首輪


「こんなに辛かったか……」

ジジは久しぶりの感覚に独りごちた。

その日の朝、ミラベルから聞いた。

「あぁ……その子は亡くなったよ、2日前に」


ジジとて、A級冒険者だ。いや、だった。

仲間が亡くなる辛さも、何度だって経験しているのに……。


「父さんと母さんが10万エル用意してくれたんだ。おっちゃん、おれにちょうどいい装備選んでくれよ」


孫ぐらいの子供の笑顔。可愛かった。

きっと、親は息子の門出に、不作の中、なけなしのお金を工面したんだろう。


そういえば、俺の出身地のイーストテリアでも、子供はみんな金に苦労して、笑う顔は同じだったな……。


はぁ……思わずため息が出てしまう。


俺の腕が両方あれば。


あったら、あの子とは知り合わなかったかもしれないし、付き添いたいとも思わなかっただろう。


皮肉なものだ。


腕がある時は護りたいとも思わず、護りたい時には腕がない。

「ミラベルは毎年、こんなのと付き合ってるのか……」

あの時、ミラベルが怒っていた意味が、ようやく身体の芯にまで沁みる。


「また、あの子の名前を壁に刻むのか……」

その呟きが、冷えた部屋に溶けて消えた。



ーーその頃のユウトとエクシー


予感はあった。


大きな広間のど真ん中にドドーんと、黒光りする塊。学校の体育館より、デカいその塊は……。


『メガ(仮)黒曜龍』


(仮)ってなっているのは、このS級ダンジョンのラスボスまで、誰も辿り着いていないから。

中ボスが、『黒曜龍』でコンビニぐらいの大きさ。


「ハハハ……」

「どうされましたか?」

エクシーは平常運転。

いや、デカいもの見ると、乾いた笑いが出ないか?


その黒曜龍がこちらに近づいてきて。


ーー「ガー」

ブレス一閃。

トンネル大の光と熱の塊が。


スッっと消える。

魔力1億を誇るエクシーには、効かない。


「ユウトさんも、早くこれぐらいできるようになってくださいね。コツはスッですよ。スッ」

イタズラっ子のような笑顔。

できないのがわかってて、言っている。


「では、さっさと倒しちゃいますね」

中ボス戦でも使った魔法を使うのだろう。


「えっと……“グラビティ雪の女王(仮)”」

あれ、さっきは(改)なんてついてなかったぞ。



「バキン、バキン、ギギギ……!」

バキバキいって、龍が地面に沈む……。


「ビキビキビキーーーー」

龍の周りの空気が一瞬で冷える。

空気層で幕が、できているとはいえ、ここまで寒い。


崩れ落ち、音もなく砕けた。

ありのままの姿を見せる魔法は半端ない。


「キレイさっぱり粉々だな」

「ユウトさん、お目当ての品がドロップするんじゃないですか?」

「そういえば、(改)ってついてたけど、どこが(改)なんだ?」

「……?、(改)って、本気出すぞー!って時につけるんじゃないですか?」


「あ、でも別に性能が変わるわけじゃないんですよ?ただ気合が入るだけです!」

これ以上、性能上げる必要どこにある?S級だよ……。


「ユウトさんが『身体強化(改)』って、つけてて、可愛いいから、まねしちゃいました」


やっぱりギガントメガオーガを倒す時にいたよな?片腕を無くしているジジさんに申し訳無くなってきた。


その時に、まばゆい光と共に、目の前に宝箱が現れる。……ドロップ確率が高いらしいが……噂話程度だ。不安になる。


ようやく「セイントポーション」ドロップした。


ふー。左手とはいえ、不便だったんだよ。これでアイテムが偽物とか無いよな。


「おめでとうございます、そんなユウトさんにプレゼントです」


エクシーが俺の無いほうの腕にそっと両手を添えて、魔法を使う感覚がある。

いつもの魔力供与法とは違うものが流れてきて、腕の切り口が盛り上がっていく。


「使えたのか?セイントキャア?」

「はい……」


「じゃ、なんで……」

言いかけて、俺はエクシーの微笑みに気づく。

「だってそうしないと、私のいいところ見せられないではないですか?」


その笑顔は、どんな深淵よりも眩しくて、どこまでも優しかった。


ーー腕もよみがえった、計画は順調だ。

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