第31話 魂の面接官
昼間の熱が入る前の気怠さと、夜の華やかさのギャップに、哀愁が漂う街並みを歩く。
この街一番の店と聞いていたが、想像より、小さな建物が茜色に染まっている。
エクシーが、オレンジ色に光るランタンが、かかった扉を開ける。
色んなものが混ざり合った独特の匂い。それを上塗りする甘い香り。
「きみが、エクシーのお気に入りのユウくんかな?」
「ええと、娼婦のカイラさん?」
少し、存在感が薄い。普通の子だった。
「思っていたのと違った?」
「はい……」
もっと、お化粧や香水でハデな子を想像していた。
「こう見えてもNo. 1なんだ……フフフ」
カイラは人の顔色をよく読む子だった。
だってそうしないと、よく親に殴られていたから。
「なんでNo. 1か、不思議に思っているでしょ?」
ふんわりと引きこむように吸い込まれるようにカイラが笑う。
「……いや、自分は……」
「娼館に来てみればいいのに……興味あって仕方ないのに、恥ずかしいのかな?
ーー怖いのかな?、気持ちよくしてあげるよ」
「黙っちゃった? 面接中だよね?」
「……子供は好きですか?」
ユウトは、かろうじて絞り出す。
「うん……好き。嘘つかないから。
あと……人と重なるのも、好き。
嘘が消える時間だから
ーー人肌はどんな嘘つきでも、本当に暖かいし」
「エクシーとは、いつ知り合ったの?」
「ボクがスカウトしたの……。
でね、話しているうちに、何となく、この子が良い子だと、わかったの」
「私がどんな人に見えますか?」
「きみ?、そうだねーー物理的には怖いぐらい強そうだね。精神的に強いかは普通。
うん、人生に疲れて、息抜きしたいけど……なんか、人助けを頼まれちゃって〜〜。
断れないというか?そんな感じかな?」
……見透かされる感じが怖かった。
ああ、そうか。
嘘発見器みたいな、もんか。
そう思った俺は純粋に興味がわいてきた。
「なぜ、そんなに人の考えが読めるんですか?」
「あ……やっと、マトモになったね。
フフフ。
ごめんね、人の考えが読めるか?だよね。みんな表情に出るの、嘘か本当か。
だからね……ツーって、その人の一番気持ちいいところを触ってあげるの。
気持ちいいよ……?とーっても……?」
指で何かを刺激する仕草をする。
もう、この人がNo. 1なのに疑う気持ちは無かった。
一息、入れた、俺のペース。で話さないと。
「カイラさん。
俺、禁欲生活の真っ最中なわけ。
こんな美人に、おあずけくらっているわけ。
その辺で勘弁してくれ」
「あはは、ごめんね、男の人をたたせるのが職業だからさ」
面接が終わり、カイラさんの部屋を出ていった。無性に誰かに抱きつきたく、なっている自分がいる。
エクシーのほうを見た。
「カイラに言われたんです。ユウくんが弱っている時ほど、甘やかしちゃダメだって。
私だったら、イチコロだって……」
誘惑するような笑顔。
やめてあげて欲しい、俺の理性は、芸人の熱湯風呂状態で、押すなよ、押すなよ、なのだから。
……今だって、エクシーの香水が気になって、しょうがないのだし。
「どうでしたか?カイラは?」
「うん、欲しいね、面倒見とかどうなの?」
「ちょっと痛々しいぐらい、人の気持ちをもらっちゃうって言ってました」
ああ……あの子の笑顔はシールドなんだ。
自分の本心を隠し、人の気持ちを吸い込み過ぎないシールド……。
あの子ほどの人事面接官はいないだろう?
この計画のキーパーソンが一人揃った。あとはあの人?
もう、転移魔法で手紙出しに行くか?