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第19話 喪失感とのんきなトマス


デュランダルトにきて、1ヶ月が経った。


「初C級ダンジョン走破、お疲れ様」

高級クラブのママさんかと思うぐらいのエクシーの笑顔と労い方。


「おつかれさん、いつも色々とありがとう」

「ふふ、今回のモンスターの魔力耐性ヤバかったですね」

そうなのだ、魔法が全然効かないのだ。


「うん、でも、エクシーが魔法オンリーっていうからさ」

「そうですよね〜もう、ユウちゃん頑張っちゃいましたね〜」

言えない。中年になってヨシヨシされて、ニヤニヤ抑えているなんて。

でも、C級も順調だし、いいか。



ーーその晩、宿で。

いつものように"気持ち悪い"

魔力供与法の時間。


「エクシー、今日、長くない?」

「はい、沢山、魔法使いましたから……」

「え、ちょい、それって……」

魔法縛りじゃ無ければーー。


俺、元々、剣士なんだよ。

剣さえ、使えれば……。

でも使うなって。身体のバランスが崩れるからって。


ふとエクシーを見ると、微笑み。

え、ちょいなんで……。

俺は心が折れそうになる。

耐えろ、耐えろ、耐えろ。

気がつくと、エクシーを睨んでいたのだろう。


「……ごめんなさい……」

何かを小声で喋るエクシーに、呆然としている俺はきちんと聞き取れない。悲しそうに出ていった。

不快感で、動けない俺がベッドに残された。



ーー次の日

エクシーの宿の扉をノックする。出ない。

……どうしたんだ。


「あんたが、ユウトさんかい?

手紙預かっているよ」


手紙には「ごめんなさい、しばらくは魔力供与法はおやすみ。これからの高ランクのダンジョンの準備にエルフの里にアイテムを依頼してくる」と書いてあった。


俺が悪いのか……と言っても、謝る相手がいない。ただ、手紙を書いて出ていっているということは、戻ってくるのだろうけど。


喪失感にどこをどう歩いているやら……。


喪失……いや、失恋か。

失恋の記憶なんて、遠い昔だ。

ああ、こんな鉛みたいだったっけ?


ストレスで気持ち悪い。


あれ……おれ、人類最強じゃなかったっけ?


1000年生きれるようになってるんだよな。あの人いないと、誰かを見送って喪失感だらけの人生になっちまう。


このストレス繰り返すのか?

つれ〜なぁ〜。

これに比べりゃ。魔力供与法の苦しさなんて……。



ーーその頃のギルド

「おおぃ、やべーぞ」

貴族兼冒険者のダンディーこと、ダンが飛び込んできた。

「どうしたんですか……?」

いつも暇なトマス君もその剣幕に立ち上がる。


「B級ダンジョンの『鬼の片腕』でメガオーガが出たんだよ」

「ああ、そんな事ですか……スタンピードじゃないですね。

確かに『草原の狼』の連中が、この前、変なオーガを見たって言ってました。

ダンさん、今日の報告は、『鬼の片腕』を途中、退去ですか……?

何フロアまで行きましたか?」


「バカっ!!」

ミラベルの一際大きな声がギルドに響きわたる。


トマスはその声にビックリする。


「メガオーガ……。A級モンスターよ」

「もし、鬼の片腕のモンスターが、全部メガオーガに変異してたら……」

ミラベルの声が震えていた。


トマスにはまだ、事の大きさがわかっていなかった。



ーー歩き回っても、エクシーはいない。

エルフの里って、何処だよ?


「バカっ!!」

近くで大声が聞こえる。

ギルドからか?


ギルドに入ると、明らかに何かヤバそうな雰囲気の中、トマス君だけ平常運転。

「どうしたの?」

近くにいた、冒険者に聞く。


「鬼の片腕で、メガオーガが見つかって……」

B級にA級モンスター発生か。

A級冒険者自体が少ないからな。


「トマスっ!!今、B級に潜っているのは?」

ミラベルが呼び捨てだ。

「はい…?どうしたんですか、焦って?」

「ばかっ!!だから、あれ程、クレジット見ておけって言ったのに……」


「ミラベルさん、わかりました。

今、潜っているのは、草原の狼です」

別の職員が叫ぶ。


「そのパーティーなら、深い所で会ったぞ。言いたくは無いが、戻ってきている確率は低いぞ」

貴族兼冒険者のダニエル君が正直に答える。ボロボロなダニエル君、撤退してきたか。


「もぉ……どおして」

「ミラベルさん、草原の狼なら、みんな強いですから……きっと」

「トマス、草原の狼と仲がいいから信じるのはわかるけど、あのパーティー、先日Bにあがったばかりでしょ?

信じたいけど……高い確率で無理」

「え……?無理って?」


「冒険者って、命のやり取りしてるの。

級が上がるのって、キツいの。

今回は勝てませんでしたって、通用しないの」

「だから……?」

「誰かが助けにいかないと……。

もしくは、運良く、ダンジョンの入り口にいるか……」

ようやく、トマスの顔から血の気が引き始めたのだった。

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